神威(カムイ)の剣 タイム・コントローラーDAI -20ページ目

神威(カムイ)の剣 タイム・コントローラーDAI

小学6年生の美少年・三島大。古武術とタイム・コントロール能力を駆使して、さまざまな敵を殲滅していく超絶アクション小説。


 土の煉瓦で出来ているような平屋の建物が見えてきた。またねそべって望遠ゴーグルで見る。ジープやトラックが並んでいる。




 煉瓦の建物が本部なんだろう。その後ろにちょっと低い鉄骨造の窓のない建物があるが、あれは武器・弾薬倉庫だろうな。




 敵の建物は勝手がわからない。あぶり出してある程度離れたところから始末するのが得策だろう。


 そう考えた。で、その武器倉庫に近づく。さっき落とした1機目のヘリで生き残っていたゲリラが持っていた、変な形の手榴弾を一個持ってきていたのを倉庫のドアの前に置き、離れる。安全ピンらしきものを抜いて走って隠れたんだけど、一向に爆発が起こらない。




「しょうがないなあ」




 僕は背中のザックからモーゼルを取り出し、弾倉に新しい弾丸パックを装填した。20発装填できるが、必要なのは最初の1発だけだ。




 手榴弾の真ん中をねらって撃つ。あらら、はずれちゃったよ。すぐ2発目を撃つ。


 命中! でも、手榴弾は転がっただけで爆発ない。




「あらー、これは困ったな」




 と思ってたら、兵舎からゲリラが飛び出し

 僕はモーゼルで狙い撃ちした。殆んど顔のど真ん中に当たった。


「こいつら、バカか?」


 続々と出てくるゲリラをモーゼルで撃ち殺したけど、切りがないなあと思いはじめたとき、例のロケット・ランチャーを担いだゲリラが出てきた。




 僕はそいつの頭を吹き飛ばし、スピード・アイの倍率を50倍速に上げた。転がっている死体の中からマシンガンを拾い上げ、入口から中に向けて全弾をたたき込む。




「これでしばらくは時間が稼げるだろう」




 ロケットランチャーを拾い上げる。その操作方法は横田基地で習っていた。ロケットは2発あった。




(おおっと。これは危険なんだ)




 僕はあたりを見回したが敵の姿や飛んでくる縦断はない。



(ってことは、あの武器庫か!)



 僕はあたりの時間がほとんど止まったままの中を、走って兵舎の裏側に駆け込み、身を伏せた。




 ものすごい大爆発だった。いったい何を入れてたんだ?


 顔をあげると、土煉瓦作りの兵舎の地上部分はほとんど吹き飛んでいた。僕は体の上につもった土をふり払いながら起きあがった。




 あたりを見回す。遠くにジープが転がっている。5台のうちの2台がまともに立っていた。僕はそれに近づく。どちらも動きそうだ。キーは差したままだった。




 1台ずつ瓦礫になった元兵舎に乗り上げる。もう1台も同じようにする。





 ガソリンタンクをモーゼルで打ち抜こうとしたが、考え直した。地下に人質がいたらまずい。




 ジープの後部座席の下に手動ポンプが見つかった。ガソリンタンクのフタを開ける。ポンプをつっこみ。吸い出す。パイプの先を兵舎の床に向ける。ガソリンが流れ出す。ポンプのキャップを取ると、ガソリンが流れ出し続けた。1台目のジープのタンクが空になった。




 僕は少し離れた場所で待った。しばらくすると、瓦礫の山が崩れ、階段のあったところから人が転がり出てきた。女性らしかった。ベールで顔を覆っているから判然としないが、叫び声は女性のものだった。




「撃たないで!」そう言っているものと判断して、その女性を見逃す。続けて5人ほど、同じ状態が続いた。




 そのあと、しばらく時間をおいて同じような格好の人間が穴から出てきた。




(こいつは女装した男じゃないのか?)




「Hey!」




 と声をかけた。その女姿のごつい姿の男は胸元に手を突っ込むと、何かを握り、ピンを抜いた。



(あ、手榴弾か) 





 僕はその男をモーゼルで撃ち殺した。




 「出ててこい。出てこないなら、このガソリンに火をつけるぞ!」



 僕は穴の奥に向かってフランス語でそう怒鳴った。




「やめろ。今出ていく。武器は持っていないから撃つな」




 ひどいブロークンのフランス語が聞こえた。




「ダッコール。一人ずつだ」




 そう言ってから1分ほどして、ベールで顔を覆った女性姿の者を含め150人ほどが並んだ。




「おまえ、何者だ? 子供じゃないか。ほかの兵はどこだ?」

「僕一人だよ。悪かったね」




 一同に動揺が走ったようだ。こんな子供にしてやられたのか。その屈辱は激しいと見えた。男たちの何人かが銃を抜いたので、モーゼルで撃ち殺した。ゲリラたちはまだ状況が飲み込めないようだった。一人が手榴弾を取り出し、ピンを抜いた。



(まずい!)そう思ったが、仕方なく穏剣をベルトから引き抜き、手榴弾を投げようとしている男に投げた。男は後ろ向きに倒れ、手榴弾は地面に転がった。




 爆風が僕の体も包んだ。遅れることコンマ数秒で元兵舎の瓦礫はガソリンに引火し、燃え上がったと思ったら大爆発を起こした。




 僕は危うく巻き込まれるのを50倍速で切り抜けたが、並んでいたゲリラたちは全員跡形もなく吹き飛んでいた。地下には武器庫もあったのだろう。その弾薬、火薬に引火したのだ。




 女性らしき姿が38人いたが、助けることは無理だった。全員を殺すことになってしまったが、いたしかたなかった。彼女たちも自爆テロの要員である可能性が高いのだ。





 後味は決してよくなかったが、予定を上回る成果を挙げたのは確かだろう。手応えだけはしっかり感じながら、無線でヘンドリックに連絡した。





 そのあとは、なんとか動くバイクを見つけたので、一気にグライダーの近くまで走った。


 グライダーは着陸したときと同じ様子でたたずんでいた。




 バーント・シエナ(油絵具の薄茶色)に塗られた機体と翼。ハイポリマー樹脂とカーボンファイバーで出来たハミングバードⅢは、砂漠を歩いて探さなければ見つからないだろう。打ち合わせどおり、交換用バッテリーがパラシュートで投下されているのを機体から100mくらい離れたところで見つけた。


 横田で散々練習させられたので、バッテリーの交換はなんなく終了。滑走に適した地面まで50mくらい機体を押していくのが堪えたけど、なんとか離陸できそうな平面が数百m長あるの地面にたどり着いた。




 実際、横田基地の訓練のほとんどはこの「離陸」だった。でこぼこの地面を走って離陸に持っていくのは相当難しい。でも、そんなことは言ってられないから、乗り込んで離陸の準備。すべての計器のチェックを終え、モーターを最高回転に持っていく。



 自然に機体が走り出した。




 200mも走らないうちにハミングバードはふわりと浮き上がった。




「やったー! 離陸成功っと。これ、ほんとにいい飛行機だなあ!」


                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           夜の帳(とばり)を下ろしたシリア砂漠には、満天の星が耀いていた。




「こりゃサン・テグジュペリの気分だな。やっぱりイタリアじゃなくてパリによって行こうっと!」







第12話 終わり



ゲリラの施設を襲い、これを殲滅。研究所を細菌、ウイルスと研究者もろとも地上から消し去ったのだから、僕の使命はこれでおしまい。



最初に襲った礼拝用テントの中をあさって、なんとか飲料水のボトルを見つけた。


無線のスイッチをONにして、ミッドウエーⅡのヘンドリックに迎えを寄越すように連絡しようとしたその時、遠くからヘリのエンジン音がしてきた。




(さすがヘンドリック。成果を衛星かなんかで確認したんで、僕が連絡する前に迎えのヘリを出したんだな)




 と一瞬そう思ったけど、よく考えたらミッドウエーⅡからこの砂漠の真ん中までヘリを飛ばせるわけがない。海岸線からちょっと侵入しただけで撃墜されちゃうだろう。




今回のミッションの計画書で、何回も確認していたのに・・・僕は自力であのグライダーまで戻り、飛んで海岸線まで出なければならないのだ。




「暑さで頭がぼーっとしてるんだろうなあ」


僕はヘルメットのゴーグルを下ろし、デジタル望遠鏡モードにして倍率を20倍にした。




どうやら僕が襲撃を開始してすぐの段階で、ゲリラの誰かが無線で仲間に連絡を取ったらしい。


こちらに向かってくるヘリは2機だった。


(こいつら、ヘリまで持ってるんだ。本拠地はデカイんだろうな)




しばらく見ていると、ヘリの様子が見えてきた。重武装したゲリラがそれぞれ10名くらいずつ乗っている。開け放たれた胴体から、機関銃の銃身が突き出しているのが分かった。




空から僕を撃ち殺そうってことらしい。でもそういうやり方は、軍隊が車両を使って移動している時に初めて意味、効果をもたらすものだろう。そういう攻撃は、ちょこまかと、それも超スピードで走り回る「ワンマンアーミー」には不適当だということがわかってない。まあ、そんな存在があることなど想像外だろうからしかたないか。


 ヘリは横田でもよく見かける、ブラックホーク、すなわちUH-60だった。

 よく見ると、機体に「NAVY」という文字と、米軍マークを消した跡が見えた。



(どこかで米軍から奪ったヘリなんだな)




 僕はヘリの高度があまり落ちないうちに始末する方がいいだろうと思ったので、穏剣10枚をベルトから出し、左手に握った。


100倍速にする。ヘリが肉眼で見えるくらいに近づいてきた。




エンジンを狙ってシュート! 





次の瞬間、完全なスローモーション映像が空中に展開された。




 コインはエンジンを破壊して貫通。ヘリを突き抜けた穏剣が変な方角に飛んでいくのと同時に、ヘリが爆発し始めた。




「ブワッ!」と機体が膨れ上がったと思ったら、そのまま爆発していろんなパーツに分かれて周辺に広がった。乗員はそのままゆっくり地面に落下してくる。



 ヘリのいた高度は低くて30mくらいだったから、中にはケガひとつ負わずに生き延びるゲリラもいるだろうなと思ったけど、それならそれでいい。


 僕は穏剣をもう1機に投げた。コントロールに失敗し、コックピットガラスを突き抜けた。それが操縦士を殺したらしく、ヘリは変な飛び方になった。横にいたゲリラが必死に操縦桿を操作しているらしいのが見えた。あまりにもスローな映像なのでリアルタイムに戻す。


 ふらふらと飛んでいたヘリがいきなり垂直に上昇した。



 次の瞬間空中で止まった。




(なんだ?)と思ったら、そのまままっすぐ機首を真上に向けたまま墜落した。グシャっと地面で潰れた瞬間、大爆発を起こして飛び散った。




高度は100mくらいから落ちたので、機体からこぼれ落ちたゲリラも生き残っていられないだろうな。

 


僕は慎重に最初に落としたヘリの方に歩いていった。案の定、銃撃が襲ってきた。



(3人は生き残っているんだ)




 僕は50倍速で走った。あっと言う間に彼らの脇に回り込む。一気に3人の頸を神威ではね飛ばす。


 あとは誰も生き残っていなかった。



(面倒だなあ。これじゃ次々にやってくるなあ)




 そう思いながら、座って休憩していた。5分くらいすると複数のエンジン音が聞こえてきた。




(来た来た)



 僕を見ている人がいたら、「悪魔のような微笑み」をしたと表現したかもしれない。




 ねそべって20倍のゴーグルでエンジン音の方角を見た。トラックの姿がまず見えた。それに先行して3台のジープ。これは米軍のを奪って使っているんだろう。それに今時珍しくサイドカー付きの大型バイクが1台。これが「敵の部隊」に対抗するために駆けつけてきた全部の車両隊なんだろう。ヘリが2機とも打ち落とされたのはわかっているはずだった。




 僕から500mくらい離れたところで自動車部隊は停止した。見ていると、トラックから降りてきた兵士は、ロケットランチャーを構えていた。



「こりゃまずいな」



 あれが近くで爆発すれば、僕はこなごなに吹っ飛ぶ。100倍速にした。500mを一気に走る。けっこう重装備なので、息が切れた。車両部隊の後ろの方で、しばらく休憩。




 ロケットランチャー部隊は4組いるようで、並んで僕が元いたあたりに狙いを定めている。ジープから降りた一人がその部隊のヘッドらしく、あれこれ周りの男たちに指示を出している。





 その男が手を振りおろした。ロケットランチャー4台が一斉に発射される。僕が寝そべっていた1機目のヘリのあたりで大爆発が起きる。




 リーダーらしき男が次の指令を発した。降り立った男は全部で28人。一斉に銃を撃ちながら爆発地点めがけて走り出した。




10分ほどして、ゆるみきった表情の男たちが戻ってきた。リーダーの男になにやら話している。



おそらく「敵はセンメツしました」とでも言っているんだろう。確かに死体が転がっているし、撃ち返してくる敵はそこにはいない。



しばらく男たちはあたりを探索していたが、なにも発見できないまま車両に乗り込んだ。そのまま走り出す。




(これで本拠地がわかるな)




僕は彼らが見えなくなってから、窪地から身を起こした。




「さて、追いかけるか」


 
車両部隊が到着した時間から考えると、距離は遠くて10kmくらいだろう。僕はタイヤの跡を踏みながら、ゆっくりと歩き出した。





 砂漠を徒歩で行くのはかなり消耗する。何度も水分補給しながら、休憩した。




「あーあ、帰りはパリでシャンパン飲みたいなあ」




 イタリアでうまい食事をして帰る、というのがシャンパンに変わったのは、ひとえにこの乾燥のせいだろうね。





(その⑨につづく)

 僕は1階の廊下に出た。ナップサックから、例の焼夷薬の小瓶を取り出す。


 マイクに送ってもらった100本のうち、20本ほどは地下練習場で試してみた。ものすごい威力だった。酸素ボンベを付けていたんだけど、燃え上がった瞬間、トンネルの半分くらいの酸素が一瞬にして無くなったような感じだった。


 僕は蓋を引き上げ、「焼夷」のモードにしてからタイマーをセットした。「3秒」だ。それを5本作る。


 3階に駆け上がり、1本をONにする。2階に2本。1階に戻り2本。リアルタイム感覚で3分くらい経過している。僕は外に出た。ジープのあるところまで走る。


 ジープに乗り込んだ時、あたりの色が変わった。オレンジに染まったのだ。

 建物は屋根を垂直に吹き上げ、そこからまっすぐ10mくらいの火柱が上がった。


と思ったら、一瞬で消えた。


 僕の背中側から、猛烈な風が吹いてきた。建物のあったところに向かって、あたりの空気が流れ込んだのだ。それだけの酸素が一瞬にして消費されたのだった。


(だれも生きていないだろうな。細菌も、ウイルスも、みんな燃えちまっただろう)


 そのとき、ズシーンと凄い地響きをたてて、ドーナツ状の地雷原がいっぺんに全部爆発した。


僕は急いでジープを走らせた。


(どういうことだ?)


 僕は遺跡から2㎞くらいのところ、すなわち地雷とセンサーの嵐の内側周辺をジープで回った。そして数百メートル向こうに何十人かの人間のものらしい残骸、肉の塊が散乱しているのを見つけた。


落ち着いて観察した。

大体分かった。


 その死骸のほとんどは研究所から逃げ出した研究員のものだろう。遺体の多くに白い衣服の破片がくっついている。彼らは僕の襲撃に驚き、慌てて逃げ出したと思われる。


前もって「ここを通れば安全」と教えられていたルートで、地雷原を横切ろうと走ったんだろうね。でも、安全なのは、「通常の時だけ」だと知らなかったんだろうな。


 マイクがこういって注意してくれた。


「いいかいダイ。この地雷原、センサーと連動してるんだ。近くを通ると、地雷そのものを踏まなくても爆発するようにセットされている。だけど、センサーを全部殺そうと考えるなよ。センサーの大元のロックをはずさないまま全部が切れたら、その瞬間に地雷全部が同時に爆発しちまう」


 センサー全部が切れる。そういう事態を巻き起こしたのは言うまでもなく、僕の仕掛けた焼夷薬の爆発的炎上、だろう。


 少しの間、僕はジープの運転席に座って呆然と真っ黒になった土の表面を見ていた。


 でも、すぐに我に返った。あることに気付いたからだ。


「あー! 食堂も燃やしちまったー。水が飲みたいよー!」


僕の喉は、声も出ないくらいカラカラに乾いていたんだ。



(その⑧につづく)


 僕は少し離れたところに止めてあったジープに近寄った。



運転席にモーゼルで被弾したと思われる男がうつぶせに倒れていた。神威でつつく。ビクンと動いたので、そのまま切っ先を体の中に滑り込ませた。


リアルタイムで人の体に神威を突き刺すのは初めてだった。抵抗感が相当大きい。スピード・アイの威力を改めて思い知る。



「ギャー!」という悲鳴を上げて男が転がり落ちた。

 僕は男を無視し、ジープの運転席に乗り込んだ。ヨコタ基地では僕が敷地内をジープで走り回わっても、だれも振り返りもしないくらい当たり前の光景になっている。遺跡まで走る。あっという間に着く。


 近くで見ると、壮麗な、美しい遺跡だった。コリント式の大理石の柱が2列、等間隔で立ち並び、その向こうにコロッセオを薄くしたような円形劇場があった。



 そのど真ん中に、鉄骨造の無粋な建物が建っている。3階建ての真四角な建物だ。どうやら外壁はALC(発砲気泡コンクリート)の板らしい。鉄骨はむき出しで、錆止め塗装もしてない。




(そうか、日本と違い、こっちじゃ雨が降らないから錆止めも必要じゃないのね)




 変なことに感心している場合じゃない。僕はモーゼルに新しいマガジンをセットし、左手に持った。神威は右腰の鞘に収めてある。ベルトから残った穏剣を全部出した。3枚あった。この穏剣もマガジンから新しい10枚をベルトのホルダーに入れた。


 100倍速のスピード・アイに切り替える。ゆっくり建物に近づく。


 20m。僕は手にした穏剣を投げた。次々と建物の外壁を突き破っていく。



 3枚を投げ終えた。建物内から機銃の掃射が始まった。


 弾幕が出てくるのは3階の窓からだった。


 僕はホルダーから穏剣を取り出し、その窓の少し下方に向けて投げた。ALCの外壁を貫通し、その向こうにいたゲリラが倒れ込むのが見えた。銃撃はそれきりだった。


 神威で入口のドアを切り裂く。アルミだと思ったけど、鉄板だった。三角形に切る。三角形の穴があく。覗き込む。誰もいない。


 僕は穴から手を入れてドアのロックを解除した。中に入る。低音でサイレンがずーっと鳴っている。この建物にいる人間は、僕の進入を全員が認識しているはずだった。それでも反撃に出てくる男が極端に少ない。



(そうか、戦闘員はみんな外にいたんだな。建物の中にいるのは研究関係者ってことか)



 僕は研究者も戦闘員も区別することは考えていなかった。自分たちの研究が何の目的なのか、作り出す細菌、ウイルスがどう使われるのか、それを知らないでここにいる研究者など、皆無であることはわかりきっていたからだ。

(見つけ次第、全員抹殺する!)


 僕は右手にモーゼルを持ち替え、左手に神威を握って建物の中を走った。


「うわ!」


 最初のドアを開けたら、すぐ向こうに男が二人立っていた。僕を見て悲鳴を上げた口に神威を突っ込んで跳ね上げた。男は顎から裂け目を作って頭蓋骨が両断された。その向こうに立つ男にはモーゼルを1発撃ちこむ。額に穴があいた。



 部屋の中には10人ほどの白衣の男たちがいた。いや、2人の女性研究者もいた。僕は走り回って全員の眼を水平に切った。10個の頭蓋が空中に飛び上がった。


 その隣の部屋に入る。いきなり1発撃たれた。100倍速だけど、よけきれなかった。弾は僕のヘルメットに当たった。「チン!」という衝撃ともつかぬ、軽い感覚があった。ヘルメットの表面を滑って行ったのだろう。僕は感心していた。


(へー! 被弾しても完全に実害がないという時には、超アイには切り替わらないんだー。頭いいんだなー、超アイって・・・)


 見ると、僕を撃ったのは白衣の女性研究者だった。凄い美女だ。僕は彼女に近づき、手に持ったままのグルックをもぎ取った。100倍速のスピード・アイでこういう動きをすることは少ない。女性は拳銃を強く握りしめていたらしく、手首の関節が両手とも外れて、ブランとぶら下がった。驚愕に見開かれつつある顔のど真ん中に神威を突き刺す。スッと頭の後ろに切先が抜けた。


 その部屋にいた人間を神威とモーゼルで殺した。しかし、肝心の「菌・ウイルス」培養施設にはまだたどり着いていないようだ。

(これじゃらちがあかないなあ)






(その⑦につづく)


僕は100倍速のまま男たちの間を走り抜けた。近くに体があれば水平にしたままの神威が両断していくが、わざわざ近寄って行って切るということはしなかった。一刻も早く研究施設にたどり着きたかったからだ。


あの「宿舎」を目指して走る。10mくらいのところに来た。ベルトから穏剣を出し、入口らしき金属ドアに投げる。障子紙を鉛筆で突き破るような音がして、穏剣は中に吸い込まれた。




低く悲鳴の合唱が聞こえてくる。穏剣が何人かの体を突き抜けたのかも。



僕は計10枚の穏剣を、ドアだけでなく窓ガラスや壁に向かって投げた。反対側の壁を突き抜けて飛び出してくる穏剣は2枚だけだった。何かを貫通し、何かの中で止まったのだろう。




中からの銃撃がやんだ。まだまだ生き残っているはずだ。僕は例のプラスチック爆弾を取り出し、ちぎって丸めた。信管を突き刺して3秒にセットする。それをナップサックに2個頬り込む。代わりにモーゼルを取り出す。20発入りのマガジンを装填する。さらに4本のマガジンをベルトに差す。




神威を左手に持ち、モーゼルを右手に持って建物の中に入った。1階の廊下には数人の武装兵士が倒れていた。僕はドアを次々に開けてモーゼルを撃ちこんでいく。人がいる部屋もあればだれもいない部屋もあった。




僕の姿を認め、銃口を向けようという動きを見せる男もいたが、100倍速で動く僕に狙いを定めることのできる者は皆無だ。撃ち殺したり、頸を刎ねた。



すぐに1階の全居室に生きている人間はいなくなった。




時間がかかるほど僕は不利になる。2階にもたくさんの人間がいる気配がする。階下の銃撃戦に慌てふためいて降りてこようとしているんだろう。




僕はナップサックから、さっき作った「プラスチック爆弾団子」を取り出した。階段に走る。手すりの下に貼りつけ、タイマーをON。3秒だけど、100倍速だから、300秒、つまりリアルタイムの感覚でいうと5分くらいの余裕がある。




 僕は外に出た。何人かのゲリラがいた。神威で切り捨てる。頸を刎ね、胴体を切り裂き、両手を切断する。少し離れたところにいる男たちはモーゼルで射殺。まわりにこちらを向いている男はいなくなった。立っているのは背を向けて逃げ出そうとしている者たちだけ。あとは地面に転がっているか、倒れつつある者だった。




 宿舎の周りを走る。窓がない。




 あった。北向きの面に一つだけ大きめのサッシ窓。僕は残った一個のプラスチック爆弾団子を取り出した。タイマーを1秒にセットし直してから、窓に投げつけた。柔らかいプラスチック爆弾だけど、窓ガラスは粉々に割れて中に飛び込んだ。




 先に爆発したのは窓から投げ込んだ方だった。少し遅れて階段に張り付けた方の爆弾も爆発。10mくらいしか離れてなかった僕は、爆風で地面にたたきつけられた。






「あーびっくりしたー! 凄い威力なんだなあ、プラスチック爆弾って・・・」




 あとで聞いたら、前回僕が使用したものの2倍の爆発力のものだった。マイク、そんなこと言ってたっけ?




 僕はリアルタイムに戻し、防ウイルスフィルターが壊れていないのを確認した。これが壊れちゃうと、これからの行動に支障が出るからね。




 宿舎は跡形もなく吹き飛んでいた。戦闘スーツは高性能だった。僕のまわりには、飛び散った宿舎の残骸の破片が散乱していた。




遺跡の方で動きがある。そりゃそうだろな。これだけ派手に襲撃されてるんだ。気が付かない方がおかしいよね。








(その⑥につづく)