「その服、クロスがとても似合ってるね」
百合子が肩から背中までが広く空いたワンピースを着ているから、
百合子の背中には普段は見せないクロスのとてもシンプルなタトゥーが目立っている。
十字の縦の線、次に横の線に沿って軽く撫でた。
「百合子のクロスを見ていると俺も何か彫りたくなるな。」
百合子はただ微笑んでいる。
「実はさ、このタトゥー、上司に見つかっちゃった」
百合子の笑顔が少し大きくなり、
いたずらっぽい表情に変わった。
「こちらへどうぞ。」
ソファの席へ案内された。
ジャズバンドとゆっくりとした曲の先に都心の夜景が広がっている。
百合子は相変わらずの微妙な笑顔。
昔は百合子のこういったところが全く理解できなかったのだけど、
最近は、ようやく判ってきた。
「ふーん。今度彼に会わせてね」
「え、うちの上司に?」
「そうだよ。」
百合子の笑顔がまた少し大きくなる。
僕の中の、彼女を見下す気持ちと彼女を欲する衝動が同時に徐々に大きくなってきている。
