なんか長大な内容のお題になってしまいましたが。
今回は回路を元の定数に戻して、入力電位のばらつきについて調べてみます。というのは、コミュニティでのトピ主の実験で変な波形が出てきたという質問があったので、それに答えたという経緯があるからです。
前回までの入力パルス波形は 0V から 0.1V ~ 1.0V に立ち上げたときのものでした。ですが、実際には 0V といったってオペアンプとの関係で多少のオフセット電圧を持つのでその辺りで変な応答をする条件とは、ということで調べてみる必要があるからです。
入力電圧のオフセットを -10mV、0V、+10mV、振幅を 0.5V として波形を出してみました。上がゲート電圧で、下がソース抵抗の電圧です。

0V と +10mV はそう変わりませんが、-10mV はソース抵抗の電圧が 100ns ぐらい遅れています。ゲート電圧を見ると入力が -10mV の期間では、-11V ぐらいになってしまっています。この電圧が FET が動作し出す電圧= 2.5V になるまでに時間が掛かっていて、結果として電流が流れ出す時刻が遅れているというわけです。
なぜ -10mV の時に -11V に張り付いてしまうかというと、本来この -10mV はソース抵抗の電位にならなくてはいけないのですが、そのためには抵抗に対して上向きに電流が流れなくてはいけません。ところが FET はゲート電圧をいくら低くしてもそんなこと出来ないのです。そのためオペアンプはとにかくゲート電圧を下げますが、それでもソース抵抗はマイナス電位にならないので「いい加減にしろ!」と張り付いてしまうわけです。つまりフィードバックループが成立していないのです。これを防ぐには電流が双方向に流れる出力回路を付ければ良いのですが、そもそも LED は片方向にしか電流が流れないのでとっても無駄です。。
そこでちょっと細工をして、入力がマイナス側になったら別の経路でフィードバックループが成立するようにします。
それが次の図です。ダイオードを入れてみました。なるべく順方向電圧の低いものが良いだろうと云うことで、ショットキーダイオードを使うことにします。接合容量は小さいものにします。
こんな風になりました。

ゲート電圧のマイナス側への張り付きが、-11V から -0.4V になりました。これにより -10mV スタートの時の波形の遅れも改善しているようです。

でもイマイチですね。
-10mV スタートで出力電流を変化させてみます。1A, 2A, 5A, 10A です。
う~ん、やれやれです。出力電流が小さいときの方が遅れが大きくなります。要は入力オフセットを管理してパルスがオフの時でもゲート電圧が確実に FET の閾値付近にいればいいのですが、上手くいくかどうかよく分かりません。またソース抵抗が 0.1Ωと小さいこともあるので、10mV でも上乗せしたら 100mA が常に流れていることになります。面白くないですね。
ならば FET のゲート電圧閾値の低いのならどうか、というきわめて直線的な発想で FET を探してみました。しかも入力容量が小さいことが条件です。International Rectifier 社の IRLHS6376 がその2点だけについて云えば良さそうなので交換です。
波形は以下のようです。

全体的には良くなったような気はしますが、今一つですね。
早い話が入力がマイナス電位を持っている限り、ゲート電圧は閾値に近いとことにいてくれませんから、いざ閾値を超えようとしてもどうしも時間が掛かってしまいます。大電流の時の方がまだまし、というのは、オペアンプにとって大きな入力電圧を与えられたのでそれに応じた電圧を出力してくれるということです。この時点でトピ主には、1A と 10A を同じ定数で扱うのは難しいから、1A のときはソース抵抗は 1Ω にしてはどうか、という提案をしました。トピ主は切り替えは難しいからこの波形で我慢します、とのことでしたが。
とりあえず、1Ω で 1A を流そうとした場合の波形は以下の通りです。オフセットは -10mV です。
まあそこそこです。
さて問題は入力電圧にちょっとオフセットがあると、ショットキーダイオードの順方向電圧分だけはどうしてもマイナス側に張り付いてしまい、そこからゲートの閾値電圧までの立ち上がり時間が遅い、ということでした。
ならばその分、オペアンプとゲートの間に電位差を持たせたら何とかならないか、と考えるわけです。1V ぐらい持ち上げたいところですので、理想電池(なんだそら?)を入れてみます。



何とか改善はしている、ということは分かります。では 1.1V なら、1.2V ならということですが、元々そんな理想電池はないので意味がないです。
代わりにダイオードやツェナーダイオードを使って、手頃な電位差を作るということも出来ますが、ちょっとやってみた感じとしては労多くして功少なしという感は否めません。
これで力尽きました。やはりパルスをアナログ的に精度良くレベルを管理しながら伝達するのは難しいと思います。しかも大電流です。
ということでまとめると、
・FET は入力容量が小さいものを選ぶ。
・FET は閾値の低いものを選ぶ。
・オペアンプの出力端子と (-)端子の間にショットキーダイオードを入れておく。
・オペアンプは帯域があって、かつ位相マージンのあるものを選ぶ。
・入力オフセットがマイナス側にならないように調整が必要(小電流の場合)。
・小電流の場合はソース抵抗を上げた方が安定かつ精度がよい。ただし上げすぎるとオペアンプのスルーレートが足りなくなることがある。
なんだかな~。理想的なデバイスを集めろってことのようで。
そのおかげで最終的にはまあまあシンプルな回路です。実際には実装の問題などがあるので細かいチューニングは必要です。
「全然工夫してないじゃん」
「やかましい!お題が鬼畜過ぎるんだ」
でも結構楽しめました。トピ主に感謝です。(^^)
今回は回路を元の定数に戻して、入力電位のばらつきについて調べてみます。というのは、コミュニティでのトピ主の実験で変な波形が出てきたという質問があったので、それに答えたという経緯があるからです。
前回までの入力パルス波形は 0V から 0.1V ~ 1.0V に立ち上げたときのものでした。ですが、実際には 0V といったってオペアンプとの関係で多少のオフセット電圧を持つのでその辺りで変な応答をする条件とは、ということで調べてみる必要があるからです。
入力電圧のオフセットを -10mV、0V、+10mV、振幅を 0.5V として波形を出してみました。上がゲート電圧で、下がソース抵抗の電圧です。

0V と +10mV はそう変わりませんが、-10mV はソース抵抗の電圧が 100ns ぐらい遅れています。ゲート電圧を見ると入力が -10mV の期間では、-11V ぐらいになってしまっています。この電圧が FET が動作し出す電圧= 2.5V になるまでに時間が掛かっていて、結果として電流が流れ出す時刻が遅れているというわけです。
なぜ -10mV の時に -11V に張り付いてしまうかというと、本来この -10mV はソース抵抗の電位にならなくてはいけないのですが、そのためには抵抗に対して上向きに電流が流れなくてはいけません。ところが FET はゲート電圧をいくら低くしてもそんなこと出来ないのです。そのためオペアンプはとにかくゲート電圧を下げますが、それでもソース抵抗はマイナス電位にならないので「いい加減にしろ!」と張り付いてしまうわけです。つまりフィードバックループが成立していないのです。これを防ぐには電流が双方向に流れる出力回路を付ければ良いのですが、そもそも LED は片方向にしか電流が流れないのでとっても無駄です。。
そこでちょっと細工をして、入力がマイナス側になったら別の経路でフィードバックループが成立するようにします。
それが次の図です。ダイオードを入れてみました。なるべく順方向電圧の低いものが良いだろうと云うことで、ショットキーダイオードを使うことにします。接合容量は小さいものにします。
こんな風になりました。

ゲート電圧のマイナス側への張り付きが、-11V から -0.4V になりました。これにより -10mV スタートの時の波形の遅れも改善しているようです。

でもイマイチですね。
-10mV スタートで出力電流を変化させてみます。1A, 2A, 5A, 10A です。

う~ん、やれやれです。出力電流が小さいときの方が遅れが大きくなります。要は入力オフセットを管理してパルスがオフの時でもゲート電圧が確実に FET の閾値付近にいればいいのですが、上手くいくかどうかよく分かりません。またソース抵抗が 0.1Ωと小さいこともあるので、10mV でも上乗せしたら 100mA が常に流れていることになります。面白くないですね。
ならば FET のゲート電圧閾値の低いのならどうか、というきわめて直線的な発想で FET を探してみました。しかも入力容量が小さいことが条件です。International Rectifier 社の IRLHS6376 がその2点だけについて云えば良さそうなので交換です。
波形は以下のようです。

全体的には良くなったような気はしますが、今一つですね。
早い話が入力がマイナス電位を持っている限り、ゲート電圧は閾値に近いとことにいてくれませんから、いざ閾値を超えようとしてもどうしも時間が掛かってしまいます。大電流の時の方がまだまし、というのは、オペアンプにとって大きな入力電圧を与えられたのでそれに応じた電圧を出力してくれるということです。この時点でトピ主には、1A と 10A を同じ定数で扱うのは難しいから、1A のときはソース抵抗は 1Ω にしてはどうか、という提案をしました。トピ主は切り替えは難しいからこの波形で我慢します、とのことでしたが。
とりあえず、1Ω で 1A を流そうとした場合の波形は以下の通りです。オフセットは -10mV です。

まあそこそこです。
さて問題は入力電圧にちょっとオフセットがあると、ショットキーダイオードの順方向電圧分だけはどうしてもマイナス側に張り付いてしまい、そこからゲートの閾値電圧までの立ち上がり時間が遅い、ということでした。
ならばその分、オペアンプとゲートの間に電位差を持たせたら何とかならないか、と考えるわけです。1V ぐらい持ち上げたいところですので、理想電池(なんだそら?)を入れてみます。



何とか改善はしている、ということは分かります。では 1.1V なら、1.2V ならということですが、元々そんな理想電池はないので意味がないです。
代わりにダイオードやツェナーダイオードを使って、手頃な電位差を作るということも出来ますが、ちょっとやってみた感じとしては労多くして功少なしという感は否めません。
これで力尽きました。やはりパルスをアナログ的に精度良くレベルを管理しながら伝達するのは難しいと思います。しかも大電流です。
ということでまとめると、
・FET は入力容量が小さいものを選ぶ。
・FET は閾値の低いものを選ぶ。
・オペアンプの出力端子と (-)端子の間にショットキーダイオードを入れておく。
・オペアンプは帯域があって、かつ位相マージンのあるものを選ぶ。
・入力オフセットがマイナス側にならないように調整が必要(小電流の場合)。
・小電流の場合はソース抵抗を上げた方が安定かつ精度がよい。ただし上げすぎるとオペアンプのスルーレートが足りなくなることがある。
なんだかな~。理想的なデバイスを集めろってことのようで。
そのおかげで最終的にはまあまあシンプルな回路です。実際には実装の問題などがあるので細かいチューニングは必要です。
「全然工夫してないじゃん」
「やかましい!お題が鬼畜過ぎるんだ」
でも結構楽しめました。トピ主に感謝です。(^^)