動作条件による効率の変化について検討してみます。といってもマニュアルには色々書いてあるのでその確認と云うことになります。

LTspice:「先にマニュアルを読めよ」
画蔵:「いいんだ。作って火を噴いたら考える」
LTspice:「なるほど、シミュレータなら被害が少ないという分けか」
画蔵:「ただ前のような絶対最大定格に気づかないというチョンボはあるが」
LTspice:「ならばアラームを出そうか?」
画蔵:「それいいな」

LTspice:「定格を越えると画面が赤くなる。問題の部品が火を噴くアニメーション」
画蔵:「・・・。」
LTspice:「そのまま放置して実行すると、回路図が消えてしまう」
画蔵:「なぬ!」
LTspice:「(ドゥディドゥディドゥディ♪)『お気の毒ですが回路図は消えてしまいました』というメッセージとともにアプリが閉じる」
画蔵:「やめろ!!!ト、トラウマが...。」


出力条件と効率に関してデータシートではこうなっています。

イメージ 1

やはり出力電圧が高いほど効率が高いようですし、出力電流が高いほど効率が良いようです。多分いずれも最適条件というのはあるのだと思います。
シミュレーションではこうなりました。データシート通りの傾向が出ていると思います。

イメージ 2
2.5V 効率のデータだとよく分かりませんが、3.3V と 5V を見る限り出力電流が高いほど効率が上がっているのが分かります。ただ。3.3V と 5V の差については周波数が高いからなのか、出力電圧が高いからなのかはこれだけでは分かりません。

周波数に関してはデータシートにこんな記載があります。

動作周波数
動作周波数の選択には、効率と部品サイズの間のトレードオフが必要です。低周波数動作はMOSFETのスイッチング損失を減らして効率を上げますが、出力リップル電圧を低く押さえるには、大きなインダクタンスや容量を必要とします。
(Linear Technology 社,LTC3609 データシート 11 頁)


これは直感的な理解をするならば、内部の MOSFET トランジスタのところでスイッチング動作=切り替えエッジのタイミングで切り替え遅れが生じて、コイルへの電流供給が不十分な時間がどうしても発生し、この時間は固定値なので動作周波数が高ければ高いほどその時間が顕在化するということです。
効率だけ考えれば、周波数が低い方が有利ですがその分コイルインダクタンスを大きくしないと出力電圧リップルが増えてしまいますので、コイルサイズ、コストへの影響が気になります。大電流を取ろうとするとコイル自身が持っている直流抵抗分もバカにならなくなり、今度はこちらで効率が落ちてしまいます。こういったトレードオフの関係をどうかわして使いたい条件で最適化させるかが設計者の腕の見せ所と云うことになります。

今回の回路ではこんな感じになりました。
ちなみにそれぞれの周波数設定は R3 を最小周波数=374KΩ、中央周波数=281KΩ、最大周波数=187KΩとすることで得ています。

イメージ 3
データシートの記載通りの傾向は出ています。

さて気になるのが R3 を固定値にすると出力電圧に従って発振周波数が変わってしまうことです。

データシートにはこんな記載があります。

出力電圧が変化しても周波数を一定に保つには、VONピンをVOUTに接続するか、またはVOUT > 2.4VのときはVOUTからの抵抗分割器に接続します。VONピンには内部クランプが備わっており、ワンショット・タイマへの入力を制限します。このピンが0.7Vより低い電圧に接続されていると、ワンショットへの入力は0.7Vにクランプされます。同様に、このピンが2.4Vより高い電圧に接続されていると、この入力は2.4Vにクランプされます。
(Linear Technology 社,LTC3609 データシート 11 頁)

ちょっとわかりにくいかも知れませんが、要は VON につながる電圧が 0.7V 以上 2.4V 以下の時に、Von でも周波数が制御できるという意味です。

LTspice:「国語苦手?」
画蔵:「うるさい!」


言い換えると上手く抵抗分割を決めれば、2.4 / 0.7 = 3.42 の倍率レンジで出力電圧を制御してもほぼ一定の周波数で発振させることが出来ると云うことです。

では今回の回路も少し書き換えて出力電圧 2.5V ~ 5V の範囲で発振周波数が変わらないようにしてみます。

さらに発振周波数は次の式で表されるとなっていますから、だいたい 500KHz ぐらいを目安に R3 を選んでみます。

f = VOUT / (VON x RON x(10pF))

回路図では VOUT から VON へは 10KΩと 8.2KΩの抵抗分割で接続していますから、VOUT / VON = 1 / 0.45 = 2.21 となっていますので、これを利用すると、444KHz になります。少し高めに設定すると云うことで、12 系列の抵抗値 390KΩ にしてみます。567KHz 周辺になるはずです。

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出力電圧を変化させながら、発振周波数を調べたところこうなりました。

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どの電圧でもほぼ 560KHz で発振するようになりました。
出力電圧を可変にしないのであれば、必要な出力電圧に合わせて R3 を決めればいいのですが、今回は後で出力電圧可変機能を持たせてみたいので、この形式で進めたいと思います。