積分器、ローパスフィルタときたら次は微分器、ハイパスフィルタとなります。

まず微分器からですが、多くの書籍で触れているように真の微分器は作れません。理想オペアンプがあれば可能だと思いますが、理想オペアンプ自体が力学における剛体の存在と同じようなものだと私自身は感じています。そんな議論聞いたこともありませんが。(え?)
無限の帯域と利得を持つと云うことは、移動速度が無限大と同じことでそれは光速を越えるという話で...。
...。
...。

分かりません!!!!!\(^^;/
アインシュタイン大先生!ヘルプ!

済みません、妄想に耽ってしまいました。

とにかく微分演算をするには高い周波数で無限の利得が必要なので、そんなものはできない、ということでいいと思います。
とはいっても実際にどういう問題が出るの?ということを一応検証しておきます。

理想微分回路は次のようになります。積分器とコンデンサ、抵抗が逆になります。

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伝達関数としては以下のようです。

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さて、これが微分できる出来ないはともかくオペアンプの回路として安定に動作するかどうかだけは見ておきます。
フィードバック部分だけを抜き出すと、次のような一次ローパスフィルタのような形式になって、

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伝達関数とボード線図は以下のようになります。

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これを前回のフィードバック回路が系に与える影響の検討に当てはめてみると、オペアンプ自体が大きなローパスフィルタでしたから、これにさらにローパスフィルタが重なることになって、次のようなボード線図になります。

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そうすると、見ての通りゲインが 0dB の 10KHz 付近で位相が -180°を越えてしまいますね。遅延を考えなければ -180°どまりですが実際はそうはいきません。
ということでサーボ特性として不安定になることが分かります。よって現実のオペアンプとしては微分器を構成しても安定に動かず、その前に発振します。
ということで残念ながら理想微分回路は形すら成立しないので、特定の周波数より上では微分動作しない=疑似微分回路=ハイパスフィルタにする必要があります。

参考書にあるのは次の回路です。

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入力容量に直列に抵抗を入れてあります。理想オペアンプとして特性を計算しておくと、

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となります。最後の式の前半の sCR2 は微分を表します。微分係数は CR2 です。次の分数はローパスフィルタの式で、時定数は CR1 です。つまり、CR2 の時定数で微分をしますが、CR1 の時定数より先では微分とローパスフィルタの特性が打ち消しあってフラットな特性になります。疑似微分というのは完全微分にローパスフィルタが付け加わったものといえます。

R1 = 10K、R2 = 100K、C = 1600p とすると周波数特性は、以下のようになります。

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10KHz までは周波数が上がるに従ってゲインが上がっているので、微分特性を示します。そこから先はフラット増幅器で利得は 20dB です。
では、これが現実のオペアンプを使った場合どうなるか考えてみます。
出力端から入力端へのフィードバック回路は以下のようになります。いわゆる一次遅れ回路です。

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伝達関数は次のようになります。

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ボード線図は次のようになります。

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これをオペアンプの伝達特性と合成するとボード線図は、

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となります。完全微分器と違うところは、CR1 の時定数で決まる周波数で位相が戻ってくるので、ゲイン交点付近での位相が -180°から遠ざかり安定になると云うことです。

仮に 20dB 以上あれば、設定した機能を満足するのであれば(理想オペアンプの場合とほぼ同等というのであれば)数十 KHz ぐらいまではそれなりの動作が期待できるといえます。
C と R1 の決め方ですが、1 / (2πC R1) が、オペアンプのゲイン交点より十分低い必要があります。まあ、十分の一以下にしておけば大丈夫でしょう。

一気にやってしまいましたが、何となく感じはつかめたでしょうか。