実際に使われなかったアイディアを披露。

時は流れて、信号処理はデジタル化の方向へ。まずはサーボ系からか、と少しだけ検討していた。が、決定的に知識が不足しておりたいしたことは考えていない。その中で、サーボ信号の正規化をどうするかということに頭が少しだけ行っていた。正規化は前述のように割り算を行うことで得られる。で、その割り算をどうやってやるかが問題だと考えていた。アナログでやるなら従来通りだが、(A-B)/(A+B)の演算をするために結構なアナログ回路が必要になるので面白くない。デジタルでやるにはというと、乗算器という大規模な回路が必要で、かつ割り算をするためには内部演算処理として結構なビット数が必要になりそうである。筋悪である。
そこで目をつけたのが、ADコンバータでのデータの取り込み方法である。ADコンバータは参照電圧の範囲のどこに入力電圧があるというのをデジタルデータとして取り込むデバイスである。だから同じ入力電圧でも参照電圧を変えれば、違うデジタル値が得られる。ここまで書けばおわかりであろう。入力電圧に差信号(A-B)を与え、参照電圧として(A+B)を与えれば、得られるデジタル値は自動的に(A-B)/(A+B)になる。参照電圧として±電圧が必要であるが。(図)

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実際に使おうとすると、参照電圧を入力の種類に従って切り替えるとかが必要になるが、それでも大規模な乗算器や不安定なアナログ割り算器を使わないメリットは当時としては大きかったと思う。
今はハード規模を多少増やしても大丈夫なので(乗算器も時分割で使うなど方法がある)こんなことを考える必要もないだろう。
が、念のために特許提案。特に光ディスク用ではなく半導体光位置センサへの用途があるのでは、と考えていた。
ところがところがである。先んずること数ヶ月、三菱電機から同様の特許が提案されていてアメリカへも登録申請が出ていた。さらにところがその三菱電機の特許申請に不備があり、それが無効、こちらが有効になる可能性があるという情報が入った。
こちらが俄然頑張る、三菱も当然抵抗する、結局インターファレンスという手続きで争うことになった。
が、ここで我が特許担当は撤退を提案。理由はインターファレンスという手続きは弁護士にお金が非常にかかり、アメリカではインターファレンスを担当すると、弁護士がお祝いパーティを開くといった案配らしい。そこまでやる必要はないでしょう、とのこと。
特許登録は夢と消えたが、結構面白い体験が出来た。
小規模なディスクリート部品で構成する機器などで使ってくれると嬉しいのだが。(特許期限は切れているので安心を)
アナログからデジタルへ変換するときにちょっとした細工をすると、予想外の効果をもたらす可能性があるというのが経験になった。