丁度、東大・京大入試の合格者数が載った『サンデー毎日』の季節ですので、大学入試を終えたばかりの方々にイメージが湧くように、予備試験・司法試験を、国公立大学文系受験に喩えて書いてみます。

 

 予備試験・司法試験の最大の山である論文式試験の出題は、ほぼ全て事例問題ですが、これの処理を分解すると、

 

(1)事例の事実関係から、どういう分野のどういう条文を適用する場面なのか読み取って、自分がこれまで解いてきた問題パターンと照合し、

→数学で基本例題をマスターし、それを使いこなしてき初見の問題を解いてきたように、典型問題のストックを活かす

 

(2)素直に適用するべきと考えられる条文の文言について、その定義を端的に示し、

→定義自体は、英語の重要構文のように、必須知識として正確に覚えておく。

→定義は、条文の文言を、平易な日本語に言い換えることに等しく、条文の文言が意味する内容を、平易な日本語として網羅して意味が通っているか考えつつ覚えるという、現代国語の感覚が必要となる。

 

(3)適用すべきか争いのある条文については、論証が必要な場合は条文の趣旨を明らかにして規範を示し、

→争いがあるかどうかは、受験生段階では「論点」となっているかで決まる

→数学で公式や定理を証明するようなもので、数学だと、定義や前提となる数式を論理的につなげるように使って証明できるが、司法試験では、例えば、○○という制度趣旨は……という理屈で××という場合にも当てはまるから、△△である、よって、**と解する、いうように、論理的につながった文章を書くことで、証明します。

 

(4)問題文の事情に当てはめ、結論を出します。

→数学で公式を具合的に問題に適用して計算するようなものです。

→数学で、問題文で示された条件から、一見して公式を当てはめるのが難しそうでも、計算力で突破して公式を当てはめられる場面まで持って行くことがあるように、司法試験では、当該事例の事実を一つ一つ指摘して、規範の要素に適合するように意味を与えて評価し、規範に綺麗に当てはめるよう、問題文の事実を評価していくわけです。

 

(5)典型論点に出て来ないマイナーな条文を覚えておき、使えるようにする。

→世界史で、縦軸(同じ地域で時代毎の変遷をつかむ各国史)と横軸(同じ時代で地域間の交流や比較をする)の視点で知識を整理するように、細かいマイナー条文を使えるようにする。マイナー条文は、メインの論点を処理するところにたどり着くまでの設例の検討のために必要となり、これは短答で確実に正解して得点を底上げするためにも重要です。

→世界史や日本史で、特定の時代を掘り下げて勉強する(例えば、山川出版社の用語集で頻度①だけど一問一答型の出題があるような)ように、論文式試験にあまり出て来ない条文を素読し、適宜、LECの完択や辰巳の条文・判例本を読んで理解しましょう。

 

 

 大学受験で得た知識や思考法がそのまま司法試験等で使えるというわけではないのですが、大学受験で鍛えられた学力が司法試験等に通じる場面は意外と多いので、思い切って予備試験に挑戦してみるとよいと思います。

大学受験で多くの科目をこなした人は予備短答の一般教養に対応することは比較的容易ですし、予備短答法律7科目のために知識を整理・記憶することも容易です。予備論文が最初の山となるでしょうが、突破は十分にあり得ることです。

 

 これからはリーマンショック超えの不況時代がやって来るようですし、自分の高い学力を活かして社会に出るチャンスを掴めるのなら素晴らしいことですし、踏み出してみるのは大いに意味のあることではないでしょうか。

 予備論文対策として、演習書や問題集の答案構成を数多くこなすことを考えている人は多いのでしょう。で、それで受かるのか、本稿ではそれについて書いてみます。

 

 

1 そもそも答案構成って

 

 答案構成は、論文式答案を書き始める前に、箇条書き的に、答案で書くべきことを体系的に整理したメモであり、謂わば、答案のページ番号や行番号を除いた目次のようなものです。

 

 答案構成と一口に言っても、その水準は受験生の実力に応じてバラバラです。受験生が「この1冊、全問、答案構成するぞ!」とか言っても、それは問題に取り組んでみることにはなるのでしょうが、答案構成をする意味があるかどうか怪しい場合もあります。

 精々、思いつく論点を書き出してみる程度で、思いつかない論点も多々あることでしょう。

 

 

2 学習進度別にみた答案構成に求められる水準

 

 あくまで目安で、他の視点があることを否定するものではありません。

 

(1)初級者がすべきこと

 

 初級者とは、後述の中級車未満の水準です。短答不合格なら、間違いなく初級者です。本試験後に再現答案を書けない又は再現答案を書いてみたら答案の体をなしていないレベルともいえます。

 

 時期的に、国公立大学前期入試の合格発表が終わった頃なので、受験数学に喩えますが、これは、大学受験業界において脚光を浴びた和田秀樹の「数学は暗記だ」に近いもので、あれを法律答案の世界でもやろう、ということです。

 法律答案の処理の仕方と受験数学は、次のような対応関係になります。

 

・法律用語の定義:最も基礎的な定義を覚えていること

・論証(理由と規範):公式や定理を証明できること

・当てはめ:公式等を使って正解値を計算できること

・典型問題のストック:青チャートの例題・練習にあるような頻出問題が解けること

 

 初級者は、上記のうち、特に典型問題のストックが乏しいわけで、その分、どの論点を書けばよいのか分からない場面も多くなります。だからこそ、典型問題については未知のものをなくすべく、問題集を何度も読んでみるべきです。

 また、法律答案の場合、これらの他に、典型論点の中には出て来ないが、論点と論点をつなぐための条文知識が必要で、これがないと単に論点を本当に貼り付けただけの答案になりますが、そういった条文知識を全てカバーできるようにすると短答対策を完璧にしないといけなくなり、論文対策がどうしても後回しになってしまいます。

 また、何度も典型問題の参考答案を読んで、論文意外に必要な条文知識を得るきっかけにする必要があります。

 

 よって、初級者はひとまず問題集を何度か読んで、大体のことが頭にインプットすることを優先すべきです。おそらく、答案構成をしても考える時間が無駄になります。

 受験数学で1つの問題に何十分も悩んでも意味がなく、さっさと正解・解説を見て説き方を理解して覚えるのと同じです。なお、受験数学についてのこのような考え方は中学生の頃から当たり前だろうと思っていましたが、「それでは思考力が身につかない」とかたくなな人が世の中には結構いて、そういう人がいるから、凡庸な私でも何とかなったのだろうと感謝しているところです。

 

(2)中級者がすべきこと

 

 中級者とは、典型論点を問題提起から理由、規範、当てはめまで一応かける受験生のことで、論点以外の条文知識も一応ある受験生をいいます。再現答案が書けるが、再現度が低い又は内容面で減点ポイントが多くそれを自分で気付けない人です。

 

 ここで、「一応書ける」というのが厄介です。答練で甘い採点者に当たれば、中級者は簡単に40点(50点満点)以上が取れてしまいます。法学部人気が下がれば予備試験受験生のレベルも下がるので、最近の競争が緩くなりつつある予備試験なら、こういう中級者でも、本番で大失敗をしなければ合格してしまいます司法試験に落ちることは十分あり得ます。予備合格者なのに司法試験にあっさり落ちる人々には、このような中級者なのに予備試験に受かってしまって弱点改善をしていないのが結構いると考えられます)。

 

 様々な予備校講師が指摘していることですが、例えば、問題の所在に気付いていながら、当然に思い浮かぶべき反対説や反対説の要素となる見方に全く言及しない、というのが駄目な答案です。他にも、答案の表現上、当てはめが規範に対応していない、事実と評価をつなげるための自分なりの言葉での補足がない、といった欠陥もありますが、甘い採点者は、こういう欠陥があっても、「まぁいいか」と丸を付け、配点も満額回答で採点するでしょう。答案構成をして意味があるのは、中級者以上ですが、中級者とて、実際に答案を書く訓練も重ねる必要があります。

 

 論点が何か分かっていても、当てはめまで書いてみると、駄目なところがいくつも見つかり、その都度改善していくしかないのですが、答案構成をメインにして、他人に採点してもらう答練を怠ると、そういう改善のチャンスを逸します

 答練をこなした上で余裕があれば答案構成もする、というのが優先順位です。また、答案構成をするとしても、中級者ともなれば、それを見て一応再現答案が書けるくらいでないといけません。

 

(3)上級者がすべきこと

 

 ここで、上級者とは、典型論点を問題提起から理由、規範、当てはめまできちんと書けるし論点以外の条文知識もある受験生のことですが、「きちんと」というのは、論証までを正確に書けて、特に当てはめで過不足なく書くための方法を自覚していて、それが実践できているレベルを意味しています。

 再現答案を書けば、再現度が高く、必要な検討ができていて、減点ポイントが少ないレベルです。

 

 このような意味での上級者は、予備試験に手堅く合格し、司法試験も流石に不合格にはならないでしょう。前述の中級者の中でも、予備試験にマグレで上位未満で合格した後に弱点を改善して上級者になれば、司法試験に不合格にはなりません。司法試験が簡単になっている文、上級者への成長がなくても中級者のままで受ける余地はありますが。

 

 上級者は、どうせやるなら、ナンバリングも含めて体系的に整理された答案構成が欠ける必要があります。多少の手間がかかるようですが、いざ答案を書き始めたら、答案構成や問題用紙をチラ見しながら一気に書いていくわけですから、自分が書こうとする内容が体系的にどこに位置付けられているかすぐに分かる必要がありますから、非常に意味があることです。

 また、上級者であれば、それだけ慣れているのもあって、答案構成で使う用語は、かなり簡略化されているので、そうそう手間でもないでしょう。

 

 いずれにせよ、答案構成の数をこなして効果があるのは、上級者です。

 

 

3 ちなみに再現答案

 

 ここで再現答案を目安にしたことについて、再現答案を一切書かずに合格した人もいるとして反論する人もいるでしょう。確かに、合格のために再現答案が必須ではありませんが、予備試験に一発合格した人であろうと、自分が本番に書いた答案の内容を振り返って弱点補強するための絶好の機会ですし、合格発表までの身の振り方を合理的なものにできますから、書いておく方が手堅く合格できることにつながるでしょう。

 

 

4 結語

 

 長々と書きましたが、答案構成をやってもよいけど、合格答案を書けるようになるためにすべき訓練は、答案構成以外に沢山あり、そっちを頑張る方がいいです。

 

 精神論や根性論で学力が上がるものでもありませんが、惜しんではいけない労力というのもあるので、お手軽そうな答案構成に逃げずに、答案をフルに書いてみるのは大切です。

 速報値ですが、令和2年の予備試験の出願者数が発表されましたね。

 

 

 

 グラフを見ても分かるように、平成27年から5年連続で司法試験と予備試験の出願者数合計は減少していましたが、ついに今年は増加に転じました。プラス151名で、約0.78%増でしかありませんが。

 

 

 平成28年以降、司法試験出願者の減少数が概して小さくなり、予備試験出願者は増加数が大きくなっていくので、この分だと来年も全体で増えていくと期待します。

 

 母集団が減ると上位層も薄くなってしまって、裁判官や検察官の成り手のレベルも下がって当局も困るだろうと毎年気になっていましたが、今年でせめて底を打ったと思いたいですし、ここから合計20000人まで回復して欲しいところです。

 予備試験の論文答練を受講していて、周りの受験生もそんなに書けていないから自分の答案が駄目でも気にしない人もいるそうですが、答練は予備試験受験生の大半が受けているとは限らないので、そのように考えるのは危険です。

 

 予備試験合格者に占めるロー生(出願時)の割合は、

・平成23年: 6.9%(=  8÷116×100)

・平成24年:31.5%(= 69÷219×100)

・平成25年:46.1%(=162÷351×100)

・平成26年:46.3%(=165÷356×100)

・平成27年:34.8%(=137÷394×100)

・平成28年:37.8%(=153÷405×100)

・平成29年:24.1%(=107÷444×100)

・平成30年:34.2%(=148÷433×100)

・平成31年:24.2%(=115÷476×100)

という具合に、最近は減ったとはいえ、少なくとも4分の1はいるわけです。

 これに、大学4年時に予備試験に出願した者も含まれることになるので、更に多くなります。

 彼等は必ずしも予備試験答練を受けるとは限らず、司法試験用答練を受けている場合もあり、また、そうでなくても、もし法科大学院内で予備試験答練をシェアして答案を書いて友人同士で批評し合っていれば、予備試験答練を受けないようになるわけです。結局、予備試験合格者には、予備試験答練で予備校に答案を出していない人も少なからずいるわけです。

 というわけで、予備試験答練で出来の悪い答案を自分が書いたまま、改善できていなかったら、そのまま本試験で落ちるだけです。特に、仕事しながら予備試験を受ける人は、自分の答案に向き合って駄目な答案は書き直して改善していかないと、他人に答案を見てもらって改善するチャンスに乏しいので、本試験では簡単にC以下の評価になってしまいます。

 

なお、予備試験本番の得点は、偏差値修正した各科目の答案10通の合計ですから、トップ合格に近い300点超えでも答案1通で平均30点超えということになり、結構優秀な答案でも30点強というところです。

予備試験答練は50点満点で採点されますが、偏差値修正をしないので、40点近い高得点でも、本番ではその7掛けくらいになると覚悟しておくべきで、答練で簡単な出題で採点が甘いと40点前後取れることもありますが、そこから偏差値換算するとショボい点になる可能性がありますので、気を緩めずに勉強を続けるしかないですね。

 短答シーズンに入る前に、予備試験受験生は、論文式答案の基本事項を今のうちに改善しておく必要があるので、良い答案と悪い答案、それぞれの要素を端的に挙げてみます。

 

 

1 良い答案

 

・これから何を論じようとしているか、はっきり書いている。

・「・・・といえるか。」や「・・・であるか。」とはっきり問題提起している。

・問題の所在を端的に指摘している。特に、条文のどの文言に当てはまるかが問題であるのか、明確である。

・条文の文言をカギカッコで括って、条文の文言に着目していることが明らかとなっている。

・条文の趣旨に言及して論証している。

・判例ベースの文言で正確に規範定立している。

・当てはめを具体的にする。

・当てはめをする際、規範定立で明らかになった要素・条件に当てはまることを、規範の文言に対応するように書いている。

・結論は、問題提起での問いかけに対応する形式の表現である。

・「第1」、「1」、「(1)」、「ア」、「(ア)」という順にナンバリング階層が整理できている。

 

 

2 悪い答案

 

・問題提起がない。条文のどの文言が問題になるのか明らかにしない。

・条文の文言を引用して論じない。

・論証において条文の趣旨や理由をまともに書かない。

・判例ベースの文言で正確に規範定立できていない。

・当てはめが具体的でない。長々と書いていても、規範で示した条件・要素に当てはまっていない。

・結論が問題提起の問いかけに対応した形式の表現でない。

・ナンバリングを適切にしない。

 

 

3 補足

 

(1)形式面

 上記のうち、答案の形式面に関わるものついては、表現の際はあれども、辰巳の福田俊彦講師が言っていたのとほぼ同じです。

 

 ナンバリングは、当初は面倒かもしれませんが、答案構成時点で、適切なナンバリングをしておけば、答案構成をチラ見しながら、スピーディに答案作成ができますから、答案構成時点で気を付けるべきです。

 ナンバリングが正しくできていれば、自分の論述の体系的整理ができていることになり、現場思考の問題であっても、問題提起、論証(現場思考ならアドリブとなることも多かろうが)、当てはめの流れが守れていれば、それなりに評価される可能性があるので、些細なことのように見えても注意すべきです。

 

 その他については、内容面の改善が最優先ではあるものの、文字数が多いのが面倒でも手を抜くべきではありません。手を抜いた分だけ、1点、2点、と取りこぼしていくことになります。

 

(2)内容面

 規範も理由付けも、一気に完璧に書けるようになるものではないものの、大体の論点を一応でも書けるようになったら、改めて、全ての典型論点の規範と理由付けを正確に書けるかチェックすべきです。

 正確でないと、当てはめがいい加減だったり抽象論で逃げたり、と点を取り逃がすことになります。

 

 典型ど真ん中の初歩的な内容を問う出題であれば、規範と理由付けが完璧に書けていて、当てはめもバッチリでないとA評価はもらえません。

 応用問題なり現場思考問題なり、難しい問題であれば、せめて基本的な典型論点を正確に処理できていなければ、思考の土台がグラグラして、検討が総崩れとなります。規範や理由付けの完成度が70%なら、難問であれば完成度は70%の二乗で49%と、結構悲惨なことになるでしょう。難問が出ても、結局は典型論点を固めておくしかありません。

 結局、趣旨・規範本等の論証をできるだけ正確に書けることが、高得点への近道です。尤も、論点落としや論点外しをしないことも重要ですが、それとて、設問中の事実から逆算して論点を正確に把握できるのであって、規範の正確な再現ができればそれも容易となるでしょう。

 

 最近、自分が大学受験をしていた頃のことを振り返るに、受験生は自分が受験する本命の試験に合格するために一生懸命勉強するのは間違いないものの、それでも、その目標突破に必要な勉強が見えてくると、「これくらいの勉強で受かりそうだな」と目算し、勉強への労力投入をしぼるようになるのではないかと思います。

 

 例えば、自分に即して言うと、文一志望なら、文系最難関だから必死でやるべきだと覚悟を決めつつも、でも理三ほどシビアな試験ではないのは明らかですから、自分に課すハードルも相対的に下がります。

実際、自分にとっての他の志望校候補として京大法学部がありましたが、ここを受けることになっていれば、明らかに文一受験に比べて必死さが減退していました。

 実際、自分は高3の12月頃から、まぁまぁこれくらいで大丈夫だろうと思っていました。合格こそしましたし、受験後に「落ちてはいない筈」だと確信していましたが、本番に頭が真っ白になって、数学で大問1つを白紙にしてしまいました。多かれ少なかれ禁欲的に勉強している受験生からすれば、何だかんだ合格さえすればいいではないか、少しは息抜きしたいと思って、そこそこ遊びたいものなのですが、後から振り返ると、優秀な成績で合格する方が気持ち良いに決まっています。

 

 予備試験受験も、勉強が進むにつれて、合格が見えてくると、手を多少抜いても受かりそうだと思えてくるので、少し手を抜いてしまうかもしれません。予備試験に合格して司法試験に臨む場合もそうです。

 私の場合、予備試験については、合格した第5回では必死でしたが、第4回ではそこまで必死ではなく、第3回が僅差不合格だったから、今年は大丈夫だろうと緩んでいました。それで僅差不合格と無様な結果となりました。司法試験の前は、予備試験に上位合格し、LECと辰巳の模試も順調だったため、気が緩んで趣味に現を抜かすところもあり、本番の結果は不満の残る順位でした。

 弁理士試験も、もう少し良い点数で合格できればよかったが…、と物足りない成績でした。

 

 勝てば官軍という言葉もありますし、合格と両立する限りで遊ぶのもよいのですが、勝ち方も大事なので、自分の勉強に妥協してはいけないな、と最近改めて思うところです。

 ドラマ「知らなくていいコト」第5話で、修央大学ロースクールという名の法科大学院と思われる学校が登場した。主人公が取材していた事件の被害者が、修央大学ロースクールの学生だったのだ。

 第5話のネタバレになるが、被害者は司法試験受験のストレスから爆弾を作るようになり、近所の子供の声がうるさいから爆弾を仕掛けようとし、それを阻止しようとした元警察署長の祖父(演・勝野洋)に殺されたというのである。

 

 難易度が下がり続けている司法試験で爆弾を作るくらいまでロー生がおかしくなるという劇中設定について、まだまだ司法試験は難しい試験だと世間は思ってくれているんだなぁと可笑しい。ドラマの描写として大学受験生がストレス過多で事件を起こすというものはあっても、公認会計士試験や弁理士試験への対策で頭がおかしくなるストーリーなんて聞いたことがない。

 また、この被害者ロー生は、祖父からスパルタ教育を受けていたという設定なのだが、ならば法科大学院に行かず予備試験に合格せよ、というプレッシャーがあったのだろうか気になるところである。寧ろ、「予備試験に合格していないと一流事務所に入れない」とでも登場人物が口走ってくれた方が受験生の必死さが伝わってドラマの作り込みの頑張りを感じる。

 

 司法試験合格者に占める予備試験合格者の割合はまだ少ない方だが、将来的な司法試験合格やその後の就活を有利に進めようという意欲の強い受験生にとって、最も選抜機能を果たす関門は予備試験なのだから、予備試験に注目する方が面白かろう。

 そういえば、司法試験に関連する流れで予備試験が人気を集めていることに言及する大手マスコミの報道・論説を見るに、ロー生ですら法科大学院在学中にも予備試験を受けていることに触れるものを見かけないが、その辺に踏み込んだ記事があれば、世の中の見る目も変わるだろうか。

 司法試験における選択科目・知的財産法の対策を、弁理士試験で知財法一般の勉強をした者として、書いてみよう。今後は予備試験に選択科目が課されるそうなので潜在需要はあろうから。

 

 使う教材としては、辰巳法律研究所の「司法試験論文対策 1冊だけで知的財産法」である。

 

 

1 特許法

 

 弁理士試験では特許法の全ての条文から出題されるが、司法試験では、基本的に、特許を受ける権利の帰属関係や、侵害関係の勉強が中心となり、手続関係の出題がない。

 

 

2 著作権法

 

 弁理士試験では一応習ったが、短答対策レベルだと、そこまで厳密に学習しなくても対応できるので、司法試験対策の方が正確に整理・理解しておく必要がある。

 弁理士短答では、出題条件からして、条文上のどの要件に対応するかを厳密に理解していなくても何とかなるが、司法試験は寧ろそういう点について穴をなくしておく必要があるので「1冊だけで」では使えそうである。

 なお、「1冊だけで」掲載の平成25年までの過去問を見るに、実演家の権利の出題がないようであるから、出題範囲は狭く、知識の整理がそんなにしんどくはなかろう。

 

 

3 点を取るための実践的な方法

 

 結局、判例で示された規範を、理由付けと共に何度も書いて覚えるしかない。それだけかと思うであろうが、労働法も同じで、知的財産法も結局はそのようである。

 ただ、判例の規範を正確に書ければ何とかなる(量は多いが)労働法に比べ、知的財産法の方が、著作財産権を構成する支分権1つ1つを体系的に整理して正確に処理する、知識整理の手間があるのは面倒ではある。

 

 予備短答の過去問を使う等して周辺知識を固めて対策できる法律7科目と異なり、選択科目はそういう短答過去問を使った対策手段が乏しいのだが、幸い、少なくとも知的財産法は弁理士試験の短答過去問10年分を収録した「弁理士試験 体系別短答過去問」をLECが出題しているので、これを買って解くのもアリかもしれない。特許法で50問ほど、著作権法で40問(実演家の権利を除いて)ほどあるから、そこまで時間がかからずに自身の理解をチェックするには丁度良い。

 尤も、基本の理解が全然できていない、著作権法の権利選択を間違うくらいヤバい、といった人向けの手段なので、ひと通り勉強して趣旨・規範を覚えれば大丈夫そうな人は、わざわざ手を出さなくてよいだろう。

 司法試験の受験人口が減り、しかも労働法や倒産法に比べてパイが小さい知財法なので、予備校の商業ベースに乗るのは困難だろうが、辰巳が折角出版してくれているので、「1冊だけで」を使わない手はない(LECがC-BOOKで特許法・著作権法を出してくれたら、そっちも辞書的に使うことはありそうだが)。

 

 

4 予備試験で知財法が出題されたら

 

 予備試験に選択科目が課されたら、知財法も選択肢に入る。自分は常々、労働法は対策教材の選択肢が広く充実しているからと勧めてきたが、予備試験で受験人口が増えたら、各科目の教材の充実度が変わるのだろうか気になっている。

LECは弁理士試験対策で業界最大手(講師の人材の厚さ、合格祝賀会の人数、模試の人数からしてそうだろう)なので、パイが大きくなり商業ベースに耐えられる規模になれば良質な教材が提供されると予想する。あくまで希望・期待だが。

 

 平日の毎日新聞夕刊第2面には、毎日新聞の党派的手中が強く出るインタビュー記事がよく載るのだが、1月20日(月)の夕刊第2面には、久保利英明弁護士のインタビュー記事があった。そこに、

 

 日本には現在、4万人強の弁護士がいるが、活動の場は東京や大阪などの大都市に偏っている。政府は2002年、司法制度改革として、司法試験の合格者を10年には3000人程度とする目標を閣議決定した。だが現状では約1500人にとどまり、増員は進んでいない。

 「弁護士の中には『数が増えると飯が食えなくなる』という声もあり、増員を阻む一因になっている。弱者を守るために弁護士になったんじゃないのかと言いたい」。

 

というものがあった。

 

 

1 弁護士を普通に食える仕事にしないといけない

 

 どんな職業も生計を立てられなければ始まらないのであって、そうでなければ優秀な人材がその職業を目指すことはないだろう。特に、少なくとも結構な時間と資金を投じて試験勉強をし、合格後も1年以上は生活費を十分に稼げないまま研修を強いられる必要があり、仕事を始めれば責任が特に重く福利厚生面でのサポートもない個人事業主である弁護士は、普通に働いていれば十分に稼げる職業でなければならない。

 司法制度改革以来、その点について弁護士業界は不安が小さくなることはなく、にもかかわらず、

 

 「弁護士の中には『数が増えると飯が食えなくなる』という声もあり、増員を阻む一因になっている。弱者を守るために弁護士になったんじゃないのかと言いたい」。

 

と言うのでは、弁護士の職業としての持続可能性を弱め、何ら現状の課題に答えていないことになる。寧ろ、清貧であることを弁護士に強要するものであると解されてもやむを得ないのであり、これだけ弁護士業界が苦しくなっても、こういう認識なのかと衝撃的である。

 

 

2 現状では約1500人にとどまり、とは

 

 上記の引用部分にある、「だが現状では約1500人にとどまり、増員は進んでいない」は、事実に反する部分がある。司法制度改革が始まった2002年の旧司法試験合格者数1183人に比べれば、約1500人合格の現状は、寧ろ確実に増員が進んだとさえいえる。

 2012年に合格者数が2102人にまで達したこと、翌年から合格者数が減り続けたこと、平成27年5月の閣議決定で「年間1500人以上」と明確に路線転換したことには触れておらず、現状を正確に説明するならば、増員してみたが問題点が明らかとなり、1500人以上に減らす方向に路線変更したというのが実態に近い説明であり、平成27年5月の閣議決定に触れずに平成14年の閣議決定にのみ言及するのは、弁護士増員が今でも司法制度における基調的な考え方であると読者に刷り込ませるという問題がある。このような記事を載せるのは、真実を伝えようとする新聞としては不勉強か不誠実である。

 

 

3 ここからは法曹養成と無関係だが

 

 インタビュー記事では、その後、

 

 平成の30年間で日本は内向きになり、国全体が活力を失ったと感じている。「経済でも、人権擁護など社会生活のうえでも、世界各国がぐんぐん成長していた時、日本人は『自分たちは素晴らしい』と自画自賛するばかりで、何も変わろうとしなかった。司法をはじめ、日本が各分野で世界に後れをとったのは、それが大きな要因です」と言い切る。

 

と語っている。だが、つい最近まで、我が国では「アメリカのビジネスエリートが…」や「北欧では社会福祉が…」というように、外国を持ちあげて日本は遅れているといった出羽守論法で我が国をこき下ろす言説が寧ろ大手メディアで主流だったのではないか。

 「日本は凄い」式の言説自体が大して有益でないとしても、大手メディアで出羽守論法の自虐的言論が蔓延していたことへの反動が最近になって強まるのは自然なことであり、何も平成の30年間に我が国が夜郎自大だったわけではあるまい。我が国における「日本は凄い」式の意見は、どちらかというと文化や観光資源を外国人が評価している文脈で出てくることが目につき、日本の衰退が顕著な分野で出てくることは稀であり、「自分たちは素晴らしい」などという向きは少ないのではないか。

 我が国が良い方向に向かわない理由を精神論で語るような言説が大新聞に居場所を確保している限り、世の中はますます悪くなろう。

 

 また、最初に引用した部分にあるように、弁護士が東京と大阪のような大都市に偏在しているとあるが、それは結局、経済活動の大都市集中に伴うものである。地方経済の衰退を食い止め、特に首都直下地震や南海トラフ地震による日本経済へのダメージを防ぐべく国土軸の多軸化を目指すべきであり、そのためには交通インフラ整備を地方まで行き渡らせるべきであるが、そういうことは往々にして、土建国家に逆戻りだ、などといったレッテル貼りでバッシングにあうのだろう。

予備論文の一般教養科目の答案を書くに際し、これまで、

 

・行数指定を守る

・答案の下書きをする

・要約問題を正確に処理する

 

などといった当たり前のことを書いてきたが、受験生の現場思考が問われる設問2の書き方について述べていなかったので、ここで書いておく。予備論文に選択科目が導入されて一般教養がなくなるらしいが、今年はまだ一般教養の出題があるので、いくらか実益はあろう。

 

 

1 形式面

 

 当たり前だが、序論・本論・結論という構成を意識する。段落冒頭に接続詞を付けて、段落毎の位置付けを明確にする。

 

 予備校の参考答案を見ても分かるように、ナンバリングをしたり見出しを書いたりといったことをしない。ナンバリングをするのではなく、大学入試小論文のように原稿用紙に書くような感覚で、段落冒頭の一字下げ以外は、行の左端からつめて書くべきである。

 一般教養科目は行数指定が明確なので、見出しを書いて行数を稼ぐことは、試験本番の採点で印象を悪くするという懸念もある。

 

 

2 内容面

 

 設問2では、自分なりに具体的な例を挙げて論じなさい、というタイプの出題が頻繁にある。

試験本番60分の時間配分として、

 

・開始後10分以内に問題文と設問指示を読む。

 

・開始後25分以内に設問1の下書きをする。

 

・開始後50分以内に設問2の下書きをする。

 

・残り時間(約10分)で清書する。

 

と大まかに想定するに、字数(1行当たりの文字数は決めておく方がよい)調整も含めた下書き時間を確保しようとすると、設問2のネタを考える時間はかなり短い。

 だが、問題文の指示に合った具体的な例を挙げることが、最も骨の折れる過程であろう。当然、問題文の著者の主張の文脈から外れたものであってはならないのだが、ここで注意すべきことは、

 

・自分の意見を言わない(…①)

 

・意見の分かれる分野に踏み込む場合、世間で一応知られていて定義不要な考え方を使う表現を心がける(…②)

 

・大学の教養論文で使う教科書に載っているレベルの、体系化され整理された違憲・見解を使うとよい(…③)

 

・法律科目の序論レベルで触れる諸原則を援用できるのもよい(…④)

 

であろうか。

 例えば、①や②については、最近の出入国管理法改正のことを「移民法」と呼んで批判するような、定義を含む背景説明を要する意見を書くべきではない。背景説明を書くには、指定された行数は少なすぎ、自分の伝えたいことを正確に表現できないからである。同様に、現代貨幣理論(MMT)のようなマスメディアで正確に表現されない概念、公共事業悪玉論のような定性的過ぎて学術的に論証されていない俗論についても、言及しない方が無難である。また、歴史的な評価が定まっていない平成政治史の出来事を例示的に持ち出して自説を論じるのは危険であろう。朝日新聞・毎日新聞・東京新聞が安倍政権を、産経思文が民主党政権をそれぞれ批判的に論じる際の用語も、党派的な場合が多く、使うとリスキーである。

 また、②や③に関係するものとして、新自由主義や開発独裁といった、大学入試公民科目の政治経済等で言及される、教科書でちょっと勉強したことのある人にとって意味するものが大きく異ならない、答案用紙上での定義づけが不要な概念・用語なら用いても問題ないであろう。

 更に、④については、過失責任の原則、比例原則、信義則、所有と経営の分離、罪刑法定主義といったものが考えられる。司法試験予備試験の一般教養科目である以上、そういう諸原則を持ち出して論じ易い出題となる場合もあるから、想像するのも予期しておいて損はない。

 

 以上の観点で答案を書くことを、試験本番になって実践しようとしても、おそらくは制限時間内に考えをまとめることができないであろう。だからこそ、日頃の訓練として、予備校答練の一般教養科目にも真剣に取り組むべきである。一般教養だから適当に流したりサボったりしてよいわけではない。