次の波形を見て下さい。
イメージ 1前半がデューティ 50% のパルスに対して負荷が適正で正常に出力電圧が発生している場合で、入力電圧の半分(トランジスタの電圧降下分、ダイオードの効果分はゼロとします)の電圧を出力できている場合の図です。後半は負荷が軽くてデューティ 50% にも関わらず、出力電圧が上がってしまっている場合です。

順番に説明していきます。

といってもある程度出力電圧が落ち着いたところでの観測になります。

イメージ 5
負荷が適正の場合は、出力電圧は入力電圧の半分になっているとして、コイルの両端の電圧 Vu1 は上図の模式図でスイッチが電源側になっている状態でコイルの電位差は入力電圧の半分となり、これでコイルに電流を流しているわけですから、(電圧)/(インダクタンス)x(時間積分)という電流が流れます。スイッチがグランド側になると今度はコイルの電位差 Vd1 は反対方向にやはり入力電圧の半分となり、同じ傾斜でコイル電流は下がっていきます。つまりコイルのボトム電流とピーク電流 Ip1 の中間が平均電流となります。で、この平均電流というのは出力電圧が印加されている負荷抵抗の値で決まり、(平均電流)=(入力電圧の半分)/(負荷抵抗)となります。

負荷が適正でない場合は、出力電圧は入力電圧の半分より大きくなっていました。従って、コイルの両端の電位差 Vu2 は Vin / 2 より小さくなっており、コイル電流が増加していく傾斜も小さくなります。次に逆方向に流れる場合はコイルの電位差 Vd2 は、Vu2 より大きくなっていますから、コイル電流の傾斜は急になります。結局 Ip2 から減少していくわけですが、減少傾斜が大きいため早くゼロになってしまいます。平均電流は図中薄い水色で囲った面積が総電流量になりますので、これを一パルス幅時間で平均化した値になります。言い方を変えれば、負荷の大きさと出力電圧と平均電流がオームの法則を満たすように、コイル電流が流れることになります。これはどの条件でもそうですが。

ということで以下のように式を作って計算してみます。

イメージ 2
・・・。
なんか四則演算しかないのに、出来の悪い中学生、いやそれじゃあ中学生に失礼か。ひどい論理の展開と式の変形ですが、結果はこれでいいと思います。

LTspice:本当か?!


ここで L = 200 uH, T = 5 us(半周期分です)を入れて計算すると、
RL <= 200 x 2 / 5 = 80
すなわち 80オーム以下なら成立しそうだと云うことが分かりました。
本当か、というツッコミが入ったので LTspice で計算してみます。
抵抗値は、70, 80, 90Ωでやってみました。

LTspice:結局オレが頼りね。(クスクス)

イメージ 4結果は以上のようで、一応どれももっともらしいです。それでも一番怪しげな 90Ωの時だけ拡大してみます。
イメージ 3
と、こういう感じでしてコイル電流が反対方向に流れて、一応もっともらしいようです。

LTspice:ちゃんと計算しろよ。

大ざっぱな計算でだいたいのことはつかめて、シミュレーションでもほぼ同じ値が得られたと言っていいと思います。
もっと手計算精度を上げるには、ダイオードの電圧降下分とトランジスタの電圧降下分を考慮する必要があります。さらにパルスデューティについても一般化するには結構面倒くさいことになるのですが、ここではおおよそをつかむだけにして後はシミュレーションに任せることにします。

LTspice:そういうのを手抜きというのでは?
画蔵:(無視)


ちなみに入力側にとってトランジスタがオンになっている期間しか電流が流れず、かつ三角波のような電流なので消費電力は少ないです。効率はざっと 94% ぐらいです。電圧を効率よく低下させたい用途には出力電流がある程度必要であることと、入力電圧が安定である、という制限の中で簡単にできそうです。もっともリニアレギュレータに比べてノイズは多いですが。

次は入力電圧のレギュレーションが悪くても、それなりに安定な電圧を出力できるようにしてみます。