※ 4/20 修正。図が一つ抜けていました。

前回別サイトでのトピックに参加して、フォトダイオードを使った光電変換回路についてコメントしたと紹介しました。

まだここでは光電変換回路について、「やさしく考える」として触れていなかったので、ちょっと流れから脱線しますがもう少し解説してみようと思います。

一口に光電変換と云っても色々な種類があります。
ここでがフォトダイオードとその使い方に絞って、オペアンプと組み合わせる際に発生する色々な都合をどう考えるかやってみようと思います。

フォトダイオードの等価回路は以下のようになります。

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電流源とダイオードの組み合わせに、接合容量とシャント抵抗、直列抵抗が付加されたようなものです。
ここで性能上大きな「都合」になるのが、ダイオード特性と接合容量になります。二つの抵抗はあまり効いてきません。シャント抵抗は無限大、直列抵抗はゼロと考えていて良いでしょう。

フォトダイオードの原理や基本的なことを知りたい方は、別途検索してみて下さい。ここではこういうものだということで進めます。

フォトダイオードは照射された光量に従って等価回路上での電流源のように電流が発生します。ダイオードの逆方向というのが面白いです。
光電変換回路というのは、この電流を扱いやすいように電圧に変換する回路ということになります。
実際はフォトダイオードがすでに光電変換しているので、回路の方は電流電圧変換回路なのですが。
全部まとめてそう呼ぶのでしょう。気にしないことにします。

さて、フォトダイオードで検索して使い方を調べるとほとんど次のような回路が出てきます。当然のようにオペアンプを使って電流電圧変換を行っています。実際に一番性能が出やすいからだと思いますが、なぜそうなっているのか天の邪鬼にももっと簡単な回路でなぜいけないのかを考えてみます。

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とにかくォトダイオードの出力は電流源ですから、もっとも簡単な電流電圧変換方法は抵抗です。以下のようにフォトダイオードに抵抗をつなげば電圧出力を得ることが出来るはずです。で、実際に条件付きで上手く動きます。

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この場合、電流電圧変換回路の出力インピーダンスは変換抵抗そのものになります。よって次に接続される回路に制限が加わります。言い方を変えると入力インピーダンスが低い回路をつなぐと検出電圧が変わってしまいます。
よって高入力インピーダンスのオペアンプを登場させて、後ろでバッファリングさせる(あるいは増幅しておく)ことで次の処理回路の影響を受けなくします。

これで完成です。以上。

いえいえ、そういうわけにはいきません。
たとえば変換抵抗を 100KΩ として、光電流出力が 10uA あったとします。そうすると電圧出力は 100KΩ x 10uA で 1V 得られます。ですがちょっと回路を見て下さい。そうです、初の都合、ダイオードです。何故か光電流はダイオードの向きと逆方向に出てくるおかげで、抵抗で電圧電流変換してもダイオードの順方向電圧が 0.5V ~ 0.7V のためそれ以上は上がりにくくなります
たとえば光電子社の HP333 は以下のような順方向特性を持っているので、0.4V 以上は上がりにくく、折角光電流が発生しても発生するそばから順方向に電流が流れて相殺してしまいます。

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小さい変換抵抗を選べばいいのでしょうが、それでは検出電圧も小さくなるので後処理が大変になりそうです。

そこで出力電流が上がってもフォトダイオードの両端の電位差が上がらなければいい、ということでオペアンプの(-)端子にフォトダイオードの一端をつなぐことで、直接抵抗で電流電圧変換をするのではなくてオペアンプを通じて電流電圧変換をするようにします。

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またもう一つの方法があります。
ダイオードのカソードが上の例ではグランド電位につながっていましたが、これをプラスの電位につなぐ方法があります。次のような感じです。プラスの電位につないだからって光電流の状態は変わりません。むしろ高い電位から電流が流れてくる感じで、精神衛生上も良いです(いみふ?)。

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冗談はさておき、こうすることで電流を受け取った抵抗がちょっとやそっと電圧を発生させたってダイオードに順方向電圧が印加されることはありません

以上の二つの方法で、電流電圧変換のリニアリティを改善することが出来ました。
ですが、最初に示した回路はその両方を組み合わせたごとくの回路になっています。オペアンプを通じて電流電圧変換を行うとともにダイオードに対しては逆方向の電圧(逆バイアスといいます)を与えるという形になっています。
さて、何が不満なのでしょう。

ここで第二の都合、接合容量が登場します。もともと最初の抵抗だけで電圧電流変換するときももちろん存在していました。

接合容量は前述の HP333 では、約 5 ~ 10pF 程度です。これが問題になるほど大きいかどうかということですが、もちろん信号処理への要求仕様によります。ここではそれなりに広帯域(数 MHz 程度)とします。
抵抗で単純に電流電圧変換する場合は、抵抗とこの接合容量とで一次のローパスフィルタが形成されます。ちょっとわかりにくい?
電流源と接合容量と変換抵抗だけを取り出して、回路を書き換えてみます。

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電流源に抵抗がつながっている場合、これを等価的に電圧源に変換すると、電流と抵抗を掛けた電圧源を作り、その電圧源の出力インピーダンスがその抵抗になっているようになります。そこに接合容量がつながるわけですから変換抵抗と接合容量で形成された一次ローパスフィルタに見えるわけです。で、一般的に逆バイアス電圧を大きくするとこの接合容量が低くなりますので、同じ変換抵抗でも周波数特性が良くなるわけです。HP333 の特性を以下に示しておきます。

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ですが、逆バイアスを増やして接合容量を減らしても変換抵抗を大きくすると帯域は制限されますから、やっぱり抵抗で直接電圧電流変換するのはちょっと性能上ものたりなそう、ということになったりします。たとえば変換抵抗を 10KΩ にしたとして、接合容量が 5pF あるとそれで 3.2MHz のローパスフィルタを形成したことになります。

では、最初に戻ってオペアンプで電流電圧変換する場合は、接合容量とフィードバック抵抗の間に周波数特性を持たせるものがなさそうに見えますからこれならいいのでは、と思いたくなります。
ところが前回の説明を見た方なら気がついていると思いますが、そういうわけにはいかないと云うことを次回説明したいと思います。

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