前回までは巡回型デジタルフィルタ IIR フィルタについて簡単な紹介を行ってきました。
今回は非巡回型デジタルフィルタ FIR フィルタについて簡単に紹介します。

ちなみに上記のそれぞれ色々名称が付いています。
IIR :巡回型、再帰型、無限インパルス応答型 etc
FIR :非巡回型、非再帰型、有限インパルス応答型 etc

なお本来なら無限インパルス応答型と有限インパルス応答型というのはフィルタの応答特性を云っているだけで、デジタルやアナログ、メカフィルタなどの形態を云っているわけではありません。IIR と FIR も同様です。ここではデジタルフィルタの種類としての用語として使います。

それぞれブロック図を見ながら簡単に考えておきましょう。

こちらが前回出てきた IIR 型です。

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こちらが今回の FIR 型です。

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何が違うって、FIR 型は IIR 型の片割れしかないということです。ちょっと図の関係で上下が反対になっていますが IIR にはあったフィードバック部分、a1, a2,,,, an の項がなくなってしまったわけです。
伝達関数でも次のような違いがあります。

IIR 型
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FIR 型

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引用の都合上式の表現が統一されていませんが、要は IIR での、a1, a2,,, an がすべてゼロって云うことですね。なんだそれなら FIR 型の方が素子数が少なくて簡単じゃん、と云いたくなるのですが、実際にそういうわけにもいかず実現可能な伝達関数に制限あるいは特性に制限が生じます。
というより有限インパルス応答という時点でちょいと眉唾で、普通に受動素子で実現できるたとえば CR フィルタなども実は無限インパルス応答です。ただし通常はノイズに埋もれて見えなくなります。
ブロック図から想像すると、IIR はフィードバック系を持っているので、もしかしたら応答はだらだら続きそうですし、発振するかも知れません。FIR 型は行って来いフィルタなのでそういう心配はないようです。

で、乱暴なことを云ってしまうと、IIR フィルタでフィードバックをさせながら無限に演算しながら実現していたフィルタ特性を FIR フィルタは途中でたたき切ってしまって欲しいものが出来たとする、というようなものです。いや、これは非常に無責任な見解ですので他では云わないで下さい。(^^;
言い換えると IIR フィルタで実現できた特性を FIR フィルタで実現しようとするともしかしたら無限の段数( n が無限大ということ)が必要なのかも知れません。その分応答は段数分だけ遅れます。

サイトでの資料を見ている限りは、FIR フィルタの応用範囲は理想低域通過フィルタと波形等化回路ぐらいしか見当たりません。後で出てきますが普通に一次 LPF と作ろうとしただけでも大変なことになります。もちろん私が知らないだけの可能性は星の数だけありますが。

先に進むに当たって Wiki は見ておいた方が良いと思います。

有限インパルス応答

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%89%E9%99%90%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%AB%E3%82%B9%E5%BF%9C%E7%AD%94