前回は素子に流す電流を指定できる回路について考えてみました。

では、次の回路はどうですか。あああ、逃げ出さないで下さい~。
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こちらも前回と同じ要領で理解できます。
(+)端子に印加された V1 は、(-)に現れます。そこには抵抗 R がつながっていますので、R には V1 / R の電流が流れます。流れた電流はすべてモータ(M というやつです)に流れます。モータは巻線に流れた電流に比例したトルクを出しますので、そのまま角加速度に変わるというわけです(実際にはもう少し複雑)。すなわち、入力電圧で角加速度を制御しているということになります。

単に電圧でモータをコントロールするのとどこが違うのでしょうか。
モータに電圧を印加するとモータに電流が流れます。ところがモータはたくさんの巻線が巻いてあるため、インダクタンス成分が多く、電流の流れの変化、それも早い変化を妨げようとします。すなわち電圧を印加した直後はゆっくり電流が立ち上がります。
さらに電圧を印加し続けると電流の上昇は止りますが、回転数は上昇し続けます。ところがある程度回転数が上がると今度は巻線による逆起電圧が生じて、印加した電圧と逆起電圧の差分に相当する電圧が印加されているのと同じことになります。従って電流は制限されて、角加速度が制限されるので回転数は適当なところに落ち着きます。
詳細はモータの解説を参考にして欲しいのですが、概要はこんなところです。

では上述の回路だとどうなるか。
オペアンプが理想的なものだとすると、立ち上がり時には何が何でも指定された電流を流すべく、大きな電圧を発生させます。コイルが如何に電流の変化を妨げようとしても委細構わず、電圧を上昇させて流しきろうとします。すなわちコイルの周波数特性を無視して電流を流すことになるので、入力電圧対角加速度の関係において周波数特性は考える必要がなくなり、単なる固定係数と見なすことができます。
また、逆起電圧で電流を制限しようとすると、オペアンプはその逆起電圧を打ち消すように出力電圧を上昇させます。従って電流は指定された値を流し続けます。
こういうことをするメリットは制御系を組む場合に、考えやすいということです。
制御電圧と角加速度の関係がフラットな特性に見えるからです。(実際はそんな単純ではないのですがあくまでも概念です)

たとえば回転検出器の伝達関数はS(s)、フィルタはF(s)、増幅器はA(s)などとした場合、それをモータ制御回路DとモータMを含めて一巡の伝達関数G(s)を考えた場合、
G(s)=S(s) x F(s) x A(s) x D x M
となりますが、電圧でモータを制御しようとすると、Mが非常に複雑になります。
今回の回路を応用してモータ駆動回路を構成した場合は、A(s) の後ろがひとくくりで、D(s)=D/s^2 などと表すことが出来るので、伝達関数の計算がやさしくなります。
もちろん、やさしく考える範囲は限定されますが、リニア動作(電源電圧でクリップしたり、モータが摩擦で速度制限されていない)の範囲ではおおよそ成立しているといっても良いと思います。

あくまでも初期検討の参考ですが、考えやすさという意味では良いのではないかと思います。