当時の光ディスクドライブのデータ信号検出は、ピットポジションといってディスク盤面上の穴の空いている部分のタイミングを検出するというもの。(図)

この場合の再生信号を見ると、ピークの部分にタイミングがある。これを正確に検出しなくてはいけない。
そこで従来は図のような方式を T社は使っていた。


一般的には信号を微分してゼロクロスを検出する方法が提案されていたが、それはそれで結構高性能な微分器が必要であるなど大変だったと思う。

そういう意味では T社のアイディアは悪くない。が、振幅マージンがない。つまりダイオードの順方向効果電圧分は必ず振幅として必要で、さらに検出タイミングも本来値から遅れるしその遅れ量も振幅依存性があるので、電源電圧に余裕があり、増幅率も稼げる従来機種ならまだしも小型機種になるとどんどん難しくなる。かといって微分方式も周辺回路が大変(信号の平らな部分でノイズが発生するためマスク回路が必要である)なのでブレークスルーしたかった。さらに当時は記録方式がMOという非常に信号振幅の小さいものを扱いだしたので、振幅マージンをもっと取りたかった。
そこで微分方式をよく考えてみると、微分とは云いながら疑似微分である。Ts/(1+Ts)。これは1-1/(1+Ts)を演算しても得られる。

後ろの項はLPFである。が、演算しないで源信号とLPF通過後信号を直接コンパレータで比較したらどうなるか。よく考えるまでもなく、源信号を疑似微分した信号のゼロクロスを検出したのと同じ結果になる。なんだ、高性能なアナログアンプは必要ないじゃん。が、相変わらずピーク部分以外のところで発生するノイズは取り切れない(グラフ緑色のエッジ)。そこで、LPF信号のところにクリッパを入れる。(図、灰色のダイオード。グラフでは赤点線)


これで入力信号の中の平らな部分での比較ノイズ発生は避けられ、ピーク部分だけが検出されるようになった。
当然のように特許提案~登録。しばらくの間、リーダビリティの確保に活躍した。
残念ながらその後光ディスクの記録方式はより容量が確保できるマーク長方式に変わっていき、使う機会がなくなった。
ちょっとこのアイディアに行き着いた経緯を補足すると、この微分して変化点の検出という処理がデジタルの分野で使われていたことがヒントになっている。今、周期的な矩形波があったとする。それでそのエッジタイミングを検出しようとするときどうするか。直線的に考えると矩形波をCRで微分してエッジのみにして波形整形するという方法が思いつく(図)。

ところがこのやり方だと、CRで微分したときにマイナス側にもパルスが現れてしまい、ロジックICとしては好ましくない。そこでもとの矩形波を遅らせて(CRで良い)反転し、これと元の矩形波とをANDを演算すればエッジタイミングが得られる方法が良いということになる(図)。

実際に我々のドライブ装置では記録パルスを生成するのにこの方法が使われていた。式を書けばごく当然のことだが、前述のタイミング検出はこの処理をアナログ信号に応用したに過ぎない。
小技の応酬のような回路設計ばかりやっていたようだ。
光ディスク以外の用途で、もしピーク検出をしたいという要望があれば使っていただけると嬉しい。

この場合の再生信号を見ると、ピークの部分にタイミングがある。これを正確に検出しなくてはいけない。
そこで従来は図のような方式を T社は使っていた。


一般的には信号を微分してゼロクロスを検出する方法が提案されていたが、それはそれで結構高性能な微分器が必要であるなど大変だったと思う。

そういう意味では T社のアイディアは悪くない。が、振幅マージンがない。つまりダイオードの順方向効果電圧分は必ず振幅として必要で、さらに検出タイミングも本来値から遅れるしその遅れ量も振幅依存性があるので、電源電圧に余裕があり、増幅率も稼げる従来機種ならまだしも小型機種になるとどんどん難しくなる。かといって微分方式も周辺回路が大変(信号の平らな部分でノイズが発生するためマスク回路が必要である)なのでブレークスルーしたかった。さらに当時は記録方式がMOという非常に信号振幅の小さいものを扱いだしたので、振幅マージンをもっと取りたかった。
そこで微分方式をよく考えてみると、微分とは云いながら疑似微分である。Ts/(1+Ts)。これは1-1/(1+Ts)を演算しても得られる。

後ろの項はLPFである。が、演算しないで源信号とLPF通過後信号を直接コンパレータで比較したらどうなるか。よく考えるまでもなく、源信号を疑似微分した信号のゼロクロスを検出したのと同じ結果になる。なんだ、高性能なアナログアンプは必要ないじゃん。が、相変わらずピーク部分以外のところで発生するノイズは取り切れない(グラフ緑色のエッジ)。そこで、LPF信号のところにクリッパを入れる。(図、灰色のダイオード。グラフでは赤点線)


これで入力信号の中の平らな部分での比較ノイズ発生は避けられ、ピーク部分だけが検出されるようになった。
当然のように特許提案~登録。しばらくの間、リーダビリティの確保に活躍した。
残念ながらその後光ディスクの記録方式はより容量が確保できるマーク長方式に変わっていき、使う機会がなくなった。
ちょっとこのアイディアに行き着いた経緯を補足すると、この微分して変化点の検出という処理がデジタルの分野で使われていたことがヒントになっている。今、周期的な矩形波があったとする。それでそのエッジタイミングを検出しようとするときどうするか。直線的に考えると矩形波をCRで微分してエッジのみにして波形整形するという方法が思いつく(図)。

ところがこのやり方だと、CRで微分したときにマイナス側にもパルスが現れてしまい、ロジックICとしては好ましくない。そこでもとの矩形波を遅らせて(CRで良い)反転し、これと元の矩形波とをANDを演算すればエッジタイミングが得られる方法が良いということになる(図)。

実際に我々のドライブ装置では記録パルスを生成するのにこの方法が使われていた。式を書けばごく当然のことだが、前述のタイミング検出はこの処理をアナログ信号に応用したに過ぎない。
小技の応酬のような回路設計ばかりやっていたようだ。
光ディスク以外の用途で、もしピーク検出をしたいという要望があれば使っていただけると嬉しい。