「やさしく考えるアナログ回路」でトランジスタの動作がスイッチング動作(=デジタル回路)なのかリニア動作(=アナログ回路)なのかをエミッタに抵抗があるかないかでおおよそ見分けられる、と書きました。

グラフで各線が表す抵抗値を書き込みました。

そこで、こちらでは LTspice を使ってエミッタの抵抗の値によって動作がどのようになるかをシミュレーションしてみます。
まずエミッタに抵抗があると、ベース電圧に対してエミッタ電圧が追従するためベース電流が抑制されて、コレクタ電流も抑制されるというカラクリ(電圧フィードバック)でリニア動作が可能になる、ということですが、では抵抗値はなんでもいいのかというとそんなことはなくて、求める電圧利得などによっても変わってきます。
とりあえず今回はコレクタ電圧、電流を見てみましょう。

簡単な一石トランジスタ回路を図に示します。
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入力電圧を 10KΩの抵抗を通じてトランジスタのベース電圧として与え、それがベース電流となってトランジスタの電流増幅率によりコレクタ電流が決まって、それがコレクタ抵抗を流れることによりコレクタ電圧が決まるというものです。
エミッタ抵抗としては、0.1Ω(ゼロが設定できないので)、10/100/300/1000 としてみました。

シミュレーション結果は以下のようになりました。

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エミッタ抵抗が大きくなると、入力電圧に対する出力電圧の変化幅が小さくなります。つまり電圧ゲインが下がると云うことです。
エミッタ抵抗がゼロになると(0.1Ωです)、電圧ゲインが非常に高くなり、出力電圧の振り幅に対してわずかな量(0.25V)の間でしか、リニアな領域はありません。つまり出力電圧はほとんどゼロまたは最大値になると云うことです。ですのでこの性質を利用して、入力電圧が 0.5V 以下なら Low level を認識して 5V = High level と出力し、0.75V 以上なら High level と認識して 0V = Low level を出力するわけです。入力電圧が 0.5 ~ 0.75V の間はリニア動作でありますが、範囲が狭くかつ電圧ゲインが高すぎ(というよりばらつきが多い)ので、リニアアンプとしては不適切、ということになります。

補足すると、リニア動作としての動作点を変えたい、とかスイッチング動作としてのスレッショルドを変えたい、とかいう場合はベースとグランドの間に抵抗(この場合だと、2Kから10Kぐらい)をいれます。
入れることで、トランジスタのばらつきに多少強くなると思います。