今までは、理想オペアンプを使って回路の動作を考えてきました。基本的に機能を考える場合はこれで十分なのですが、実際の動作を考えながら設計するにはもちろん不十分です。
そこで、今回からは現実のオペアンプと理想オペアンプの違いを考えながら、実際の動作を考えていきます。
といってもすべての項目について行ったら大変ですので、重要そうなところだけです。

まずは比較的理解しやすい電源電圧について考えましょう。
通常アナログ回路の電源電圧は古典的(笑)には±15V でした。最近はどんどん下がってきて、2.0V 程度の単電源で動いたりするようです。
では理想オペアンプの場合とどう違うのでしょうか。
直感的には、電源電圧以上には出力が出ないだろう、と想像できますね。で、その通りです。さらに実際にはそこまでの電圧すらも出ないことがほとんどです。
カタログスペックを見ながらチェックしていきましょう。

次の表を見て下さい。

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新日本無線の NJM072 というオペアンプです。これの特徴は J-FET 入力バイアス電流が比較的小さく、周波数特性も割と良く歪みもノイズも少ないということで中域(~ 100 KHz)ぐらいまでの用途なら、オールマイティに使えそうです。おそらく TI の TL-072 のセカンドソースでしょう。
表の赤線のところを見て下さい。「最大出力電圧振幅」となっていて、最小 24 Vp-p、標準 27 Vp-p となっています。条件は緑色の線のところで、V+ / V- = ±15 V となっていますから、電源電圧としては ±15 V = 30 Vp-p です。従って電源電圧に対して 3 V ~ 6 V 振幅が下がると云うことです。
ということでアンプを設計した際、これ以上の振幅が出るような設計をすると期待した性能が出なくなるので注意が必要です。
さらにこの振幅は負荷が変わったり、扱う周波数の影響も受けます。是非スペックシートを慎重に見てみて下さい。

そんなに出力電圧が制限されるのは面白くない、低電圧のものはどうなっているんだ、という方のために、ちゃんと出力振幅が電源電圧ぎりぎりまで確保されているものもあります。
次の表を見て下さい。

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同じく新日本無線の NJU7067 というオペアンプです。CMOS タイプでカタログには「出力フルスイング(Rail to Rail)」と書いてあります。電源電圧が低い回路で出来るだけ出力振幅を取りたい、という用途にはこう書いてある IC から探してみましょう。
緑色の線は与えた電源電圧を表していて、0 - 5V を供給した、と書いてあります。それに対して赤の四角で囲った中には「最大出力電圧1,2,3」ということでいくつかの条件で出力電圧が書いてありますが、ほど 0 - 5 V の出力電圧が出るというのが期待できます。
もちろんあちらを立てればこちらが立たずで、こちらの IC は周波数特性としては数十KHz 止まりでしょう。
他にもちょっと古いタイプでは、マイナス側は電源電圧まで出力できるが、プラス側はフルにはいかない、というのもあります。

まず最初に電源電圧と出力振幅の関係をスペックシートを確認するのがいいと思います。