ちょっと前に、これからは大学受験についても投稿するとか書きました。

 

 

 

 私は2002年度に高3で、駿台全国模試を受けていましたが、当時、河合塾のオープンや駿台予備校の実戦のような特定の大学に即応した模試以外の、記述型で母集団のレベルが最も高い模試として、駿台全国を位置付けており、ある意味、この模試が受験生段階での総合的な受験学力の最上位層を決める模試として、意気込んで受けていました。

 

駿台全国は今もそのような位置付けであるとの想定の下、高3・浪人用の駿台全国模試の資料を入手し、昨今の東大・京大・国公立医の様子について、色々書いてみます。

 

 

 

 

 

1 今は優秀者一覧が…

 

 

 

2019年度入学の東大入試で、合格最低点、合格者平均点、最高点の全てにおいて東大文二が東大文一を超えたとの報道があり、文系受験学力のトップ層の実態を調べるため、駿台全国模試の資料を入手しました。

 

 

 

 私が高3の頃、文系総合の優秀者一覧の志望大学は、第1回駿台全国模試において3分の2が東大文一で、第2回駿台全国模試においては7割が東大文一でした。この傾向は、全ての模試の冊子を調べたわけではないものの、それ以降の年においても、ほぼこの通りでした。

 

 入手できた最後の年が2011年で第1回ですが、ここでも3分の2が文一志望でした。なので、駿台全国模試の優秀者一覧を見れば、文一が文二に入試の点数で抜かれるという「事件」が一過性のものなのか、それとも文一が本当に落ちぶれたのか、大よその見当がつくと考えられます。

 

 

 

 で、冊子を見たらですね、優秀者一覧が載っていないんですね。寂しいものです。

 

 私の場合、高3の当時、文一A判定と校内文系順位上昇を目標にしていましたが、それに加えて模試で優秀者一覧に名前が載ると嬉しかったですし、受験勉強に打ち込む青少年の自己肯定感につながるわけです。

 

確かに、個人情報保護の観点からというのもあるでしょう。それでも、東大実戦模試では優秀者氏名を載せているので、何だかなぁ…。

 

 

 

 

 

2 法学部凋落はどれくらい本当なのか

 

 

 

(1)東大文一はどれくらい落ちぶれたのか

 

 

 

 縦軸にA判定偏差値(合格可能性80%ライン)を、横軸に科目数を、それぞれ設定して一覧にしてみました。

 

 

 

 まずは、2002年国公立文系。

 

 

 

 
 次に、2019年国公立文系。

 

 

 

 

 

 

 

A判定偏差値だと、文一と文二で同じく66でした。自分は、高3当時、第1回が67弱でB判定、第2回が72強でA判定でしたが、当時の文一B判定は65、A判定は69でしたから、文一もやけに簡単になったなぁとしみじみ思います。

 

 

 

文一が点数で文二に抜かれたとの報道を受けて、こう思いました。国家総合職や予備試験・司法試験のような法学部ならではの進路にこだわらない限り、就活の点で文一・法学部も文二・経済学部も、差はないでしょうし、少なくともエリートサラリーマンになるために、今では東大法学部卒がアドバンテージにはならない(せいぜい、数年前までなら、文系の総合的な受験学力の点で、日本で最高の集団に入れたという、オツムが高性能であることの推定が働いたのでしょうが、アドバンテージがあるとしても、その程度です)。このため、進振りが面倒そうで就活でどちらかというと不利な文三を除いて、「とりあえず東大文系に入りたい」という高校生の心境からすれば、法学部と経済学部のうち、消去法で選ぶ可能性が高く、文一も文二も難易度は同等になるだろう、と予想していたので、「やはりこうなったか」というところです。

 

 なお、意外にもB判定偏差値では、文一が63、文二が62と、文一の方がまだ難しいものとなっていました。1ポイントの差でしかありませんが、何とか受かりそうなレベルだと、まだ文一の方が僅かに難しい、というところなのでしょう。

 

 

 

(2)他大の法学部を経済学部と比較すると

 

 

 

 よく、法学部は人気がないと言われますが、本当のところはどうなのでしょう。

 

 

 

 私の高3当時、法学部と経済学部の偏差値差で、京大は1ポイント、一橋大は3ポイント、阪大は3ポイント、東北大は5ポイント、九大で3ポイント、といずれも法学部が優位でした(名大、神戸大は転記ミスで2002年当時の正確な数値が不明)。

 

 2019年現在では、京大で1ポイント、一橋大で1ポイント、阪大で0ポイント、東北大で2ポイント、九大で1ポイントと、同難易度の阪大を除いて法学部が優位でした。2019年の数字のみですが、法学部57、経済学部56と、伝統的に経済学部が看板学部の神戸大でも、まだ法学部の方が難しいというのが実に意外です。

 

 なお、私立大で経済学部が伝統的に看板学部である慶應の現在について見ると、法学部の両学科とも経済学部のどの入試方式をも上回っていました。法学部の凋落といえども、結構意外でした。

 

 

 

 法学部は人気がない、というのも、私の高3当時は法科大学院構想がもてはやされ、しかも旧司法試験の合格者数の増加が続き、法学部人気がピークの頃でしたし、その頃に比べれば法学部優位が崩れているとはいえ、そこまで落ち込んでいないなぁというところです。

 

 実際、私が大学生の頃は、京大で法学部と経済学部のA判定偏差値が逆転している年があった記憶もあり、その頃は法学部バブルが崩壊していなかったことから、偏差値で1ポイント上なら、まぁこんなもの、ともいえます。

 

 ただ、概ね、国立大学の法学部の経済学部に対して難関であるとの傾向が、これまでに比べれば緩和されているのは間違いありません。

 

 

 

(3)入試の採点基準が違うことについて

 

 

 

 これは私が大学生の頃から言われていましたが、2019年度入学の東大入試の結果においても、駿台予備校の講師(名前は失念)が、科類毎に採点基準が違うから、一概に文二が文一よりも難しくなったとはいえない、といったコメントを出していました。

 

 また、以前に、文三入学者が話していたのですが、その人の駒場時代のクラスには、数学が満点の学生が2人いたものの、両名とも、時間が足りなくて答えを出せず、考え方や解法を書いただけの大問があり、にもかかわらず80点満点であったというのです。その文三入学者は、文三受験生は全体的に数学が苦手で、まともに採点したら素点レベルで文一・文二に見劣りするから、数学はかなり甘く採点しているのだろう、とのことでした。この数学満点の2人の件が真実であれば、そうなのでしょう。

 

 

 

 そういうことを聴いていたので、優秀者一覧から文系トップ層の志望先の実態を調べたかったのですが、それができないのは実に残念でした。

 

 

 

 

 

3 国公立医と東大理一の難易度関係

 

 

 

 これまでの優秀者一覧の志望大からして、トップ層は東大に集中していましたが、理系については、東大理三、京大医、東大理一の順に多く、他にその他の旧帝大や旧六医が数人散見される程度で、最上位層が文系に比べると分散していました。

 

 

 

 まずは、2002年国公立理系前期。

 

 

 


 次に、2019年国公立理系前期。

 

 

 

 

  私が高3の頃は、東大理一が科目数を度外視すれば、弘前大医や滋賀医大と同列でしたが、2019年現在では、例えば北大医と同列(A判定68)、東北大(A判定69。同格で神大医、九大医)に1ポイント劣る程度です。記述式の国語がある時点で、本当の難易度で東大理一は東北大や九大を上回っているともいえます。なので、かなり理一が(同様に理二も)難しくなったんだなぁと印象深いです。

 

 

 

 

 就活が最近は楽になったとはいえ、いつまた不況になるか分からないこの御時世、医学部に行く方が無難だと思う人が増えてもおかしくありません。また、東大理一・理二は、以前から、例えば「血を見るのが嫌だ」等の理由(他にもあるでしょうけれど)で医学部を避ける理系最優秀層の受け皿になっていると考えられますが、そのような需要が最近になって一気に増大するとも考えられず、何故なのでしょう。

 

 ノーベル賞受賞者が理工系分野で増え続けているから、というのもあるかもしれませんが、我が国の理工系の研究環境が劣悪で、一生をこれに託すリスクを考えれば、進路選択のために高校生がちょっと調べれば、安易に理工系の研究者の道に進もうとはしないでしょうし、何が背景にあるのか、非常に気になります。

 

 

 

 

 

4 共通テスト

 

 

 

(1)二次試験を共通化してみたら

 

 

 

再受験医学部生(以下、再)

 

「国公立医学部に入って思ったけど、東大入試の出題って、かなり質が高かったと思うよ。教養の期末試験を比べても、東大の方が作問能力の質が違う。地方の国公立医学部ではそうでもないな。共通テストが話題だが、いっそのこと、二次試験は低学力層を確実に排除する試験として定評のある東大の二次試験を全部の国公立大で使えばいいんじゃないかね。」

 

 

「東大の出題って、解いてみると分かりますが、基本知識を正確に覚えていることを前提に思考力勝負ですよね。でも、東大の出題を全部の国公立大の入試に使ったら、例えば京大が嫌がるでしょうね。合格最低点が明らかにされたら、おそらく、理三・医学部を除外すれば、東大のどの科類でも、最低点が京大のどの学部をも上回って、国公立大の序列化が明らかになって、嫌がるでしょうね。」

 

 

「それはそうだな。でも、東大が一括して作ってくれる方が、それ以外の国公立大の作問担当教員の仕事が減って研究に打ち込めるメリットはあるぞ。」

 

 

 

 今、書いていて、東大と京大では科目間の配点が違うので、合計点の意味が異なり、必ずしも点数を比較して難易度を序列化されるとは限らないかなと気付いたので、二次試験を東大の出題で統一するというのは、ありかもな、と思いました。

 

 

 

(2)英語の共通テストとやら

 

 

 

 英語の民間テストの受験料が1回2万円とのことですが、それに比べると駿台全国の受験料は1回6000円です。難関大志望者のニーズに合った難易度の問題の質を毎回提供できていることからすれば、こちらの方がよほど良心的でしょう。

 

 

 

 我が国の社会において枢要な仕事に就く人材を選抜する極めて重要な国公立大学受験において、民間試験を導入すること自体、公平性の観点でやめるべきですが、大学入試さえ民営化してしまえという最近の新自由主義的な風潮を押しとどめることができないのであれば、民間試験をするにしても、せめて駿台全国模試を使う方がマシなのではないでしょうか。

 

 

 総合得点率で6割あれば優秀者一覧に載るのも夢じゃない試験なので、問題難易度的に、結構ハードですが、こういう難問に食らいつけるようにするくらいでないと、高校で何を勉強していたんだということになると思います。逆に、こういう難問型の出題に全然耐えられない人は、高等教育を受ける形として「大学」に通う必要はなく、戦前のように専門学校に行って実学に特化して学ぶ方が、教育に携わる人員の最適配分に適うのではないでしょうか。