イングランドプレミアリーグ第30節。注目の判定・注目の試合をピックアップし、簡単に講評する。

 

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Referee topics

 

足を「踏んだ」と足が「絡んだ」
は似て非なる。大きな違いが。

 

 トッテナムvsブライトン
(Referee: スチュアート・アットウェル Assistant: ダレン・カン VAR: マイケル・サリスバリー)

 

17分、斜めに走りこんだ三笘のシュートがネットを揺らすも、三笘のボールコントロールがハンドと判定されゴールは認められず。アットウェル主審の角度からは接触部位を正確に見極めることは難しいので、おそらくA1のカン副審からの進言があったと考えられる。

 

リプレイ映像で見ると、非常に微妙だが広げた右腕の上腕部あたりにはボールが触れているように見えるので、ハンドを採られてもやむを得ない場面だろう。VARとしては「ボールは肩のみに触れている」という映像証拠を見つけるのは非常に困難で、当初判定をフォローすることになったのは必然だろう。日本人ファンとしては残念だったが、カン副審の判定は十分にサポートできるし、角度に恵まれていたとはいえ正確に見極めたカン副審の慧眼には恐れ入った。

 

また、55分のブライトンのゴール取り消しもハンドによるもの。マクアリスターには腕でボールを扱おうという意図はないし不自然な位置でもなかったが、マクアリスターの腕に当たってゴールに吸い込まれた以上、無条件でハンドでゴール取り消しとなるシーンだ。VARのOR(オンリー・レビュー)による判定変更で問題ない。

 

論争を呼んでいるのは71分。エリア内でホイビュアに三笘が倒されたがノーファウル。リプレイ映像で見ると、ホイビュアの左足が三笘の左足を踏む形になっており、個人的にはファウルを採るべきだと思う。

 

接触自体を見逃していればOFR(オン・フィールド・レビュー)になるはずなので、おそらく「接触はあったが倒れるほどではない」もしくは「接触はあったが三笘側が足を残してイニシエートした」というのがアットウェル主審の判断だったと思われる。こうなると主観の問題なのでVARとしては介入しづらくなるが、「足を踏みつけた」と「足が絡んだ」は大きく異なるので、そこの面で主審と映像で不一致があったならば、OFRをレコメンドすべきだったのではないか。(アットウェル主審としても足を踏んだことを確認していればPKにしたはず)

 

追記:三笘が倒された71分のシーンについては、PGMOLが誤審を認めてブライトンに謝罪したとのこと。

 

 

 ブレントフォード vs ニューカッスル
(Referee: クリス・カヴァナー VAR: ダレン・イングランド)

 

27分、ボトマンをかわしたエリア内に侵入したシャーデにシェアが「衝突」してPK。シャーデのボールタッチがやや大きくなったところでハードタックルを試みたシェアだったが、タックルの寸前でシャーデがボールを離しており、シャーデのみを刈り取る結果となった。ファウルであることは火を見るよりも明らかだ。

 

そのPKはトニーが失敗したが、44分にもブレントフォードが再びPKを獲得。コーナーキックに飛び込んだヘンリーに対してイサクの伸ばした足がヒット。こちらもボールにはまったく触れておらず、ファウルであることは明白だ。

 

1つ目は自力で正解に辿り着いたカヴァナー主審だったが、2つ目はVARレコメンドによるOFRの末のジャッジとなった。コーナーキックの際には比較的見やすい角度・距離に立っていたようには見えるが、ヘンリーの体で接触箇所が重なってしまったのだろうか。見極め難度としてはそこまで高くないので、VARなしでPKジャッジを下したかったところだ。

 

65分のハンドによるゴール取り消しについては選手が入り乱れていたこともあり肉眼でのジャッジはやや難しいかもしれない。映像を見る限りはシュートを決めたウィルソンの腕に当たっているのは間違いないので、VARのOR(オンリー・レビュー)でのゴール取り消しとなった。

 

 リヴァプール vs アーセナル
(Referee: ポール・ティアニー Assistant referees: コンスタンチン・ハツィダキス、スコット・レジャー VAR: クリス・カヴァナー)

 

 

 TODAY'S
 
各試合の講評

 

守備崩壊のレスターは
スミス招聘が「当たり」に思える。

 

 ウルブスvsチェルシー

 
ランパード初陣となったチェルシー。システムは4バックを採用し、攻守にバランスがとれた人材を選択。右に攻撃的なジェームズを配置した一方で、左は攻撃に特長があるチルウェルではなく守備も手堅いククレジャを選ぶなど、無難だが妥当性のある人選となり、いかにもランパードらしいスタメンとなった。
 
60分に交代カードを切るなど交代策も非常に積極的で妥当性があったが、マテウス・ヌニェスのスーペルゴラッソに沈み敗戦。チャンスはそれなりに作ったものの最終局面でのフィニッシュの精度を欠く…というのはトゥヘル・ポッター監督時代と変わらない光景だ。
 
選手の特性を考えると1トップよりも2トップのほうがハマりそうなメンツが揃っているだけに、例えば3-5-2などの採用は一考に値するのではないか。中盤はトップ下タイプとボランチタイプがそれぞれ豊富に抱えているので、3枚の選択には困らないはずだ。
 
欧州カップ出場権獲得は絶望的で、かといって降格がチラつくわけでもない状況ではあるが、来季からの立て直しに向けてチームとしての軸を見せたい終盤戦となる。また、エヴァートンでは内容も結果も出なかったランパードとしても監督としての価値を見せる正念場だ。

 

 マンチェスター・Uvsエヴァートン

 
ユナイテッドはカゼミーロの出場停止もあってブルーノ・フェルナンデスを一列下げて起用しているが、これが当たりで攻撃面での+αをもたらしている。フィニッシュに直接関与する場面はそこまで多くないが、長短の正確なパスを出し分けてチャンスを演出。守備面でも豊富な運動量を活かして幅広いエリアをカバーしている。
 
トップ下起用のザビツァーもギャップでボールを引き出す特長を発揮しており、出番増とともにコンディションも上昇中。次節にはカゼミーロが出場停止から復帰するが、攻撃的に振る舞いたい場面では今節の起用を継続する選択肢もありそうだ。
 

 レスター vs AFCボーンマス

 
降格圏に沈むレスターはロジャース監督を解任してアドラー暫定監督が率いるも勝ち星を掴めず。マディソンが自陣で痛恨のパスミスを犯して先制点を献上すると、3バックはラインが一向に揃わず、ボーンマス攻撃陣のダイアゴナルランに手を焼き続けた。
 
10日には今季終了までの新監督としてディーン・スミスの就任が発表された。昇格1年目のシェフィールドで旋風を巻き起こして以降はアストンヴィラでもノリッジでも結果が出なかったが、守備組織の構築には定評がある。攻撃面ではある程度のタレントが揃っているレスターにとってはWin-Winになりうる存在だ。