デジタル回路で生成されたパルスをローパスフィルタを通して、アナログ信号化したいという用途は結構あると思います。そこでオペアンプを使ってこんな簡単なローパスフィルタを作ろうとしてみます。
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そういう場合にこちらの記事で解説したように、

オペアンプで実際にローパスフィルタを作ってみたら
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/8064313.html

取り出したい信号帯域が狭いといったって入力信号に高域の信号が含まれている場合は、それなりの広帯域のアンプを選ばないと思った通りの特性が出ません。
で、今回は LT1037A という高精度、広帯域、高ゲインのアンプを選んで構成してみることにします。反転増幅器構成で  DC 利得を 5 倍持たせてみます。

LT1037A の応用記事はこちらです。

オペアンプ、理想と現実の狭間で>ゲインと帯域
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/7830353.html

オペアンプ、理想と現実の狭間で>ゲインと帯域:反転増幅器の場合
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/7990813.html

あれ?!性能が出ない?>ゲインと帯域:反転加算増幅器
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/8016045.html

まずはアンプとしての安定性の評価と云うことで、フィルタ構成しないで回路を作ってみました。
回路はこれです。
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5KHz パルス応答はこれです。ちょっとピークを持っていますが、許容とします。
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周波数応答はこれです。アンプのゲイン交点付近で少しピークを持っています。
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これならよかろうということで、フィードバックコンデンサを付けて 10KHz から減衰し始めるローパスフィルタを構成します。多少ピークがあったって十分減衰するだろうから問題ないでしょう。
回路はこれです。
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5KHz パルス応答はこれです。
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え?何これ?なんでこんなにノイズっぽいの?
周波数特性はというと、
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ありゃ~、20MHz のところにピークが出ています。入力がパルスなので 5KHz といっても高調波がここまで十分含まれていれば、信号として現れてしまうと云うことです。

それにしても、フィルタの時定数がまだ高い?1590pF → 0.0159uF の変えてパルスを見てみると、
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イイ感じで積分してくれているのですが、ノイズは消えません。なぜでしょう?私のどこが悪いの?

ちょっとこちらを見て下さい。

オペアンプの特性とフィードバック回路の影響
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/8197368.html

ここで気にしなくてはいけないのは、オペアンプの出力端から (-) 入力端にどういう特性でフィードバックされているかと云うことです。コンデンサがない場合は、確かに出力電圧は 1 / 5 にして戻されています。ですのでアンプとしては安定です(フィードバック量が少ないほど安定)。ところがコンデンサが入ると高域で減衰量が抑えられ、時定数が大きければ大きいほど 100% 戻ってしまいます。つまり LT1037A にとって低域では 5 倍の利得で動作していますが、高域では 1 倍の動作になってしまうため、ユニティゲインスタビリィティが確保されていないこのアンプでは位相マージンがないため発振気味になってしまうわけです。
早い話がユニティゲインスタビリィティが確保されていないアンプでこういう構成の LPF を組むのは入力信号によっては問題を起こすと云うことです。となると結構選ぶのが難しそうですね。

最近は DA コンバータなどの代わりにデジタル出力を PWM 変調された信号にして、これをフィルタを通すことでアナログ信号を得る、というのが多くなっていますがアンプの選び方を間違えるとこういうことになるので注意が必要です。