前回までで原始 DC - DC コンバータの設計らしきものをしてきましたが、実は重要な内容を飛ばしてあります。
それはコンパレータを LTC6702 をなぜ仕様違反(つまり実際にはこの回路は使えない)で押し通しているという理由と関係があります。簡単に言うともし入力電圧が 5V で、出力電圧が 2.5V とか 3V とか 3.3V のような回路ならば全く問題は無いのですが、入力電圧が 12V というのが問題になります。つまり FET スイッチを ON / OFF するのに 12V 近辺まで電圧を上げなくてはいけないというのが難しいわけです。

ちょっと説明がまだるっこしいのですが、これはスイッチとして PMOS タイプを使うため、ON の時はゲート電位をソース電位 12V に対して、1 ~ 数V 下げる必要があり、これはあまり問題ないのですが、OFF のためには 12V 付近までゲート電位を持ち上げなくてはいけなく、これが結構ディスクリートではやっかいだったりします。

前回まで使った PMOS FET の DC 特性を見ておきましょう。
回路図はこれです。
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特性はこれです。
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ソース電位が 12V であるのに対して、ゲート電位が 11V になったところでスイッチとしては ON しています。
さて、戻って LTC6702 が 12V 電源で使うことが出来て出力も 0 - 12V を出せるのであれば、そのまま接続すればいいのですが、あいにく動作電圧は 5V まで。よって出力も 0 - 5V しか出ません。そのまま出力を PMOS FET のゲートにつないでもスイッチとしては ON になりっぱなしになります。
そこでレベルシフターの登場となるわけですが、とりあえず理想電池(?)を使ってみます。
回路図はこれです。8V レベルシフトさせてみます。
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当然のように入力電圧が 3V の時にスイッチが OFF になります。
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で、理想電池はありませんので、ツェナーダイオードを使ってみます。8.2V というのが Spice データにあるので使ってみます。ツェナーダイオードにどのくらい電流を流せばいいか、ちょっと微妙な問題でスペック内で大目に流す方が電圧的には安定なのですが、増やすと消費電力が増えます。ちょっとけちって平均で 2mA ぐらいにしてみます。
2KΩ を付けたとして、
出力が 'H' の時は、ツェナー電圧とコンパレータの出力電圧の合計が 12V を越えるので電流は流れません。
出力が 'L' の時は、(12 - 8.2) / 2000 = 1.9mA

とりあえずこれでやってみます。

回路図はこれです。入力電圧は 0 - 5V にしました。
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結果はこうなりました。
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予定通りです。
なんだ簡単じゃないか、と思うかも知れませんが、これでも平均で 0.95mA のツェナー電流が流れています。12V 電源からの供給ですから、約 11mW の消費電力増です。あまり面白くないですね。

さて実際には入力電圧はコンパレータの出力と云うことで、パルスです。入れてみます。
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なんと、立ち上がり(実際にはスイッチオフ)が 3usec 以上遅れてしまっています。
遅れは無視しても良さそうです。
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100KHz ぐらいで発振させたいのに 3usec も遅れられたら、もうダメですね。

さてこうなる理由ですが、こちらもご覧下さい。

FET を使った定電流回路(コミュニティのお題)その3
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/8663087.html

この記事の前半の FET の入力容量が原因です。この容量と抵抗 2KΩ の関係でスイッチ動作が遅延しています。

どうやらドツボに絶賛はまり中のようです。