制度とかで「逆襲のシナリオ」を支援する方法について妄想にふけってみたが、今回は実際の内容についてあれこれ考えてみることにする。

放送でもあったように日本の強みを活かす、というのが最大のテーマだろう。「敵を知り己をしれば百戦して危うからず」というが、ここ数年の各企業の業績状態、メディア、有識者の意見などを見ていると「サムスンに学べ!」という論調が多い。そりゃライバルだから学ぶことも多いでしょうね。でも前回も書いたように「自分たちのことを正しく理解していますか?」といいたくなるのだが、どうなんだろう。自虐感と変に「自分の立ち位置」に納得してしまっているような気がするが。バブルにリーマンショックと長いデフレ、円高ショック、震災、確かに自信喪失するのも無理はない。でもそういう逆境の中で雑草のごとく生き延びているのが日本の強さなんだろうと思う。

番組では中小企業発の製品を大企業がコーディネートして海外へ輸出、というのがあったが、そういう例は結構ありそうな気がする。中小企業の問題は規模と人材(ちょっと失礼な言い方だが)が大企業ほど潤沢ではないので、海外展開などを考えた場合の推進力はどうしても弱い。が、大企業自身が何かやろうとすると大企業病に陥ってフットワークが重くなる。
前回官僚が直接産業政策するとたいてい失敗といったが、同じように大企業が技術政策を行うと怪しく、それは中小企業の方がむしろ上手くいったりすることがあるのではないかと思う。
ならば、大企業の役割としては基礎研究のような時間も費用も掛かるものを中心に研究開発を行い、日常的創意工夫のような開発は中小企業に任せて、それを掬い上げてコーディネートするということではないか。私が今更こんなことを云う必要もなくそうなっているとは思うが、もう少しシステマティックにそういう流れが出来ると良いような気がする。

日本の良さって色々なノーベル賞もそれなりにとっており、基礎研究もまあまあだと思うが、真骨頂は「サブカルチャー」、「B 級グルメ」などのローカル色ではないかと思う。魔改造、改善大好きの国民性である。
世界でも評価されている日本食だって伝統的な内容も多いが、もともと「B 級グルメ」が昇格したものもあるのではないか。
どこの国もそうかも知れないが、効率、生産性、近代化を都市部が担い、地方はローカル色豊かということで、日本の場合国土の狭さ故の交流の便利さと、しかしたくさんの独自のローカル色がそれぞれ育っていて、都市部は世界有数というのが文化的には特色だと思う。そういった面からパッケージ化した産業を輸出できないか、と考える次第だ。
製造業における「B 級グルメ」を探してみるのもヒントになるかも知れない。

それじゃいわゆる IT 製品、家電なんていうのはどうなるのか、ということだが、それこそコモディティ化が進んで日本らしい世界に貢献できるものはどんどんなくなっていくのではないかと思う。とはいっても部品は別である。部品は上述のローカル色だったり、最初の頃述べた「こだわり」「慮り」「もてなし」による一見技術的には簡単に真似できそうで実は大変、みたいなものならば可能性はある。しかし製品は極端に言えば、センサ他の入り口があって、AD コンバータがあってプロセッサがあって DA コンバータがあって出力機器があるというハード構成で、製品が何であるか仕様はどうかなどというのは DSP のコード次第、なんていう状況で差別化出来る気がしない。
もちろんないとは云いません。ソニーがインドでテレビの色作りで成功した例などありますから。でも少なそうです。

それに今は日本で作っても人件費が高いので中国へとなり、そこも高くなってきたので東南アジアへ、で次は?やっていることが直線的である。当面はそれでも良いかも知れないが、何十年後、何百年後に世界で格差がなくなってきたときどうなるのか。予測はもちろん難しいが、その時に日本は何を産業にして暮らしに貢献し、富を得て、世界に貢献するのか少しでも考えておいた方が良いと思う。いわゆる百年の大計ってやつである。ちょっと大げさすぎた。
でもそういったイメージをどこかに持っておくことで、先ほどの「こだわり」「慮り」「もてなし」の精神を養うような教育が必要だとか、フラット化した世界に出て行ける人材は必要だとか、などの戦略が出てくるのではないかと思う。

さて最後に番組についてだが、かつてのこの手の名番組「電子立国日本の自叙伝」に比べるといささか軽いという印象である。もっとも「電子立国日本の自叙伝」は歴史を振り返って、当時の関係者がどのような戦略と戦術を行ったかを振り返った内容だが、今回はこれからどうするべきかを色々な事例をもとに考えてみた、ということで、云ってみれば予測に過ぎないし、でも明るい未来が築けるはずだという期待感も持たせる必要があるので、やむえないかもしれない。数十年後に「産業立国日本の自叙伝」が良い内容で放映されることを期待したい。