相変わらず変なタイトルを付けていますが、今まではモータとかアクチュエータとかなにがしかの周波数特性をもった要素があって、これをどう料理してやるか、みたいなのがテーマでした。
今回はオール電気部品と云うことでどこが頭でどこがしっぽか分からないような系をどうやって組むかというのがテーマとなります。
例として、光ディスクドライブで使われていたレーザ制御を取り上げます。
レーザ制御なのでレーザの特性が主役ということになるのですが、実は周波数特性としては他のどの部品よりもフラットで帯域が広いので、サーボを組む上ではほぼただの係数です。なのでこれをどうするかということになります。
レーザ制御とは、レーザの光量一定にする、ということなのですが、では駆動電流を一定にしておけばいいのかというと、この駆動電流と発光量の関係が少し不安定なのです。
次のグラフを見て下さい。(出展:秋月電子通商、三洋電機 DL-3247-165)

レーザというのは電流で光量を制御するものですが、レーザ自体はダイオードなので順方向に閾値があります。その閾値を超えると超えた分に対して電流におおよそ比例して光量が上がります。この係数を微分係数と呼びます。
で、レーザというのはこの閾値と微分効率が固体間のばらつきもさることながら、温度で大胆に変わります。これが問題なのです。レーザの順方向電圧は赤色のもので 2.5V ぐらいでしたか。ここに約 100mA ぐらいの電流を流すわけですから、250mA ぐらいの電力を消費します。このため発光してすぐにチップが温度上昇し、ちょっと放熱が悪いとどんどん上がります。そうなると閾値が上がり光量も下がってしまいます。
それを防ぐために制御が必要なわけです。
では、どんな構成にしなくてはいけないか。
先ほど、光量を一定にしなくてはいけない、と書きました。ということは光量を検出して電気信号に変換する手段が必要だと云うことになります。
その電気信号が一定になるようにするために、比較する電気信号が必要です。これを参照信号と呼びます。
後はそれを増幅して、レーザの駆動電流にすればいいわけです。
いつもの基本ブロック図で見ると、I は入力信号なので、今回は参照信号になります。通常のサーボでは外乱と云ったりするのでイメージが悪いのですが、とにかくここに収束させることになります。O が発光量になります。厳密には発光量を検出した信号です。で、G が制御ブロックということになります。

回路で表すとこうなります。ただし実際にこういう回路で制御していたわけではありません。説明用の回路と思って下さい。

左からフォトダイオードでレーザの発光量を光電変換して電流に直します。
それを抵抗 R1 10kΩで電流電圧変換します。
それを一旦適当に(ここでは 10 倍としました)増幅します。
その電圧と参照電圧を比較します。
それをさらに増幅(ここでは 10 倍としました)します
そこにフィルタを入れます。特性は次に説明します。
フィルタの出力をドライバアンプによって、電圧電流変換してレーザに流します。
発光したレーザ光量のうちの一部(ここでは 5% とします)をフォトダイオードに照射します。
ということで一巡ループが完成します。
すべての素子が理想動作ならば、フィルタなしでもこれで動くのですが(帯域無限大:光速を越える動作)、実際はそうはいきません。
現実的な問題を簡単に抑えておきます。
まずフォトダイオードに周波数特性があります。周波数特性というよりは接合容量と電流電圧変換の抵抗との関係で、ローパスフィルタ的な動作をします。
増幅器も周波数特性というか帯域が制限されます。比較器も同様です。
レーザドライバも帯域が制限されます。
レーザ自身は結構帯域が広いです。この中ではほとんど周波数特性は持たないと言っていいでしょう。
という事情からすると、一巡ループの周波数特性はどうなるか分かったものではありません。そこでフィルタによる意図的な帯域制限が必要になります。フィルタはローパスフィルタまた積分器のようなものになります。- 20dB / decade の特性も持ったフィルタを使って制限します。
そうするとゲイン交点はどうなるのかというと全体の
(DC ゲイン)x(ローパスフィルタのカットオフ周波数)
ということになります。
で、このゲイン交点付近の特性に各要素の周波数特性が影響を与えないようにすれば一巡ループの周波数特性の設定は DC ゲインとローパスフィルタのカットオフ周波数だけで制御できることになります。現実的には 数百 Hz ~ 数十 KHz ぐらいでしょう。もちろん各デバイスの性能を追求すれば、かなり高い周波数帯域(数十 MHz)は実現できます。
DC ゲインとフィルタのカットオフ周波数を設定することで、サーボ特性を定めることが分かりました。フィルタ特性はいわゆる CR ローパスフィルタなので簡単に設計できますが、DC ゲインはどうするかということを考えてみます。
頭から順番に考えていきます。
フォトダイオードの検出感度ですが、レーザの発光量をどのくらい分けてもらってフォトダイオードに照射するかで変わります。ここでは 5% としました。よって、レーザが 0.1W 発光したとすると 5mW 分を受光します。その 5mW にフォトダイオードの検出感度を掛けます。たとえば、0.5 A / W とします。そうすると 5mW で 2.5mA 出力されますが、もともとはレーザが 0.1 W 発光した結果ですから検出感度としては、25mA / W となります。
次に抵抗を使って(オペアンプを使うのが一般的ですが)電流電圧変換しますが、1 KΩの抵抗を使ったとしますと、変換係数は 1000 V / A になります。
アンプを使って 10 倍に増幅します。
比較回路のゲインは 1 としています。
これを 10 倍増幅します。
ドライバ回路で電圧電流変換してレーザに電流を流します。変換係数はドライバのトランジスタのエミッタ抵抗で決まります。ここでは 10 Ωとしていますので、変換係数は 0.1 A / V になります。
この電流がレーザに流れますが、レーザの閾値電流はここでは 20mA として、微分効率は 0.8 W / A とします。
以上より DC ゲインは全部の係数を掛ければよいので
25 (mA/W)×1000 (V/A)× 10 × 10 × 0.1 (A/V)× 0.8 (W/A) = 200(無名数になって単なる係数であることが分かります)
ここでループ帯域としては、10 KHz を希望するならばローパスフィルタのカットオフ周波数は、10 KHz / 200 = 50 Hz にすればよいことが分かります。
実は設計プロセスとしては逆で、レーザの変動要因を把握してそれを押さえ込むために必要なゲインと帯域を想定して、動かせるパラメータと動かせないパラメータを区別して設計し、必要な DC ゲインとローパスフィルタの特性を実現することになります。
今回の結果を一言で言うと、それなり広い帯域を持つ電子電気回路で構成されたサーボは、それらが特性に悪影響を与えない周波数帯域に制限すべく、一次遅れ=ローパスフィルタを入れておく、ということになります。もちろん積分器でも構いません。
今回はオール電気部品と云うことでどこが頭でどこがしっぽか分からないような系をどうやって組むかというのがテーマとなります。
例として、光ディスクドライブで使われていたレーザ制御を取り上げます。
レーザ制御なのでレーザの特性が主役ということになるのですが、実は周波数特性としては他のどの部品よりもフラットで帯域が広いので、サーボを組む上ではほぼただの係数です。なのでこれをどうするかということになります。
レーザ制御とは、レーザの光量一定にする、ということなのですが、では駆動電流を一定にしておけばいいのかというと、この駆動電流と発光量の関係が少し不安定なのです。
次のグラフを見て下さい。(出展:秋月電子通商、三洋電機 DL-3247-165)

レーザというのは電流で光量を制御するものですが、レーザ自体はダイオードなので順方向に閾値があります。その閾値を超えると超えた分に対して電流におおよそ比例して光量が上がります。この係数を微分係数と呼びます。
で、レーザというのはこの閾値と微分効率が固体間のばらつきもさることながら、温度で大胆に変わります。これが問題なのです。レーザの順方向電圧は赤色のもので 2.5V ぐらいでしたか。ここに約 100mA ぐらいの電流を流すわけですから、250mA ぐらいの電力を消費します。このため発光してすぐにチップが温度上昇し、ちょっと放熱が悪いとどんどん上がります。そうなると閾値が上がり光量も下がってしまいます。
それを防ぐために制御が必要なわけです。
では、どんな構成にしなくてはいけないか。
先ほど、光量を一定にしなくてはいけない、と書きました。ということは光量を検出して電気信号に変換する手段が必要だと云うことになります。
その電気信号が一定になるようにするために、比較する電気信号が必要です。これを参照信号と呼びます。
後はそれを増幅して、レーザの駆動電流にすればいいわけです。
いつもの基本ブロック図で見ると、I は入力信号なので、今回は参照信号になります。通常のサーボでは外乱と云ったりするのでイメージが悪いのですが、とにかくここに収束させることになります。O が発光量になります。厳密には発光量を検出した信号です。で、G が制御ブロックということになります。

回路で表すとこうなります。ただし実際にこういう回路で制御していたわけではありません。説明用の回路と思って下さい。

左からフォトダイオードでレーザの発光量を光電変換して電流に直します。
それを抵抗 R1 10kΩで電流電圧変換します。
それを一旦適当に(ここでは 10 倍としました)増幅します。
その電圧と参照電圧を比較します。
それをさらに増幅(ここでは 10 倍としました)します
そこにフィルタを入れます。特性は次に説明します。
フィルタの出力をドライバアンプによって、電圧電流変換してレーザに流します。
発光したレーザ光量のうちの一部(ここでは 5% とします)をフォトダイオードに照射します。
ということで一巡ループが完成します。
すべての素子が理想動作ならば、フィルタなしでもこれで動くのですが(帯域無限大:光速を越える動作)、実際はそうはいきません。
現実的な問題を簡単に抑えておきます。
まずフォトダイオードに周波数特性があります。周波数特性というよりは接合容量と電流電圧変換の抵抗との関係で、ローパスフィルタ的な動作をします。
増幅器も周波数特性というか帯域が制限されます。比較器も同様です。
レーザドライバも帯域が制限されます。
レーザ自身は結構帯域が広いです。この中ではほとんど周波数特性は持たないと言っていいでしょう。
という事情からすると、一巡ループの周波数特性はどうなるか分かったものではありません。そこでフィルタによる意図的な帯域制限が必要になります。フィルタはローパスフィルタまた積分器のようなものになります。- 20dB / decade の特性も持ったフィルタを使って制限します。
そうするとゲイン交点はどうなるのかというと全体の
(DC ゲイン)x(ローパスフィルタのカットオフ周波数)
ということになります。
で、このゲイン交点付近の特性に各要素の周波数特性が影響を与えないようにすれば一巡ループの周波数特性の設定は DC ゲインとローパスフィルタのカットオフ周波数だけで制御できることになります。現実的には 数百 Hz ~ 数十 KHz ぐらいでしょう。もちろん各デバイスの性能を追求すれば、かなり高い周波数帯域(数十 MHz)は実現できます。
DC ゲインとフィルタのカットオフ周波数を設定することで、サーボ特性を定めることが分かりました。フィルタ特性はいわゆる CR ローパスフィルタなので簡単に設計できますが、DC ゲインはどうするかということを考えてみます。
頭から順番に考えていきます。
フォトダイオードの検出感度ですが、レーザの発光量をどのくらい分けてもらってフォトダイオードに照射するかで変わります。ここでは 5% としました。よって、レーザが 0.1W 発光したとすると 5mW 分を受光します。その 5mW にフォトダイオードの検出感度を掛けます。たとえば、0.5 A / W とします。そうすると 5mW で 2.5mA 出力されますが、もともとはレーザが 0.1 W 発光した結果ですから検出感度としては、25mA / W となります。
次に抵抗を使って(オペアンプを使うのが一般的ですが)電流電圧変換しますが、1 KΩの抵抗を使ったとしますと、変換係数は 1000 V / A になります。
アンプを使って 10 倍に増幅します。
比較回路のゲインは 1 としています。
これを 10 倍増幅します。
ドライバ回路で電圧電流変換してレーザに電流を流します。変換係数はドライバのトランジスタのエミッタ抵抗で決まります。ここでは 10 Ωとしていますので、変換係数は 0.1 A / V になります。
この電流がレーザに流れますが、レーザの閾値電流はここでは 20mA として、微分効率は 0.8 W / A とします。
以上より DC ゲインは全部の係数を掛ければよいので
25 (mA/W)×1000 (V/A)× 10 × 10 × 0.1 (A/V)× 0.8 (W/A) = 200(無名数になって単なる係数であることが分かります)
ここでループ帯域としては、10 KHz を希望するならばローパスフィルタのカットオフ周波数は、10 KHz / 200 = 50 Hz にすればよいことが分かります。
実は設計プロセスとしては逆で、レーザの変動要因を把握してそれを押さえ込むために必要なゲインと帯域を想定して、動かせるパラメータと動かせないパラメータを区別して設計し、必要な DC ゲインとローパスフィルタの特性を実現することになります。
今回の結果を一言で言うと、それなり広い帯域を持つ電子電気回路で構成されたサーボは、それらが特性に悪影響を与えない周波数帯域に制限すべく、一次遅れ=ローパスフィルタを入れておく、ということになります。もちろん積分器でも構いません。