だんだん他のトピックが行き詰まってきた、というわけではないが、どちらかというともう少し実用的な方向でかつ実体験に基づいた方が参考にしてもらえるかも知れないと思い、自分がやってきたサーボ設計をテーマに色々書いてみたい。
タイトルから想像できるように全く学術的ではない。直感的に理解してしかしポイントを抑えた内容を目指してみたい。

最初はサーボ設計とは何かから始めなくてはいけないが、ここではフィードバック制御を中心に考える。
必要な要素として、

・現在の状態を表す信号
・目標となる状態を表す信号
・状態を変化させる手段


何がやりたいかというと「状態を変化させる手段」を用いて「現在の状態」を「目標となる状態」に移行させることである。
「scilab で遊ぼう」や「やさしく考えるアナログ回路:オペアンプ」、「技術メモ」にもしばしば出てくるが、要は次のブロックになる。

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ここで I は「目標となる状態を表す信号」O は「現在の状態を表す信号」、そして G が伝達関数と表現しているが「状態を変化させる手段」ということになる。
たとえば「技術メモ」で出てきた PLL について考えると、I は入力信号。これが目標となる状態というのも妙な気がするがやりたいことが入力信号に応じて VCO を発振させることにあるので、こういうことのなる。O は VCO の発振。G はそれを構成する「位相比較器」、「ループフィルタ」、「VCO」ということになる。

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サーボ設計で抑えるべきポイントは以下のように云われる。

1.即応性
2.安定性
3.定常偏差


これらは良く出てくる内容だと思うが、これに次の要素も加えておいた方がよいというのが私の考えだ。

4.定常偏差になるまでの追従時間

これらを前述の PLL のボード線図と抱き合わせて説明してみる。

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「即応性」:
云わずと知れたサーボ帯域そのものである。目標となる状態の変化に対してどのくらいの時間で応答するかを表す。ボード線図上ではゲイン交点で表される。
「安定性」:
これは「サーボ設計入門」などの本を読むとナイキスト線図などでポールの位置とかゼロの位置とか云っているが、乱暴に云うと位相マージン、ゲインマージンのことである。これは前者はゲイン交点付近の位相が -180度(場合に因っては +180度)に対してどのくらい離れているかということである。ゲイン交点で -180度になると何が起こるのかは別途解説する。このマージンが小さいと応答特性にオーバーシュートが現れ、大きいと同じ帯域でもゆっくり収束する。
「定常偏差」:
これはサーボが応答した結果、目標に対してどのくらい離れているかを表す。これは通常は DC ゲインで表す。また後に出てくるがたとえば光ディスクドライブにおけるフォーカスサーボシステムでは、ディスク回転数に同期した周波数成分の「目標」が多く現れる。この場合は定常偏差はその周波数におけるゲインと云って良い。
「定常偏差になるまでの追従時間」:
これは PLL のボード線図では、ゲイン交点よりやや低いところでのゲインを表すといってよい。PLL の時間表現による応答波形を使って説明すると、帯域で決まった即応性でとりあえず周波数は追従している(赤の部分)が最終的に定常偏差 = 位相差ゼロ になるまでは、約5秒掛かっている(水色の矢印)。これが「定常偏差になるまでの追従時間」である。

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何でこんな特性を意識するかというと、定常偏差が所定値(この場合は位相差ゼロ)になるまでは動的な入力に対して余裕のある応答が出来ないという風に考えておく必要があるからである。これは「現在の状態を表す信号」や「目標となる状態を表す信号」が完全に直線性のある信号特性なら良いが、PLL もそうだが非線形な領域や特性の折り返しがあったりすると、不安定になったり収束に時間が掛かったりするためである。

次回は光ディスクドライブにおけるサーボの例を挙げて、上述の4つの特性に対する要求事項を設計したか解説してみる。