「面白い?」
なんでこいつはこんなに楽観的なんだよ。俺も周りからこう思われてんのか?
「今日は月曜日だっただろ。だけど世間一般からしたら休日だったじゃないか。」
確かに今日は祝日だった。三連休を喜んでいた人も多かったはずだ。
「それがどうしたんだよ。」
「別に祝日だったからどうってわけじゃないけど、お前は今日仕事することを選んだ。だけど俺は休日を選んだんだ。昨日の夜悩んだだろ?今日は仕事しなくてもいいけど、今日やっておくと今週の仕事が楽になる。だから出勤するかどうか考えたじゃないか。」
「ああ。」
昨日の夜を思い返すと確かにそのことについて考えていた。酒をこぼしてしまったのはその時のことだ。
「結局昨日の夜はどうするか決めないまま寝た。そして、今日の朝だ。俺は休日を楽しみ、お前は仕事をしていた。どうだ?面白いだろ。」
「おもしろい……のか?」
「いいか。昨日までは同じ記憶を持っていたのに今日の記憶に関しては俺たちは別々の記憶を持ってるんだぞ。」
「うん。」
だからどうしたと言うのだろう。
「つまり、今まで同じ人生を歩んでたはずの俺たちが、今日の朝に別の生き方を選択してるんだよ。」
「じゃあ、2人になったのは今日からってこと?なんでだろ。」
「それはわかんないけど。」
やっぱり分からないのか。
「それより、いつ気づいたか教えてくれよ。」
「ああ、そうだったな。今日俺は休みだったから買い物しようと思って街に出かけたんだ。」
街というのはたぶん会社のある街のことだろう。ここら辺では一番栄えており、俺が普段買い物に行くのもその街だからだ。
「それで、いつもの本屋に行ったんだ。そしたらエリコちゃんが『今日はわざわざ着替えてまた来たんですか。』って言うんだよ。」
駅から会社へ行く道の途中には個人経営の本屋がある。俺は会社の帰りなどによくそこに寄っている。そして、そこの店員のエリコちゃんと顔なじみになった。しかもエリコちゃんは清楚で美人なうえに彼氏募集中らしい。目の前にいるこいつは休日を利用して、下心見え見えでいつもよりキメて会いに行ったに違いない。
「エリコちゃんに会うために来たんだよ。って言ったら『さっきのスーツの方が似合ってましたよ。』とかいうから話が噛み合わなくなったんだよ。でも、まあいいやと思ってその場は何も感じなかったんだよ。」
そういえば今日の朝、休日出勤だから時間に余裕があったから本屋に寄っていた。
「うん。それで。」
「そのあとにな、ちょっと仕事で気になる事思い出したから福岡課長に電話したんだよ。そしたら、『会社にいるのにいちいち電話ですますんじゃねえ。直接言いに来い。』ってめちゃくちゃ怒鳴られたんだよ。恐いからすぐ切ったけど。」
突然目の前のやつに殺意を覚えた。
「お前のせいか!俺おもいっきり怒られたんだぞ。福岡の野郎に。でもなんの事かわかんないから、どうしていいか分かんなくて黙ってたらもっとキレやがってよ。キレすぎてあいつ、顔面蒼白だったぞ。」
「ああそうだったのか。悪かったな。ただでさえ色白いのに蒼白とか見てみたかったな。」
こいつは他人事だと思いやがって。
「まあいい。その電話からだよ。なんかおかしいと思い始めたのは。」