※計算に誤りがありました。フィードバック回路で構成されている Cf Rf によるローパスフィルタのカットオフ周波数を 4.8MHz と書いてしまいましたが、正しくは 5.3MHz です。修正しました。4/23
前回フォトダイオードの出力をどうやって電圧に変換するか、ということで書き出しましたが、途中でいくつかの要素がこんがらがって整理して説明できなくなってしまいました。
今回まずはフォトダイオードの使い方についての技術的な詰めの流れを整理したいと思います。
<テーマ:フォトダイオードの出力を電圧に変換する>
・フォトダイオードの出力は電流源である
・ → 抵抗を接続することで電圧に変換できる。
・ → 出力電圧が大きくなるとダイオードが順方向に電流が流れるのでリニアリティが
・ 悪くなる。
・ → ダイオードに接合容量があるので、変換抵抗と接合容量で形成されたローパス
・ フィルタで応答が悪くなる。
・→ フォトダイオードに逆バイアスを掛ける。
・ → リニアリティが改善される。
・ → 接合容量が下がるので、応答も改善される。
・ → 一見よさげ。ただし接合容量と変換抵抗で相変わらずローパスフィルタは
・ 構成されている。
・→ オペアンプを通じて電流電圧変換を行う。
・ → リニアリティが改善される。
・ → 接合容量と帰還抵抗が分離するのでローパスフィルタが形成されない。
・ → 一見よさげ。
という展開になっているかと思います。で、実際に推奨回路としてはオペアンプを使ってかつ逆バイアスを掛ける、というのがよくあります。その辺りの「都合」をもう少し説明してみたいと思います。
逆バイアス万能的な流れになっていますが、先に副作用に触れておきます。
逆バイアス電圧と暗電流の関係は以下のように、逆バイアス電圧を上げると暗電流が増えるという傾向になっていて、適当なところでサチるとはいえ用途によっては無視できないかも知れません。

以下、基本的に逆バイアスありで話を進めますが、そういったトレードオフの関係は頭に入れておいて下さい。
さて、接合容量を無視しないでオペアンプを使った回路を書いてみるとこのようになります。

要は (-)端子にコンデンサがぶら下がった形になっていることが分かります。
どこかで見たことがありますね。こちら。
「微分器を考える」
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/8221289.html
そこでは「微分器」について考察していましたので、入力のコンデンサには前段の信号がつながっていました。で、この信号源がグランドになったのが今回の等価回路になります。
詳細はそのトピックを読んで欲しいのですが、一言で言うと「フィードバックにローパスフィルタが入ってしまい、位相が遅れてオペアンプの動作が不安定になる」ということです。
たとえば、接合容量が前回の HP333 で逆バイアスなし、変換抵抗が 10KΩ とすると、ローパスフィルタでの位相回りは 1.6 MHz で 45°となります。ですのでオペアンプの選び方としてゲイン交点がおおよそ 1MHz を越えるようなものを使うと周波数特性に結構ピークが出ます。
たとえば、AD826 という高速アンプ(ユニティゲイン 50MHz)を使うとこんな具合です。

これでは話にならないということで、もっと低速のものを選びます。
いささか無理があると思いつつ、LT6002(ユニティゲイン 50KHz)にしてみるとこんな具合です。

ちょっとピークが残ってしまいましたが、許容範囲かどうか。帯域は 100KHz ちょっとです。
これで完成です。
・・・。
ダメですよね。目標はもっと広帯域で使いたいので、オペアンプを通して変換しようと思ったわけですから、この程度の特性で良いのでしたら逆バイアスを掛けて抵抗だけで変換しても十分ですし、むしろ帯域が出るかも知れません。
そこでここでは AD826 を使って何とかしてみようと思います。
まず逆バイアスを掛けて接合容量を 10pF から 5pF に下げてみます。多少良いかも知れませんが、変わり映えしません。

そこで参考回路としてよく出てくるのが次の回路です。説明では、入力容量を打ち消すためにフィードバックにコンデンサ Cf を入れる、となっています。

Cf を実際に付けて特性を取ってみると次のようになりました。Cf は 1,2,3,4 pF としてみました。

1pF を付けただけで大幅にピークを抑えることができ、3pF ぐらいにするとフラットに -3dB で 5.8MHz の帯域が確保できました。そうはいっても帯域制限はされてしまっています。
フィードバック回路の形式としては、ローパスフィルタになっていることが分かります。
こちらもご覧下さい。
「周波数特性を持った回路を作ってみる」
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/8047917.html
さてそこでの知識を応用すると、この回路は Cf と Rf で設定される一次ローパスフィルタを形成しているらしい、というのが分かります。ただ、入力につながっている接合容量のおかげで少し様子が変わっているということです。
Cf が 3pF の場合 Rf が 10KΩ ですから、それらで周波数特性が決まっているとすると、1/(2πCfRf)が約 5.3MHz(4/24 修正) となります。要するにフィードバック回路としては 5.3MHz のローパスフィルタを作ったつもりが、入力容量で 10MHz 付近が少し強調されるため、5.8MHz ぐらいに落ち着いた、という感じでしょうか。
接合容量込みでフィードバック回路をもう少し解析してみましょう。
フィードバック回路だけ取り出すと、以下のようになります。

伝達特性は以下のようです。


ここに Rf = 10K、Cf = 3pF、Cj = 5pF として周波数特性を取ってみると、3MHz から先は位相が戻ってくるのでゲイン交点(50MHzぐらい)では位相マージンが確保できていてアンプの動作としては安定、特性としてはフィードバックで構成されたローパスフィルタでほぼ帯域が決まった、ということになります。
50MHz も帯域がある増幅器なのになんだよ~、と思うかも知れませんが、実際にはアンプ自体に入力容量を数pF 持っているため、フィードバック抵抗を入れただけでピークを持ってしまいます。これを避けるためには結局抵抗を下げざるを得ず、変換利得が下がる結果となります。実装によって生じる浮遊容量も影響を与えます。
なんかまだるっこしいですね。
長くなってしまいましたので、別の方法は次回に考えてみようと思います。
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前回フォトダイオードの出力をどうやって電圧に変換するか、ということで書き出しましたが、途中でいくつかの要素がこんがらがって整理して説明できなくなってしまいました。
今回まずはフォトダイオードの使い方についての技術的な詰めの流れを整理したいと思います。
<テーマ:フォトダイオードの出力を電圧に変換する>
・フォトダイオードの出力は電流源である
・ → 抵抗を接続することで電圧に変換できる。
・ → 出力電圧が大きくなるとダイオードが順方向に電流が流れるのでリニアリティが
・ 悪くなる。
・ → ダイオードに接合容量があるので、変換抵抗と接合容量で形成されたローパス
・ フィルタで応答が悪くなる。
・→ フォトダイオードに逆バイアスを掛ける。
・ → リニアリティが改善される。
・ → 接合容量が下がるので、応答も改善される。
・ → 一見よさげ。ただし接合容量と変換抵抗で相変わらずローパスフィルタは
・ 構成されている。
・→ オペアンプを通じて電流電圧変換を行う。
・ → リニアリティが改善される。
・ → 接合容量と帰還抵抗が分離するのでローパスフィルタが形成されない。
・ → 一見よさげ。
という展開になっているかと思います。で、実際に推奨回路としてはオペアンプを使ってかつ逆バイアスを掛ける、というのがよくあります。その辺りの「都合」をもう少し説明してみたいと思います。
逆バイアス万能的な流れになっていますが、先に副作用に触れておきます。
逆バイアス電圧と暗電流の関係は以下のように、逆バイアス電圧を上げると暗電流が増えるという傾向になっていて、適当なところでサチるとはいえ用途によっては無視できないかも知れません。

以下、基本的に逆バイアスありで話を進めますが、そういったトレードオフの関係は頭に入れておいて下さい。
さて、接合容量を無視しないでオペアンプを使った回路を書いてみるとこのようになります。

要は (-)端子にコンデンサがぶら下がった形になっていることが分かります。
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そこでは「微分器」について考察していましたので、入力のコンデンサには前段の信号がつながっていました。で、この信号源がグランドになったのが今回の等価回路になります。
詳細はそのトピックを読んで欲しいのですが、一言で言うと「フィードバックにローパスフィルタが入ってしまい、位相が遅れてオペアンプの動作が不安定になる」ということです。
たとえば、接合容量が前回の HP333 で逆バイアスなし、変換抵抗が 10KΩ とすると、ローパスフィルタでの位相回りは 1.6 MHz で 45°となります。ですのでオペアンプの選び方としてゲイン交点がおおよそ 1MHz を越えるようなものを使うと周波数特性に結構ピークが出ます。
たとえば、AD826 という高速アンプ(ユニティゲイン 50MHz)を使うとこんな具合です。

これでは話にならないということで、もっと低速のものを選びます。
いささか無理があると思いつつ、LT6002(ユニティゲイン 50KHz)にしてみるとこんな具合です。

ちょっとピークが残ってしまいましたが、許容範囲かどうか。帯域は 100KHz ちょっとです。
これで完成です。
・・・。
ダメですよね。目標はもっと広帯域で使いたいので、オペアンプを通して変換しようと思ったわけですから、この程度の特性で良いのでしたら逆バイアスを掛けて抵抗だけで変換しても十分ですし、むしろ帯域が出るかも知れません。
そこでここでは AD826 を使って何とかしてみようと思います。
まず逆バイアスを掛けて接合容量を 10pF から 5pF に下げてみます。多少良いかも知れませんが、変わり映えしません。

そこで参考回路としてよく出てくるのが次の回路です。説明では、入力容量を打ち消すためにフィードバックにコンデンサ Cf を入れる、となっています。

Cf を実際に付けて特性を取ってみると次のようになりました。Cf は 1,2,3,4 pF としてみました。

1pF を付けただけで大幅にピークを抑えることができ、3pF ぐらいにするとフラットに -3dB で 5.8MHz の帯域が確保できました。そうはいっても帯域制限はされてしまっています。
フィードバック回路の形式としては、ローパスフィルタになっていることが分かります。
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さてそこでの知識を応用すると、この回路は Cf と Rf で設定される一次ローパスフィルタを形成しているらしい、というのが分かります。ただ、入力につながっている接合容量のおかげで少し様子が変わっているということです。
Cf が 3pF の場合 Rf が 10KΩ ですから、それらで周波数特性が決まっているとすると、1/(2πCfRf)が約 5.3MHz(4/24 修正) となります。要するにフィードバック回路としては 5.3MHz のローパスフィルタを作ったつもりが、入力容量で 10MHz 付近が少し強調されるため、5.8MHz ぐらいに落ち着いた、という感じでしょうか。
接合容量込みでフィードバック回路をもう少し解析してみましょう。
フィードバック回路だけ取り出すと、以下のようになります。

伝達特性は以下のようです。


ここに Rf = 10K、Cf = 3pF、Cj = 5pF として周波数特性を取ってみると、3MHz から先は位相が戻ってくるのでゲイン交点(50MHzぐらい)では位相マージンが確保できていてアンプの動作としては安定、特性としてはフィードバックで構成されたローパスフィルタでほぼ帯域が決まった、ということになります。
50MHz も帯域がある増幅器なのになんだよ~、と思うかも知れませんが、実際にはアンプ自体に入力容量を数pF 持っているため、フィードバック抵抗を入れただけでピークを持ってしまいます。これを避けるためには結局抵抗を下げざるを得ず、変換利得が下がる結果となります。実装によって生じる浮遊容量も影響を与えます。
なんかまだるっこしいですね。
長くなってしまいましたので、別の方法は次回に考えてみようと思います。
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