前回は固定周波数固定デューティでスイッチを ON / OFF して、入力電圧に対して所定の比率で出力電圧を得る方法を解説しました。制限はあるとはいえ負荷変動にはある程度対応できるので、簡単な用途には使えるかも知れません。入力が電池の場合とか。

今回は、入力電圧が変動しても出力電圧がほぼ一定になるようにフィードバックを掛けてみることにします。

回路は次のようです。

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これも非常に原始的で、前回のコイルをスイッチングさせるのを固定の発振器の代わりに、出力電圧をモニタした信号(R2 と R3 による分割)と参照電圧 V2 を比較して、小さければスイッチを ON、大きければスイッチを OFF するという仕掛けです。ここでは入力電圧を 12V としていて、出力電圧を 1 / 9 にしたものと参照電圧 1V を比較して制御することで、出力電圧 9V を得るようにしています。

波形はこんな感じです。

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I(L1) を見てみると、ボトム電流がほぼゼロでしかも一瞬なので前回解説したコイルに電流が流れていない期間はなさそうです。負荷としては適正動作範囲といえるでしょう。
リップルは結構多そうですね。これを下げるにはコンデンサ C1 をもっと上げるかコイル L1 を上げるかになってしまいます。制御周波数は 7.7KHz と低いためリップルが目立つ感じです。
制御周波数がどうやって決まるかは一応計算しておきましょう。下の図を見て下さい。
※差し替えました。
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出力電圧 Vout が目標値に達していて安定になっているとすると、スイッチが ON のなってコイルに流れている電流 IL(on) は、入力電圧 (Vin - Vout) / L の積分で表されます。ここでは単純に直線と考えて、ON 時間 = T1 を掛けたものとなります。スイッチが OFF になっている期間 T2 の間は、Vout / L の積分で電流が減少することになります。また電流の平均は負荷に流れる電流です。これらのことから、

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ということになって、この場合ですと、Vin = 12, Vout = 9, RL = 6, L = 100uH ですから、Fosc = 7.5KHz ということでだいたいあっています。誤差はダイオードの順方向降下電圧などが絡んでいます。リップル除去コンデンサは大きければ大きいほど、周波数などは計算値に近づきます。

ちなみに負荷を下げるとこんな風になります。RL = 6 → 60
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リップルは下がってコイル電流がゼロの期間が増えます。前回はこうなると出力電圧が変わってしまいましたが、そこはフィードバックが掛かっているので目標電圧は確保しています。

LTspice:「それにしてもゼロ期間がなくすにはすごい電流を流さないといけないな」
画蔵:「そうね、でもゼロ期間があってはいけない、という理由は今のところ見えていないので、多少負荷が軽くともいいのかもしれない」
LTspice:「本当か?」
画蔵:「もちろん発振周波数の式は成り立たなくなる。他の影響については次回調査する」


ちなみに出力電圧をもっと下げてみるとどうなるでしょうか。R2 = 8000 → 2000、よって Vout = 9V → 3V。

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ゼロ期間が増えてしまいました。コイルを大きくすればゼロ期間は減りますが上式の通り発振周波数も下がってしまうので、応答が悪くなりそうです。

もう少しこの形を調べてみるのと、応用範囲についても考えてみることにします。