あくまでもシミュレーションでの話ですので。

反転増幅器を使ったローパスフィルタと非反転増幅器を使ったローパスフィルタを比較してみます。

「非反転増幅器型っていったって、CR フィルタを増幅しているだけじゃん!」
「分かった分かった」


反転増幅器を使ったものは、オペアンプの増幅作用を用いているのでオペアンプの性能の影響を受けることは想像できますが、どんな風になるでしょうか、シミュレーションで確認してみます。

それぞれの回路はこうなります。

反転増幅器型

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非反転増幅器型

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使うオペアンプは、帯域の広い LT1807(GBW = 350MHz)とどちらかというとローパワー用途の LT1638(GBW = 1.2 MHz)を比較してみました。
フィルタ特性はカットオフ周波数 = 10 KHz とし、入力信号は 1 MHz 0.1 V p-p です。増幅率は 2 倍(= 6dB)です。
なんだ、カットオフ周波数が 10 KHz なら 1 MHz が入ってきたって 100 分の一に落とせばいいのでどれ使ったって楽勝じゃん、と思うのですが果たして。

LT1807

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LT1638

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なんと広帯域用途の LT1807 はちゃんと周波数特性上もスペクトラム上も 1 MHz は -34 dBになっていますが、LT1638 は -20dB 程度で出力に信号が残ってしまっています。

これはどういうことかというと、前回解説したローパスフィルタの検討は理想オペアンプが前提でした。実際にはそのようなものはないので、有限ながらも扱う周波数においてゲインがそれなりにないといけないわけです。
ところが LT1638 はゲインバンド幅(GBW)が 1.2 MHz と今回の入力信号 1 MHz に対してゲインの余裕がないので、数式通りの性能が出ません。でも余裕がないだけなら、信号はより減衰するのでは?と思うかも知れませんが、その余裕のなさはゲインのみならずオペアンプの出力端子が電圧源であることにも影響を与えています。
回路図を見て下さい。もしオペアンプがなかったら信号はどういう風に伝わるでしょうか。入力抵抗を通して電流が流れフィードバック抵抗とコンデンサを通じて出力に伝わります。オペアンプが信号を吸収できないのです。よってオペアンプの帯域やゲインに余裕がないと、オペアンプがない状態に近づくことになるのです。
スペックシートなどでは出力抵抗が周波数特性を持つという形で示されています。

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それに対して非反転増幅器型の結果ですが、

LT1807
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LT1638

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ローパスフィルタは CR で構成されているので、周波数特性はちゃんとしています。その周波数特性にアンプ自身の特性が加わる程度で、LT1638 でもまあまあの性能、あれ?アンプ自身の能力として 1 MHz を増幅しきれずさらに減衰しています。
まあ、高域を落とすためにローパスフィルタを組んでいるのでより減衰する分には許容でしょう...。
LT1807 もスペクトラムがちょっと下がり気味ですね。まあいっか。(周波数特性とスペクトラムの関係がイマイチ)

今回のまとめとして、反転増幅器型でローパスフィルタを構成しようとする場合は、入力される信号周波数をカバーするぐらいの性能を持っていないと思った通りの特性が出な、ということです。非反転増幅器型は CR だけで特性が決まるので、アンプとしては通過させたい帯域をカバーしていれば良さそうだということです。

「アクティヴフィルタは何か面倒くさいな」
「まあ、あれだ。AD 変換する際にサンプリング周波数の半分以下に信号成分を制限する必要があるのと同じようなものだ。」
「ごまかしてないか?」

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