TPP を今度の衆議院選挙の争点にしようという動きがある。
正直、こういう個別問題、しかも国家の行く末を左右する判断を国民に求める云うのはいかがなものか。
もちろん国民主権であるから大事な問題は国民の声を聞く、というのは大事だが、決めるのはあくまでも政治家、専門家でないと困る。しかも将来にわたって責任を持った判断でないといけない。私に意見を求められてもとりあえずの考えは言えるけど、責任ある判断は怖くて出来ない。
前回も書いたように信頼できる人に「判断してくれ」である。
とはいっても今はネット情報が溢れているので、政治、経済、軍事、宗教、技術などその気になれば勉強できる方法はある。もちろん専門家の書籍もある。
ということで今回はちょっと本を読んだ結果の知ったかぶりをしてみたい。
元ネタはこれ。
この世で一番おもしろいミクロ経済学
http://www.diamond.co.jp/book/9784478013243.html
この中で、人はなぜ「取引=貿易」を行うのか、について面白い解説をしている。知っている人から見れば当たり前なのかも知れないが、簡単な数値で説明されると結構目から鱗、ガッテンである。
以下、ちょっとパクってアレンジして紹介する。
貿易をどんな良いことがあるか、というのを初歩的に説明すると、お互いの国にないものを補完しあえるということだと思う。これはだれでも分かる。では次の例はどうだろう。エンジニアの例を考えてみた。
A 氏:駆け出しのエンジニア。ある製品を作るための作業として1時間当たり、半田付けなら 2 台、組み立てなら 1 台出来る能力を持つ。
B 氏:ベテランエンジニア。同様に1時間当たり、半田付けなら 3 台、組み立てなら 6 台出来る能力を持つ。
半田付けと組み立てのセットで 1 台の製品が完成するとすると、二人はそれぞれ 3 時間の持ち時間を次のように使う。
A :半田付けを 1 時間やって 2 台。残りの 2 時間で組み立てを 2 台行って、2 台の製品を完成させる。
B :半田付けを 2 時間やって 6 台。残りの 1 時間で組み立てて、6 台の製品を完成させる。
二人で合計 8 台の製品を完成させられました。
結構な能力差ですよね。しかもどちらの項目も B 氏に優位がある。当然、給料は B 氏が A の 3 倍。
A 氏は、奥さんとの二人家族。子どもを作る余裕がない。B 氏は奥さんと子ども二人に加えて両親を養う 6 人家族。
国で云えば、新興国と先進国ぐらいの差がありそうな内容です。(どことはあえて云いません...)
さて、この二人が相談して取引をする価値があるか。一見なさそうに見えます。だってどちらの作業も B 氏が優位だから、A 氏に作業を分割しても効率が落ちるだけでしょう。
そこで次のように作業分担をするよう提案してみました。
A :3 時間の間、半田付けを 6 台行う。
B :1 時間 20 分の間、半田付けを 4 台行う。その後 1 時間 40 分 10 台組み立てを行う。
で、同じ 3 時間の間に完成した製品の数はというと 10 台です。2 台増えました!
(A 氏が半田付けを終わる前に B 氏が組み立てはできないだろう!というツッコミは無視します)
当然、二人の給料はアップします。増えた分はそれぞれに均等(実際はそうはいきませんが)に分けると、A 氏は子どもを作ろうか、という気になりますし、B 氏は家の改築を考えるかも知れません。
え~、だますなよ、と思う方は計算してみて下さい。
ということで「取引」=「貿易」はかなりな利益を生むというのが、おぼろげながら理解していただけただろうか。
まあ実際はそんな単純ではないのだが、もし日本が B 氏のような立場であっても、A 氏のような新興国と上手につきあえば、Win-Win の関係が築けると云うことである。昔は後進国に対する搾取という云い方もされたようだが、よく考えれば双方にメリットがあるということだ。
昔、日本の為政者たち、平清盛、足利義満、豊臣秀吉などが中国との貿易で莫大な利益を得て国も富ました、と云わるが、どう考えたって当時だったら日本より中国の方が進んでいただろう。にもかかわらず貿易が成功していたのだから、やっぱり貿易はすごいのだと云うことになるのだろう。
一つ弊害をいうと、A 氏相当の国にとって B 氏相当の国と貿易をすることで、組み立て作業者は失業する。これが経済用語(?)でいうと貿易は短期的に失業者を作る、ということである。前に紹介したマクロ経済学では技術革新は短期的に失業者を作る、と同列に扱っている。
が、マクロ経済学的にはこれは問題ない、と考えている。(当事者はイヤでしょうけど)
何で衆議院選挙の話題から貿易の話が出たかというと、TPP が気になるからである。もちろん単純な利益だけで貿易を考えることが出来ないのが現在の難しさ(TPP はさらに他の問題を含んでいる)だが、そのメリットを正しく伝え、付帯的に現れるやっかいな問題も正しく理解と説明が必要だと思う。単に「自由化=国内産業の崩壊」、「保護主義=輸出の縮小」だけで考えてはいけない。
実際、「国内産業の崩壊」を気にする人は今どのくらいの関税が輸入製品に掛かっているのか知っているのだろうか。逆に「輸出の縮小」を気にする人は、相手国でどのくらいの関税を掛けられて競争に不利になっているのか知っているのだろうか。
少なくとも争点にするのであれば、このくらいの数字は挙げて「これがこうなると予想される」ぐらいは云って欲しい。
とりあえず輸入に関しては、これ、
財務省貿易統計
http://www.customs.go.jp/tariff/2012_4/index.htm
ちょっと見、すごい数字も入っているが、数パーセントのものが多そうだ。だいたい、食料品を海外から持って来るったって、輸送費は掛かる保存費は掛かることを考えると、いくら大規模農場で作ったといっても輸入品の方が圧倒的に安いとは考えづらい。
とはいえ、すぐに効率よい食料生産しなさいといっても無理だろうから、為替がいくらなら自由化しても良いか、という問いかけをしたらどうなるか興味がある。
逆に輸出製品、部材の輸出企業に為替をいくらにすれば今のままでよいか、と問いかけをしたらどうなるか。1 ドル= 100円にしたら自動的に現地での 25% 販売価格が安くなる。
おそらく双方の中間に為替の落としどころ=日本の立つ位置があるように思える、という素人の妄想である。
正直、こういう個別問題、しかも国家の行く末を左右する判断を国民に求める云うのはいかがなものか。
もちろん国民主権であるから大事な問題は国民の声を聞く、というのは大事だが、決めるのはあくまでも政治家、専門家でないと困る。しかも将来にわたって責任を持った判断でないといけない。私に意見を求められてもとりあえずの考えは言えるけど、責任ある判断は怖くて出来ない。
前回も書いたように信頼できる人に「判断してくれ」である。
とはいっても今はネット情報が溢れているので、政治、経済、軍事、宗教、技術などその気になれば勉強できる方法はある。もちろん専門家の書籍もある。
ということで今回はちょっと本を読んだ結果の知ったかぶりをしてみたい。
元ネタはこれ。
この世で一番おもしろいミクロ経済学
http://www.diamond.co.jp/book/9784478013243.html
この中で、人はなぜ「取引=貿易」を行うのか、について面白い解説をしている。知っている人から見れば当たり前なのかも知れないが、簡単な数値で説明されると結構目から鱗、ガッテンである。
以下、ちょっとパクってアレンジして紹介する。
貿易をどんな良いことがあるか、というのを初歩的に説明すると、お互いの国にないものを補完しあえるということだと思う。これはだれでも分かる。では次の例はどうだろう。エンジニアの例を考えてみた。
A 氏:駆け出しのエンジニア。ある製品を作るための作業として1時間当たり、半田付けなら 2 台、組み立てなら 1 台出来る能力を持つ。
B 氏:ベテランエンジニア。同様に1時間当たり、半田付けなら 3 台、組み立てなら 6 台出来る能力を持つ。
半田付けと組み立てのセットで 1 台の製品が完成するとすると、二人はそれぞれ 3 時間の持ち時間を次のように使う。
A :半田付けを 1 時間やって 2 台。残りの 2 時間で組み立てを 2 台行って、2 台の製品を完成させる。
B :半田付けを 2 時間やって 6 台。残りの 1 時間で組み立てて、6 台の製品を完成させる。
二人で合計 8 台の製品を完成させられました。
結構な能力差ですよね。しかもどちらの項目も B 氏に優位がある。当然、給料は B 氏が A の 3 倍。
A 氏は、奥さんとの二人家族。子どもを作る余裕がない。B 氏は奥さんと子ども二人に加えて両親を養う 6 人家族。
国で云えば、新興国と先進国ぐらいの差がありそうな内容です。(どことはあえて云いません...)
さて、この二人が相談して取引をする価値があるか。一見なさそうに見えます。だってどちらの作業も B 氏が優位だから、A 氏に作業を分割しても効率が落ちるだけでしょう。
そこで次のように作業分担をするよう提案してみました。
A :3 時間の間、半田付けを 6 台行う。
B :1 時間 20 分の間、半田付けを 4 台行う。その後 1 時間 40 分 10 台組み立てを行う。
で、同じ 3 時間の間に完成した製品の数はというと 10 台です。2 台増えました!
(A 氏が半田付けを終わる前に B 氏が組み立てはできないだろう!というツッコミは無視します)
当然、二人の給料はアップします。増えた分はそれぞれに均等(実際はそうはいきませんが)に分けると、A 氏は子どもを作ろうか、という気になりますし、B 氏は家の改築を考えるかも知れません。
え~、だますなよ、と思う方は計算してみて下さい。
ということで「取引」=「貿易」はかなりな利益を生むというのが、おぼろげながら理解していただけただろうか。
まあ実際はそんな単純ではないのだが、もし日本が B 氏のような立場であっても、A 氏のような新興国と上手につきあえば、Win-Win の関係が築けると云うことである。昔は後進国に対する搾取という云い方もされたようだが、よく考えれば双方にメリットがあるということだ。
昔、日本の為政者たち、平清盛、足利義満、豊臣秀吉などが中国との貿易で莫大な利益を得て国も富ました、と云わるが、どう考えたって当時だったら日本より中国の方が進んでいただろう。にもかかわらず貿易が成功していたのだから、やっぱり貿易はすごいのだと云うことになるのだろう。
一つ弊害をいうと、A 氏相当の国にとって B 氏相当の国と貿易をすることで、組み立て作業者は失業する。これが経済用語(?)でいうと貿易は短期的に失業者を作る、ということである。前に紹介したマクロ経済学では技術革新は短期的に失業者を作る、と同列に扱っている。
が、マクロ経済学的にはこれは問題ない、と考えている。(当事者はイヤでしょうけど)
何で衆議院選挙の話題から貿易の話が出たかというと、TPP が気になるからである。もちろん単純な利益だけで貿易を考えることが出来ないのが現在の難しさ(TPP はさらに他の問題を含んでいる)だが、そのメリットを正しく伝え、付帯的に現れるやっかいな問題も正しく理解と説明が必要だと思う。単に「自由化=国内産業の崩壊」、「保護主義=輸出の縮小」だけで考えてはいけない。
実際、「国内産業の崩壊」を気にする人は今どのくらいの関税が輸入製品に掛かっているのか知っているのだろうか。逆に「輸出の縮小」を気にする人は、相手国でどのくらいの関税を掛けられて競争に不利になっているのか知っているのだろうか。
少なくとも争点にするのであれば、このくらいの数字は挙げて「これがこうなると予想される」ぐらいは云って欲しい。
とりあえず輸入に関しては、これ、
財務省貿易統計
http://www.customs.go.jp/tariff/2012_4/index.htm
ちょっと見、すごい数字も入っているが、数パーセントのものが多そうだ。だいたい、食料品を海外から持って来るったって、輸送費は掛かる保存費は掛かることを考えると、いくら大規模農場で作ったといっても輸入品の方が圧倒的に安いとは考えづらい。
とはいえ、すぐに効率よい食料生産しなさいといっても無理だろうから、為替がいくらなら自由化しても良いか、という問いかけをしたらどうなるか興味がある。
逆に輸出製品、部材の輸出企業に為替をいくらにすれば今のままでよいか、と問いかけをしたらどうなるか。1 ドル= 100円にしたら自動的に現地での 25% 販売価格が安くなる。
おそらく双方の中間に為替の落としどころ=日本の立つ位置があるように思える、という素人の妄想である。