電源電圧の問題は他の回路でも顕在化していた。データ再生用のPLLの位相差積分回路(チャージポンプ)は前の機種では高速のオペアンプを使っていた。それは位相差信号は非常に細く、高域成分を含んでいてかつDC特性が良くなくてはいけないので、これまたバーブラウン製の高速オペアンプ3551という数千円するものを使っていた。(図)

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しかし、今回は電源電圧が下がっていて、かつ、仮に6V±6Vで動作させたとしても、出力が6V中心の制御信号が出るためこれをTTLのVCO(型番覚えていない)に接続するにはレベルシフト回路がいるなど煩雑になりそうだった。
そこで私が提案したのが、U04というシングルCMOSインバータをオペアンプ代わりに使おうというものだった。CMOSインバータをオペアンプに使うアイディアはもともとあったし、PLLのチャージポンプに使うというのもTC5081というICがそうなっていたので、特に目新しいものではない。が、提案は斬新なものととらえられ(いや恥ずかしい)、結果は大成功、数千円越えのコストダウンに成功して、これはほめられた。(いや、単に引っ張ってきただけで...)(図)

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ただ、一つ問題があった。このときの5.25インチ光ディスクドライブは線密度一定のフォーマットを継承していたが、回転数は固定で、すなわち後のMCAV転じてZCAV動作になっていた。そのため外周に向かってデータ周波数が上昇するため、VCOの制御電圧が半径位置に従って変わっていく。制御電圧自体はほぼDCなのであまり問題はないが、チャージポンプICの出力は、制御レベルに位相差パルスが加算された信号になっているため、その位相差パルスが電源電圧(この場合は5V)ぎりぎりのところで歪みだし、正確な位相差信号が得られなくなってデータの読み率が悪くなるという問題があった。
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幸い、当該VCOはもう一つのレンジ端子というのがあって、こちらに印加する電圧によってコントロール端子電圧に対する発振周波数を変えることができた。そこで、レンジ端子電圧を半径位置に従ってファームウェアで変化させて適正な動作点に設定していた。これは私のアイディアではない。次の機種で私は別のアイディアを出して、もっとよい解決策を提案することになる。(済みません、自慢です。詳しくは後述)