前回は見つめ合った双子のトランジスタのお話でしたが、今回はその双子がけんかして(?)あっちむいてホイ状態です。

図は差動ペアです。

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これはエミッタに抵抗かもしくはそれに準ずる素子が必要です。で、もちろんリニア動作です。
古いトランジスタの教科書などには、似たような回路で ECL(エミッタカップルドロジック)というのが紹介されています。こちらはスイッチング動作なのですが、動きとしてはリニアっぽいです。今は,,,あるのでしょうか。昔は超高速のコンピュータに使われていたと聞きましたけど。

この動作の説明はちと面倒なのですが、できるだけやさしくということで頑張ってみます。
Q1 と Q2 のエミッタは共通になっていて、抵抗みたいなものにつながっています(IC 内では定電流源がほとんど)。
まず Q1 のベースに電圧 V1 が掛かると Q1 は活性状態になって、エミッタ電圧はそれにともなって上昇し、ベース電位より約 0.7V 低い電位になり、コレクタ電流 I1 が流れます。この状態で Q2 のベースに電圧を与えます。そうすると Q1 のベース電位より低いうちは何事もおきませんが、同じぐらい、あるいはちょっと低いぐらいのところに来ると、Q2 も活性状態になります。そうすると I2 も徐々に増え始めて、V1 と V2 が同じ場合は、I1 = I2 になります。さらに V2 が上昇すると、I1 は下降 I2 はさらに上昇して今度は I1 < I2 になります。さらに上がると Q1 が不活性状態になって I1 = 0 になります。
要は、二つのトランジスタのベース電位の差によってそれぞれのトランジスタのコレクタ電流の差が制御できるというわけです。
エミッタにつながっているのが定電流回路の場合は、二つのコレクタ電流の和は一定ですからより差分を正しく出力できるわけです。
これは何に使うかというと、オペアンプの入力回路に使われます。入力端子の差分に相当する電流を IC 内で生成して増幅して電圧に変換しているのがオペアンプです。ですので、差動電位差に対する利得はかなり高くなります。そしてオペアンプは通常フィードバックを掛けて使うので、今まで解説したように (+)端子と (-)端子の差はほとんどゼロで使用しています。

この場合もトランジスタの特性はよく揃っていなくてはいけません
ディスクリートで作るのは難しいでしょう。トランジスタの選別が必要だと思います。高級オーディオアンプではそうやっていると思います。

このように背中合わせのトランジスタで、エミッタがグランドや電源に直接接続していない場合は、差動ペアと思えばよいと思います。

概念的にはこんな感じです。二つのベースの電位差で何かやっているんだな、と思っている程度でいいと思います。詳しい専門書はたくさんあるので、興味ある方はそちらを見て下さい。