予備論文対策として、演習書や問題集の答案構成を数多くこなすことを考えている人は多いのでしょう。で、それで受かるのか、本稿ではそれについて書いてみます。
1 そもそも答案構成って
答案構成は、論文式答案を書き始める前に、箇条書き的に、答案で書くべきことを体系的に整理したメモであり、謂わば、答案のページ番号や行番号を除いた目次のようなものです。
答案構成と一口に言っても、その水準は受験生の実力に応じてバラバラです。受験生が「この1冊、全問、答案構成するぞ!」とか言っても、それは問題に取り組んでみることにはなるのでしょうが、答案構成をする意味があるかどうか怪しい場合もあります。
精々、思いつく論点を書き出してみる程度で、思いつかない論点も多々あることでしょう。
2 学習進度別にみた答案構成に求められる水準
あくまで目安で、他の視点があることを否定するものではありません。
(1)初級者がすべきこと
初級者とは、後述の中級車未満の水準です。短答不合格なら、間違いなく初級者です。本試験後に再現答案を書けない又は再現答案を書いてみたら答案の体をなしていないレベルともいえます。
時期的に、国公立大学前期入試の合格発表が終わった頃なので、受験数学に喩えますが、これは、大学受験業界において脚光を浴びた和田秀樹の「数学は暗記だ」に近いもので、あれを法律答案の世界でもやろう、ということです。
法律答案の処理の仕方と受験数学は、次のような対応関係になります。
・法律用語の定義:最も基礎的な定義を覚えていること
・論証(理由と規範):公式や定理を証明できること
・当てはめ:公式等を使って正解値を計算できること
・典型問題のストック:青チャートの例題・練習にあるような頻出問題が解けること
初級者は、上記のうち、特に典型問題のストックが乏しいわけで、その分、どの論点を書けばよいのか分からない場面も多くなります。だからこそ、典型問題については未知のものをなくすべく、問題集を何度も読んでみるべきです。
また、法律答案の場合、これらの他に、典型論点の中には出て来ないが、論点と論点をつなぐための条文知識が必要で、これがないと単に論点を本当に貼り付けただけの答案になりますが、そういった条文知識を全てカバーできるようにすると短答対策を完璧にしないといけなくなり、論文対策がどうしても後回しになってしまいます。
また、何度も典型問題の参考答案を読んで、論文意外に必要な条文知識を得るきっかけにする必要があります。
よって、初級者はひとまず問題集を何度か読んで、大体のことが頭にインプットすることを優先すべきです。おそらく、答案構成をしても考える時間が無駄になります。
受験数学で1つの問題に何十分も悩んでも意味がなく、さっさと正解・解説を見て説き方を理解して覚えるのと同じです。なお、受験数学についてのこのような考え方は中学生の頃から当たり前だろうと思っていましたが、「それでは思考力が身につかない」とかたくなな人が世の中には結構いて、そういう人がいるから、凡庸な私でも何とかなったのだろうと感謝しているところです。
(2)中級者がすべきこと
中級者とは、典型論点を問題提起から理由、規範、当てはめまで一応かける受験生のことで、論点以外の条文知識も一応ある受験生をいいます。再現答案が書けるが、再現度が低い又は内容面で減点ポイントが多くそれを自分で気付けない人です。
ここで、「一応書ける」というのが厄介です。答練で甘い採点者に当たれば、中級者は簡単に40点(50点満点)以上が取れてしまいます。法学部人気が下がれば予備試験受験生のレベルも下がるので、最近の競争が緩くなりつつある予備試験なら、こういう中級者でも、本番で大失敗をしなければ合格してしまいます(司法試験に落ちることは十分あり得ます。予備合格者なのに司法試験にあっさり落ちる人々には、このような中級者なのに予備試験に受かってしまって弱点改善をしていないのが結構いると考えられます)。
様々な予備校講師が指摘していることですが、例えば、問題の所在に気付いていながら、当然に思い浮かぶべき反対説や反対説の要素となる見方に全く言及しない、というのが駄目な答案です。他にも、答案の表現上、当てはめが規範に対応していない、事実と評価をつなげるための自分なりの言葉での補足がない、といった欠陥もありますが、甘い採点者は、こういう欠陥があっても、「まぁいいか」と丸を付け、配点も満額回答で採点するでしょう。答案構成をして意味があるのは、中級者以上ですが、中級者とて、実際に答案を書く訓練も重ねる必要があります。
論点が何か分かっていても、当てはめまで書いてみると、駄目なところがいくつも見つかり、その都度改善していくしかないのですが、答案構成をメインにして、他人に採点してもらう答練を怠ると、そういう改善のチャンスを逸します。
答練をこなした上で余裕があれば答案構成もする、というのが優先順位です。また、答案構成をするとしても、中級者ともなれば、それを見て一応再現答案が書けるくらいでないといけません。
(3)上級者がすべきこと
ここで、上級者とは、典型論点を問題提起から理由、規範、当てはめまできちんと書けるし論点以外の条文知識もある受験生のことですが、「きちんと」というのは、論証までを正確に書けて、特に当てはめで過不足なく書くための方法を自覚していて、それが実践できているレベルを意味しています。
再現答案を書けば、再現度が高く、必要な検討ができていて、減点ポイントが少ないレベルです。
このような意味での上級者は、予備試験に手堅く合格し、司法試験も流石に不合格にはならないでしょう。前述の中級者の中でも、予備試験にマグレで上位未満で合格した後に弱点を改善して上級者になれば、司法試験に不合格にはなりません。司法試験が簡単になっている文、上級者への成長がなくても中級者のままで受ける余地はありますが。
上級者は、どうせやるなら、ナンバリングも含めて体系的に整理された答案構成が欠ける必要があります。多少の手間がかかるようですが、いざ答案を書き始めたら、答案構成や問題用紙をチラ見しながら一気に書いていくわけですから、自分が書こうとする内容が体系的にどこに位置付けられているかすぐに分かる必要がありますから、非常に意味があることです。
また、上級者であれば、それだけ慣れているのもあって、答案構成で使う用語は、かなり簡略化されているので、そうそう手間でもないでしょう。
いずれにせよ、答案構成の数をこなして効果があるのは、上級者です。
3 ちなみに再現答案
ここで再現答案を目安にしたことについて、再現答案を一切書かずに合格した人もいるとして反論する人もいるでしょう。確かに、合格のために再現答案が必須ではありませんが、予備試験に一発合格した人であろうと、自分が本番に書いた答案の内容を振り返って弱点補強するための絶好の機会ですし、合格発表までの身の振り方を合理的なものにできますから、書いておく方が手堅く合格できることにつながるでしょう。
4 結語
長々と書きましたが、答案構成をやってもよいけど、合格答案を書けるようになるためにすべき訓練は、答案構成以外に沢山あり、そっちを頑張る方がいいです。
精神論や根性論で学力が上がるものでもありませんが、惜しんではいけない労力というのもあるので、お手軽そうな答案構成に逃げずに、答案をフルに書いてみるのは大切です。