オペアンプを使って周波数特性を持たせてフィルタを作ってみましたが、これがフィードバックループにおける安定性とゲイン特性とにどんな影響を与えているか考察してみます。

数式だけで考えても良いのですが、実際の数値を見ながらの方がわかりやすいかと思いますので、できるだけもっともらしい数値でやってみます。
以下の回路を見て下さい。前回出てきた反転型ローパスフィルタです。

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DC ゲインが 20 dB(x10)でカットオフ周波数が約 1 KHz です。
積分器の設計でツッコミがあったように、これがフィルタとして理想的に動くには理想オペアンプである必要があります。ですが実際にはゲインは有限ですし、高域でだんだんゲインが落ちて位相が遅れてくるということですから、安定性がどうなっているのか、フィルタとしての動作はちゃんとするのかを検討しておかなくてはいけません。

最初にオペアンプの大まかなボード線図を考えてみます。
オペアンプは大きなゲインを持った一次ローパスフィルタと言えます。これはアンプの回路設計的に意図的に作り込まれているものです。そこにあまり歓迎しない、しかし避けて通れないもう一つのローパスフィルタが加わります。さらにサーボ設計にとって凶悪の遅延を考慮します。
ここでは DC ゲインを 100dB、最初のフィルタのカットオフ周波数 f1 を 100Hz とし、もう一つの歓迎しないフィルタのカットオフ周波数を 100MHz とします。系の遅延として、10ns を入れてみることにします。
これらのボード線図は次のようになります。何となくもっともらしいでしょうか。
単純にこのオペアンプを非反転増幅器として使うと、サーボ的にはこのままの特性が開ループ特性になります。ゲイン交点は 10MHz でその時の位相は -137°ということで、位相マージンは 43°ということになります。

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ではローパスフィルタの帰還回路はどうなっているかというと次の図です。
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これの伝達関数は、以下のように計算できて、
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ボード線図は次の通りです。

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これら二つが組み合わさってフィードバックループを形成していますので、そのボード線図は次のようになります。

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この特性はどういう意味を持つかというと、フィードバックループの安定性と形成された機能の精度に影響します。
つまりこの特性の場合は一巡ループとしては位相マージンが元々のオペアンプの特性とほぼ同等で、43°あるということになりおおよそ安定であろう、ということと DC ゲインとしては 80dB あるので DC ゲイン精度(20dB に対する精度)は、一万分の一ということになります。
また各周波数におけるフィルタ特性の精度もそれぞれの周波数でのゲインで決まりますので、低い周波数ではそれなりの設定通りのフィルタ特性が得られますが、高い方ではたとえば 1MHz を越えるとループゲインが 20dB 以下になりますので、怪しくなってきます。これは前回シミュレーションでオペアンプごとに比較した結果からも理解できると思います。

ちょっと面倒くさそうなことを書きましたが、まとめると今回の回路構成では 1KHz のローパスフィルタは 1MHz ぐらいまではちゃんと動作してくれますが、それを越える信号が入ってくると思ったほどは減衰してくれないということです。

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