前回までで高出力の電源回路を構成することが出来ました。
今回はこれをさらに拡張して、LED を定電流駆動できるドライバを考えてみようと思います。ただしここから先はアプリケーションノートに載っていませんのでメーカ側は動作保証範囲外になると思います。もちろん私も動作保証しません。あしからず。

フィードバック型の電圧制御電源は出力電圧を見ながら、電圧出力回路の状態を制御して所定の電圧になるように動作します。DC - DC コンバータの場合は、ON / OFF トランジスタ or FET の ON デューティを制御しています。これを定電流ドライバとして使うには、負荷に流れている電流を電圧として検出してこれを参照電圧と比較することにより、出力電圧を制御して結果として負荷に流れる電流を制御していることになるようにします。
これは「LTspice で遊ぼう」でも「やさしく考えるアナログ回路」でも何度か出てきました。

今回はこの流れで負荷である LED に直列に抵抗を入れてその電圧を検出して電流モニタ信号とし、電流指示電圧と比較してその差分を IC 内部の参照電圧 0.6V(実際には直接比較は出来ないので近い値を使います)基準の信号に直して IC の FB 端子に供給する構成にします。

回路はこうなります。LED は 20A クラスのものがライブラリィにありましたのでそれを使いました。順方向降下電圧は 4V ぐらいのようです。
イメージ 1

シミュレーションとしては、元電源が投入されてから 0.5ms 後に指示電圧が与えられて、1ms 後に前回調べたイネーブル信号が立ち上がり電流制御が開始されるようにしました。指示電圧は 0.5V として 5A 流れるようにしています。
結果はこうです。上から入力電源での供給電力LED での消費電力イネーブル信号スイッチング信号出力電圧LED 電流電流モニタ信号となっています。

イネーブル信号が立ってから、約 0.1ms で LED 電流が立ち上がっています。
発振周波数は 560KHz ぐらいです。
LED 電流が定常状態での効率は、電源からの供給電力が約 22W、LED での消費電力は 18.4W ということで、84% ぐらいです。IC で約 0.9W、検出抵抗で 2.5W の消費電力が生じています。この他にパターンでの消費、インダクタンスの直流抵抗の消費などが加算されることが考えられますが、絶対値としては小さめでしょう。
効率を上げようと思えば IC としては周波数を下げることが考えられますが、電流リップルは増えてしまいます。これを避けようとしてインダクタンスの値を大きくすると今度はインダクタンス内部の抵抗が上がってしまうので何をやっているのか分からなくなります。太い巻線を使ったインダクタンスを使っても良いですが、コストとスペースの観点でどうなるか分かりません。
検出抵抗を下げるのも一策ですが、扱う電圧が小さくなる分オペアンプのオフセットが気になり出します。外部の 0.6V と IC 内部の 0.6V の誤差も気になり出すかも知れません。

こういったトレードオフの関係をどう優先順位を付けて落としどころを探るかが、設計者の腕の見せ所になります。システム仕様との関係を配慮しておく必要があります。