回路に手を加えて負荷変動に対する応答を評価できるようにしました。
その前に負荷に対する動作状況を確認しておきます。
負荷抵抗 RL = R1 を、10Ω、50Ω、100Ω の場合の各部波形を見ておきます。
こんな感じです。

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どれも問題がなさそうです。制御周波数もほとんど同じですね。

LTspice:「最初の検討の式はどこへいった?」
画蔵:「とりあえずおいておく」


出力電圧の FFT です。

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RL が 50Ω あたりが一番ノイズが少なく見えるのは気のせいでしょうか。理由は分かりません。回路構成と定数の関係から最適な動作点というのがあるのかも知れません。誤差、といってもスルーできそうな感じもしますが。

ということで静的には、それなりの負荷対応能力がありそうです。そこで負荷が急変したことを想定して、次の回路で評価してみます。

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1ms 幅のパルスを使って、負荷抵抗を 25Ω / 50Ω と切り替えてみました。
結果はこれです。一番上のちょっと影が薄い緑色の線が制御信号です。これが 'H' の側で負荷が 25Ω になります。

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応答が早いですね。電流が上がる方で 2 パルス、下がる方では 1 パルスで応答しているように見えます。切り替えた瞬間に発生する誤差ノイズは p-p で 105mV です。この程度だったら普通は気にならないでしょうし、気になるようなデリケートな回路があればその周辺をパスコン(高周波特性の良いもの)でローカルレギュレーションしておけば良さそうです。180mA の電流差なので結構大きな変動だとは思いますが。

ということで一連の評価が終わりました。
自分自身はスイッチング電源設計~評価を本格的にしたことがないので、これで十分なのかどうか自信がありません。もちろん、温度特性や部品ばらつきに対する許容度合いも評価しなくてはいけないと思います。設計的にはソフトスタートも付け加えなくてはいけないでしょう。
それとコンデンサだけ理想とかリアルとか云いましたが、コイルだって直流抵抗はありますし容量も持っています。そんなことも実際には見ていかないといけないと思います。
ただここで色々確かめたことをベースにそれらの誤差要因の影響を頭に入れていればそれほど作ってみてびっくりすることはないのかな、という感触が得られたと思います。

余力があったらソフトスタートの設計とリアル部品の影響をもう少し調べておこうと思います。

LTspice:「で、最初の式は?」
画蔵:「ちょっと面目ない話だが、前提条件が大分異なっているため食い違いが起きてしまった」
LTspice:「ほほう?」
画蔵:「リップルの影響を考えていなかったのが問題。コイル電流の出し方はあれでよいと思う。電位差に依存しているのは事実だし、電位差は数 V、リップルは数十mV なので、コイル電流の傾き自体の誤差は少ない。が、そもそもコンパレータという非線形なもので出力電圧をモニタし、リップル電圧でスイッチしているためそこを検討に入れる方法が分からない」
LTspice:「リップルがあるからスイッチを切り替えることが出来る。だがもしリップルが異常に小さければ、ものすごい早い周期でスイッチングが行われる、ということか」
画蔵:「ところがそのスイッチング自体を行うコンパレータが実は応答速度が有限で、もちろん FET スイッチも有限だから話がややこしい」
LTspice:「なるほど」
画蔵:「最初、コイルと負荷抵抗が一次 LPF を構成していて、これが応答速度を決めているもんだと思い込んでいた。ところがコイルはスイッチング回路とまとめて線形的には電圧電流変換回路を構成しているだけで、系の応答には寄与していない。あってももっと高い周波数領域の話だ」
LTspice:「PLL でいうところのチャージポンプのようなものか」

画蔵:「そんな感じだ。で、同じように負荷コンデンサが電流電圧変換機能を果たしていて、ここで応答が決まる。ところが PLL と決定的に違うのはリップルがないとループが成立しないと云うことだ。そのリップルの検出の感度はコンパレータの応答で決まるので、コンパレータを変えるとおそらく状態が変わる」
LTspice:「固定周波数で制御しているわけではないので、動作を管理するパラメータを明確にしづらい、というか部品で変わってしまうということか」
画蔵:「おそらく。用途を決めて部品を選んで慎重に評価すればシンプルで性能の良いものができるとは思うが」