前回、アメリカの債務不履行問題が起きそうだという報道に対してそれはないと云ってみたが、結局多くの人が予想する通り暫定案が可決されて当面は回避された。共和党はそんな手口で政局をやっているが、いい加減にしないと次の中間選挙でひどい目に遭うと思うんですけど。

さて今回はお隣韓国と日本との関係のお話。
実は私は 4 年間近く韓国にいて簡単に想像は付くと思うがとある会社で働いていた。昨年帰ってきて韓国ライフを総括しようと思っていた矢先に李明博大統領が竹島(独島)に上陸し、返す刀でなにやら不穏な発言をしたという報道が入ってきた。さらにロンドンオリンピックでのサッカー選手の事件である。これでは筆も進まない。
一宿一飯の義理があるし、それなりによくしてもらったので日韓関係がごちゃごちゃするのはいい気がしない。もちろん不快なことがなかったわけではないし、笑っちゃうようなことや感心することもあり外国ライフとはそんなものだとは思っていたが、それにしてもそれから一年以上経ってこんな有様では気が滅入る。
ただ国と国とのつきあいと個人のつきあいは分けて考えなくてはいけない。いくらいい人がいたからと云っても国と国との関係を論ずる場合は法と国益を優先して考えるのは当然だと思う。ここでこんなことを云っても対して影響力があるわけではないが。

今何が問題かというと両国間で首脳会談が行われていないことである。パックネ大統領は日本の政治家の歴史認識に問題がある限り応じないといい、安倍総理はいつでも対話の扉は開かれているといい、完全にすれ違いである。

韓国がここへ来てなんでこんなに反日行動をとるかというと、韓国から見て日本が妥協しない思い通りにならない国になってきた、というのが普通の見方だと思うが、それは民主党政権時代に李明博大統領が竹島上陸を敢行した説明にはならない。少なくとも民主党は韓国に配慮していた。それは支持率維持の為にやったということだがそれで機嫌を損ねたのは日本側であって韓国側ではない。韓国がことさらヒートアップして反日行動を激化する理由にはならないのだ。どうやら一つの反日行動が次から次へと連鎖反応を起こしているかのようだ。とある新聞も結構酷いことを書いている。こんなことを書いてどういうメリットがあるのか、と思うような記事もある。

韓国がどのくらい反日かというとこれが実際は私が知っている範囲では結構微妙で、教科書などにも日本統治時代のことが書いてあって酷いことをされたということになっているが、実際生活をしていてそういう反感が顕在化したかというとそれはない。むしろ親切にされたことの方が多い。家内の韓国語の教師も「反日?そんなの知らないわよ~」てな感じである。むしろ日本大好き、といった調子だ。もちろん最初に書いたように個人のつきあいと国のつきあいは分けて考えなくてはいけないのでそれでどうという話ではないのだが、むしろ問題はメディアや政治家などにあると思う。他にもスポーツ選手やタレントもそうだろう。
というのは表だって活動している人は常に世論の評価にさらされる。韓国は IT が充実しているので有名だがこれがこの件ではマイナスに作用しているように思う。つまり日本擁護、親日的発言や行動を起こすとあっという間に炎上するのだ。だからネット意見が韓国ではオピニオンリーダになっていて、どうしても表に出る人はネット意見におもねるようになる。結果反日と云うよりは、日本に対して強く出たい、妥協したくないという意見に政治家もメディアも従わざるを得ないというところではないかと思う。だから実利を求める経済界からはそういった意見は絶対でない。知らん顔をしているのだ。これも当然だろう。これは日本だって同じである。

ここまで政治家、メディアが反日的行動を取っている以上韓国側からの妥協はまず期待できない。もちろん安倍総理も妥協する気はない。
想像するに安倍総理の考えは韓国は無視ということではないか。ただ旧西側勢力の一翼である日本と韓国が仲違いしているのはアメリカから見ると好ましくはない。それで日本には「相手は厨坊だから大人の対応をしてくれ」とでも云っているのだろう。安倍総理としても日韓関係を自分が壊した(壊したいとしても)とは云われたくないので、今回は靖国神社参拝を取りやめたのだろう。もちろん韓国がそれでも納得しないのは織り込み済みである。それどころか超党派議員達 157 名が参拝しているのだ。それでも安倍総理にしてみれば第一次内閣の時に参拝しなかったことを「痛恨の極みだ」と云っていながら取りやめたのだから、相当な譲歩である。少なくとも諸外国に対しては形は付く。例によってアリバイ作りである。

参拝しなかったことについて国内では「弱気だ!」「見損なった」などの批判もあるだろうが、私はそれは正しくないと思う。結構綿密に計画されたものではないかと思う。「痛恨の極み」発言そのものが計算されたものだったような気さえする。

韓国側が参拝をしなかったことについて「一定の評価をする」といって首脳会談に前向きな姿勢を示せればパックネ大統領もたいしたものだが、まずそれはないだろう。ネット意見が許すとは思えない。こうやってどんどん引っ込みが付かなくなっているのはここ一年間の韓国側の行動にあると云って良いだろう。一つだけ日本に責任があるとすればパックネ大統領の就任の時に麻生副総理が「歴史というのは国によって立場によって解釈が異なる」と諭すようなことを云ったのが大統領のかんに障ったのは想像に難くない。これすらも今にして思えば計算尽くだったかも知れない。

さらにアメリカには「日本の集団的自衛権を支持する」といわれてしまうし、河野談話に疑義が持ち上がっているし、米 MD には加入しないと云ってしまうし、海産物の件で WTO に提訴すると日本は言い出したし、ウォン高(円に対してのみならずドルに対しても最近上がってきた)の影響もあって経済的にはかなり怪しいしなどなど韓国にとっては危険な状況に陥っているようだ。かっとならずに最適解を探せれば良いのだが果たして。