「考えるのやめようって。」
「は?」
考えるのやめるって考えてないじゃないか。という言葉より先に疑問が出てきてしまった。
「だってさ、考えてもわかんないことをいつまでも考えるより、今のこの状況をもっとうまく利用した方がいいと思わないか?」
確かにこの問題はいくら考えても今のままじゃ何も分からないだろう。しかし、気持ちを切り替えるには俺にはまだ早かった。
「…たしかに今の状況はいくら考えても分かんないか。でも、そんなすぐに俺は受け入れられないな。」
「だろうな。俺も公園でしばらく考えてたんだ。でも分かんなかったんだ。だからもう寝よう。」
「なんでそうなるんだよ。まあ、俺も眠いけどよ。」
いきなり話を切り替えられたことに不満を感じたが、自分も眠かったのでその提案を受け入れた。
「じゃあ寝ようぜ。明日の誕生日にそなえてな。」
「誕生日?ああ、そうか。」
明日は自分の誕生日だったことを思い出した。ここ数年は自分の誕生日に特にイベントがないから、何もないとすぐに忘れてしまう。
「というわけで寝るぞ。お前はそっちの布団な。俺はこの干したての布団で寝るからな。じゃあ、おやすみ。」
「はやっ。」
そう言い終わったころには、もう寝息が聞こえていた。寝つきがいいのは自分も同じだと思うと同時に、自分だから当然なのかと思った。少しずつ受け入れ始めている自分が怖くなった。
「じゃあ、俺も寝るかな。その前に風呂はいろっと。」
その後布団に入り、持ち前の寝つきのよさですぐに夢の世界だった。
起きたのは真夜中だった。時計を見るともう日付が変わり、誕生日を迎えていた。携帯が鳴らしたメールの着信を知らせる音で俺は起きたのだった。メールは高校時代からの友人から来ていた。誕生日を祝う内容の言葉が書かれていた。
「あいつもマメだな。」
そう呟き、自分の誕生日を覚えてくれている友人の顔を思い浮かべた。
「そういえばあいつにもメールきてんのかな…」
そう思いテーブルの向こう側をのぞいてみた。
「え…」
誰もいなかった。
