NHK スペシャルで製造業に関する話題だったと云うことで取り上げてみたが、感想と私なりの戦術(戦略には及ばない)を考えてみた。

まず「今なぜ製造業なのか」という問いかけだったが、番組でも「サービス業」に比べて「製造業」の方が生産性が高いこと、それにより格差解消につながることを挙げていた。
Part I (昨年 11 月のはじめ放映)ではこんなデータが出ていた。

その時の記事はこちら
「メイド・イン・ジャパン逆襲のシナリオ」の第2回目をミタ
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/7030187.html

「メイド・イン・ジャパン逆襲のシナリオ」の第1回目の再放送
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/7112248.html

「メイド・イン・ジャパン逆襲のシナリオ」の第1回目の感想のつづき
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/7115112.html

<ひとり当たりの GDP>
                製造業        サービス業
年代不明    917万円        470万円

で、実際の就労者数はというと、

<就業者数の推移>
                 製造業        サービス業    人員合計
1990年        1532万人    1500万人    約3000万人
2009年       1019万人    2500万人    約3500万人


なのでこれから私が勝手に計算してみると、

<製造業とサービス業の GDP>

                   製造業        サービス業    合計
1990年        140兆円        70.5兆円   
  約210兆円
2009年          93兆円        117兆円     約210兆円


結局、総 GDP は変わっていないのに就労者数が増えているという実態である。
この部分だけ取り上げると、日本人の生産効率が落ちていると云うことになる。ましては高齢化社会で非生産者が増え、働く人の負担は増えるばかりである。少しでも生産性を高めていかなくてはいけないというのは、これだけ見れば自明だろう。

ということで「メイド・イン・ジャパン」の復活を推進したいというのは当然だろう。
そもそも「サービス業」というのは「実体」と「お金」があってはじめて成立する。
アメリカも製造業への回帰を謳った政策をとろうとしている。
だいたい大統領が「3D プリンター」などという具体的な製品名を挙げること自体が真剣味を表している。普通は分野ぐらいしか云わないだろう。

さて、では日本はどうするべきか、というのが今回放映された内容だが、

<制度、仕組み論>
・多様化した顧客ニーズに柔軟に対応する組織作り
- 商品企画~開発~製造~販売までを一括して対応する中小企業的組織構成
- 自発性を重んずる人事
- 必要な制度を先取りして、開発完了後の商品化への敷居を低くする。


<商品開発>

 - 大規模シェアを目指すのではなく、「この分野ではシェア No.1」的な商品提案
- 高品質ブランドイメージを活かす。だが「不要な品質」は認めてもらえない。
   → 「品質」の定義って意外と難しかったりする。
- 中小企業が持つ技術製品を大企業が引き出す。

乱暴にまとめるとこんな感じか。

もう少し個人的な意見を付け加えてみる。

まず仕組み的なことを考えると、国の関与をどうするか、ということが最初にありそうだ。最近は国の主導で特定の産業に力を入れるなどという声が上がっているが、どうやらこれは上手くいった実績が少ないらしい。

ちょいとエロっぽい記事も多いサイトだが、こんなのがある。

産業政策の歴史は失敗の歴史 資金投じて成果なしでも官僚はお咎めなし
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130519/dms1305190709001-n1.htm

連載している高橋洋一教授については好みは分かれるが、過去の実績重視、データ重視的な分析/発言をしているのでそういう内容では説得力がある。
まあ確かに企業経験のない官僚に利益を出さなくてはいけない産業を創出せよ、といっても無理な話である。むしろ基礎研究や今後何十年に渡って必要とされるものは何かを考えてもらう方が良いだろうと思う。
最近の例では郵政民営化した後、前政権で先祖返りをして官僚出身の社長を据えたら、とたんに経営がおかしくなったようだ。民営化の是非については議論があるとはいえ、慈善事業をやっているわけではないから(しかも従業員に対する慈善事業になっていないか?)ちゃんと健全な経営をしなくてはいけないはずだが、経営者経験がない人にそんなことが出来るはずもなかろう。今度の西室泰三社長は東芝の社長であったこともあり、かつかなり厳しい方だったと聞く。失礼ながらちょっとご高齢なのが気になるが。

閑話休題。

とにかくあまり国は口出さない方が良い。ただ番組で云っていたように「制度創造」に心がけて欲しいと思う。特にいくつかの会社(競合会社も入っていればなおさら)がアライアンスを組んで何かを進めようとすると、場合に因っては独占禁止法に触れる恐れもある。それに対する事前の緩和要件を作っておく必要があるだろう。もちろん「談合」などは困る。
国が出すべきは「インセンティヴ」だろう。それも企業のみならず技術者個人へもだ。たとえば有力特許を考え出してそれがライセンス収入を生むならばその収入に対する減税処置を考えるとかだ。ちなみに今は雑所得扱いで、年間 20 万円まで無税、それを越えると確定申告が必要で税金がかかるようだ。日亜出身の中村教授ほどでないにしろ、技術開発で企業のみならず日本への貢献になることが多少なりともあるならそれを奨励する制度もあっていいのではないかと思う。
もう一つ、中小企業が特許取得してもその維持に費用が掛かり、あるいは侵害警告を行おうとしても経費がない、ということも聞いた。これももったいない話である。あるのかどうか知らないで書いているが、中小企業の知的財産管理を国が援助してもいいと思う。たとえば大企業の特許担当者が定年後、そういった組織に再就職して特許の質の評価や、海外企業の侵害調査などを代行するといのも人を活用するとい云う意味で良いのではないか。

大分妄言が長くなった。

まだ色々思いつきそうなので、続きはまた。