私が時々眺めてはコメントを出している「アナログ電子回路コミュニティ」でこんなお題があった。

FETを使った定電流回路
http://bbs.ednjapan.com/ADI/index.php?bid=4&u=on&v=1363437553GyxNiz

以下、読んでいただければ分かりますが FET とオペアンプの組み合わせで、1us のパルス幅で 1A ~ 10A の電流を LED に流したい、というものです。
ここのトピックでもいくつか例を紹介しているが、ちょっと大変なのはパルス駆動であること、電流が大きくかつ制御したい幅が広いことが難関のようだ。
これがパルスではなく、正弦波的な信号ならばそれほどの難易度でもないと思うし、レベルの決まったパルスならさほどでもない。が、レベルを制御しながらのパルスだと難易度はぐっと上がる。

たとえば大電流だけを流し続ければいい、という用途ならば以前に紹介したこんな回路で十分です。電圧で電流値も制御できます。

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パルスではあるが、多少電流の精度が悪くて良いならこんな回路も考えられます。

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小電流で効率が悪くても気にしないならこんな回路も考えられます。

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図面を書くのがおっくうだったので、NPN トランジスタで電流駆動していますが、実際に使うときはグランドに向かって PNP トランジスタで一定電流を流しておき、スイッチで LED をショート/オープンするのが速度的には速いです。

パルスが連続であって、最初の何パルスは多少精度が悪くても良いならこんな構成も考えられます。

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だがトピ主の希望は、前述のようなので次のような回路をベースに何とかしたかったようです。

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ちなみにオペアンプだけでは当然のように 10A は駆動できないので何か大電流素子を使わないといけないということになりますが、ここにトランジスタを持ち込むと(出力電流)/(トランジスタの hfe)のベース電流を流さなくてはいけないので、10A / 100 としても 100mA ぐらいはオペアンプから供給しなくてはいけなくなります。実際はもっと hfe は高いだろうし、ダーリントンを使えば hfe が 1000 ぐらいは余裕であるので選択肢にもなるとは思いますがダーリントントランジスタは大体において応答性が悪い

ということで、この回路構成に近い形で何とかしていかなくてはいけないのですが、まずこの回路構成で問題となりそうな事項を挙げてみることにします。それでそれらがシミュレーションでどのような影響を与えるかを確認していくことにします。
なお実際に組んでみると 10A のパルスの電流供給の問題やら実装の問題が出てきますが、ここではそれらには触れません。

・オペアンプのフィードバック回路の中に FET による電流バッファが入っていてかつ広帯域を要求されているのでその安定性。
・電流検出抵抗が 0.1Ωとなっているがその妥当性。あるいは値と性能との関係。
・FET のゲート電圧/ドレイン電流特性の線形性。もともとパワー FET はスイッチング用途なのでリニア用途に使った場合の問題点。
・ゲート容量とオペアンプの駆動能力。
・パルスがオフの時のオペアンプの挙動。
・オペアンプの DC 特性(オフセット電圧、入力バイアス電流)の影響。


早い話がオペアンプは理想オペアンプではないので、現実をよく見て動くようにしなくてはいけないのですが、これらの中で今までの記事で触れていないものもあります。それらは別の機会にまとめたいと思います。

ちょっと長い記事になりそうです。

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