衆議院が明日解散することになった。

「近いうちに」が流行語大賞になりそうな雰囲気と「うそつき」と同義語になりかねない状況だったが、なんとか後者は避けられそうである。

ここは技術ブログなので政治の話題はちょっとどうかと思いつつ(経済は技術と関係があったりするので時々扱いたい)、大きな流れなので一言書いてみる。

3年あまりに渡る政権交代という壮大な社会実験はどうだったといえるのだろうか。
私自身の個人的信条で云いたいことはたくさんあるが、変にあおり意見になってもいけないので無難なところにとどめておいて一言いってみる。。

まあ、とにかく内外的に色々なことがあった3年あまりであった。多すぎて国難ともいえる状況だったかもしれない。正直、良く持ちこたえたと思う。
きちっと民主党も含めて政界の人たちはレビューした方がいい。当事者の目の前で「いやあれはまずかった」とか「もっとやりようがあった」とか言いづらいかも知れないが、後への大事な経験である。
こうやって考えると、過去からの色々な政策のレビューってあまり聞いたことがない。責任問題を恐れているのかも知れないが、それでは一向に政治のレベルが上がらないだろうし、そもそも政治というのは責任が重いものだと思う。失政すれば責任を取らされて当然だろう。政治家はそういう覚悟が本当にあるのだろうか。江戸時代なら腹を切らされたが、今は命まで取られるわけじゃなし。

記憶に新しいところで、小泉内閣の郵政改革がある。これは結局どういう結論になったのか。業務を効率化して民間に移し公務員を減らし、経費を削減するといっていたと思ったが、数値的にどうだったのか。また地方で郵便局が無くなる、という懸念があったが実際に困っている人がどのくらいいるのか、などなど有権者としては知りたいことがある。ネット情報では部分的に色々な見解が飛び交っているが、きちっとまとめて国としての結論を出すべきだと思う。それなしで4月になにやら改正されたと思うのが、そんなことでいいのだろうか。

つまるところ、政治家と国民の関係は信頼関係抜きには語れないだろう、としみじみ思う。
国防問題、沖縄の基地問題、消費税増税と経済問題、原発問題などなど、難しい問題は山ほどある。で、これを国民の総意に従って進めていく、と民主主義ではいうが、実際問題それらの問題について国民がどれだけ将来も鑑みて責任ある判断が出来るか、というと少なくとも私は無理だ。大半の人も同じではないかと思うのだが言い過ぎかな。

結局、国を引っ張る人の判断に任せるしかないのが本当のところだろう。では誰に任せるかというと、これは国民と信頼関係を持てる人、ということではないかと思う。「この人ならついて行ける」とか「この人なら任せられる」という信頼感が無ければ、その政治家の判断、行動に対してどうしても疑念を持ってしまい、「実は~」などという裏話が飛び交い(今はネット社会だから余計)混乱を引き起こしてしまうだろう。
消費税増税も長い目で見て正しいことかも知れないが、野田総理は国民との信頼関係が築き上げる前での「決める政治」なので、多くの人は納得していないのではないか。だから一部の経済評論家に「あれは財務省の言いなりである」と云われて疑念を持たれてしまっているような気がする。

信頼関係と情報公開というのは、重要な関係ではないかと思う。

昔なら政治家も「泥にまみれてでも正しいことをやりきる」と自分の責任で国民に情報をすべて公開せず、墓まで持って行くつもりで事に当たることも出来たかも知れない。しかし今は情報伝達のスピードが違う。情報非公開は疑念と混乱を生むだけになっているといえそうだ。

典型的な例が尖閣諸島での衝突事件、東日本大震災の対応と北朝鮮のロケット発射である。(民主党は運が悪いともいえる)
いずれも混乱を避けるために情報をすべて公開しなかったため、結局無用の混乱と政治不信を招いた、と云っても反対の人はそういないだろう。
NHK の番組で視聴者代表や地方自治体関係者が出演していて、災害の際の情報伝達についての議論する、というのを大分昔に見た。
その中で、自治体にとって問題になりそうな情報が出たら(内容を覚えていない)どうするか、という問いかけに対して、自治体関係者はほとんどが住民にはすべて伝えない、という見解だった。それに対して、視聴者からは「住民をバカにしているのか」というリアクションがあった。この辺りの意思疎通に齟齬がありそうだ。自治体関係者の言い分を想像すると、「よく分からない状況で情報を公開すると住民がバラバラな行動を取って混乱する」ということだと思うが、昔ならともかく今はその考え方は無理がある。というのは災害発生時には愉快犯や煽りが必ず登場し、嘘の情報を流したりするもんである。携帯電話などを使えば簡単にできる。だから普段から自治体が情報を隠す、ということが分かっているとそちらの怪しげな情報に釣られて却って混乱を引き起こす。この方がよっぽど問題であろう。
だから常に政府、自治体がすべて情報を出して、その上で必要な行動の指示を出している、というのを大前提にしておかないと、風説に引っかき回されるのがオチである。

要は政治家と国民の間に信頼関係である。
普段からすべての情報が公開されていて、その上で指示通り動くという習慣をつけて訓練をしておけば風評、虚言に対する耐性もついて有事に強い社会構造が出来るのではないか、と真剣に思う。

別に自民党の支持者ではないが、昨日(14日)のテレビで石破幹事長が、「我々も国民を信じます」と云っていたのがちょっと印象に残る。つまり国民に情報をすべて出して国民に判断を仰ぎたい、その上で政治を行いたい、という風に理解したがどうだろうか。期待できそうだろうか。

また党首討論で野田総理が「覚悟のない党には政権を渡さない」とタンカを切ったのもなかなか面白かった。
野田総理はもう少し実績を作って、周囲のブレインが優秀だったら腹を決めて頑張るという姿勢がもっと伝わったかも知れない。
今は破れかぶれにしか見えないところがちょっと気の毒である。