あもる一人直木賞(第168回)選考会ー途中経過2ー | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

まだまだ先、とおもっていたらあっという間に本物の選考会の発表日がすぐそこに。

いやいや、まだ数日あるやん、とかお思いのあなた!

超重量級(重さ)の1作が残ってるんすよ。

・・ってまだ読んでないんかーい!とか言わない(青い顔)。

 

遊んでるヒマはないので、とっとと本題へGO!

 

→前回までの記事はこちら

 

 

今回の直木賞選考会、以下のとおり手に取った順で読んでみた。

 

(1)雫井脩介「クロコダイル・ティアーズ」(文芸春秋)

(2)千早茜「しろがねの葉」(新潮社)

(3)凪良(なぎら)ゆう「汝(なんじ)、星のごとく」(講談社)

(4)一穂ミチ「光のとこにいてね」(文芸春秋)

(5)小川哲「地図と拳(こぶし)」(集英社)

 

てなわけであもる一人直木賞選考会の結果を順次発表してまいります。

順位については読んだ時点でのもの。

次の記事以降で順位は上下していきます。

 

※全体的に作品の内容に詳しく触れています!!!(次回以降の記事も同様)

 

1位 千早茜「しろがねの葉」(新潮社)
2位 一穂ミチ「光のとこにいてね」(文芸春秋)

3位 雫井脩介「クロコダイル・ティアーズ」(文芸春秋)

4位 

5位 凪良(なぎら)ゆう「汝(なんじ)、星のごとく」(講談社)

 

◇◆

 

 

お名前は存じ上げており、ついでに話題になった作品(流浪の月)も買っていたのだが、積ん読」状態で本の山の中に埋もれさせたまま、今に至る。

ちゅーわけで、凪良さんは初めましての作家さんだったのだが、

とんでもねえもん読まされるんじゃないか!?

「そして、バトンは・・」系だったらすごく困る!!

と読んでもいないのに警戒心MAXで(多分、野生の嗅覚)、読み始めた。

 

その結果・・・

思ってたより読めた。よかった!

とんでもないもんじゃなくてよかったっす。

でも5位だけど。

(まだ1作残っているが5位で確定。未読ではあるが最後の小川さんがこの作品より下とは思えない)

いやいやまあまあ、この候補作の中では健闘したと思います。

でもこの作品で、あもちゃん、かなり足止め食らってたけど(笑)

(追記:おばちゃん、愛だの恋だの受け付けられなくなってきたのかも~・・と自身の加齢を嘆く。)

 

とりあえず一言言わせていただくならば、あれこれ詰め込みすぎ。ということ。

何か強制的に課せられたお題でもあったんですか?ってくらい、社会問題がてんこもり。

 

・女性の自立

・LGBT問題

・育児放棄

・毒親

・ヤングケアラー

・婚姻制度(同性婚や事実婚など)

・SNS炎上とマスコミ報道

 

・・などなど、ざっと思い出して挙げただけでもこんだけあった(被ってる部分もあるが)。

凪良さんとしては書きたいことがたくさんあったんだろう、と感じさせる熱量は理解できるものの、とにかく盛り込みすぎてだんだん読むのがめんどくさくなってきた(コラッ笑)。

ただ、上でも書いたが、けして「トンデモ作品」でもなかったので、まずは直木賞選考委員の先生方への顔見せで候補に挙げられたと思われる。

今後、お見知りおきを~的な。

・・でも今後もこんな感じの作品を書かれると、私がツライかもしれん。。。

 

内容は高校時代に知り合い、恋人になった2人の男女が生きた十数年間を、男と女のそれぞれの視点から交互に時系列で描かれている。

・・冷静と情熱のあいだ?

・・白夜行?(全然内容は違うが長い年月の話だったので)

とか思いました。

そう考えると、東野圭吾は好きな作家さんではないが(白夜行は好き)、白夜行ってよく練られた話だったんだな、と改めて思う。

 

1つ1つ丁寧に心理描写や情景描写、そのほか社会問題などあれこれ書いていて、うむうむなるほど、とは思うのだが、饒舌すぎてそれが不自然に映り、全体を見渡すとなんとなく全てが上滑りしちゃっているのがもったいない。

 

1つよかったのは、男性が女性とどういうカタチであってもいいから女性からの反応が欲しくて、女性が一番深く抉られる内容をわざとラインで送りつける、みたいなとこ。

そりゃおいしいご飯(女性からの甘い言葉や甘い反応)が食べれればいいに越したことはないけれど、ひどい飢餓状態(無視・無関心)であるから、クソまずかろうが食べられればなんでもいい(どんなカタチであれ反応がほしい)・・みたいな~。

ほぼストーカーの心理状態。

 

とりあえず1つ例を挙げたが、色々な社会問題について一事が万事全力100%で書いているので、抜け感がなく最初から最後まで疲れた。圧がつよいっっっ。

けして下手で読めない、というわけではないから、上手に要所要所で脱力する技術を身につけると格段に読める作品を書きそうな気もする。今が踏ん張りどころ!

(てなことを、ピアノレッスン(シューマン・ソナタ2番4楽章)で指摘されます笑

 もっとメリハリとコントラストを!と何度となく言われている・・・><)

この次の作品が凪良さんの作家人生の分水嶺となるかもしれない。

 

◇◆

 

 

最初、とにかく驚いたのが、

 

・女性の自立

・LGBT問題

・育児放棄

・毒親

・ヤングケアラー

 

などが書かれていたこと。

凪良さんの「汝(なんじ)、星のごとく」とモロかぶり。

何かお題でもあったんですか!?

と再び。

しかもしかも、主人公の女性2人の四半世紀の人生がそれぞれの視点から語られる・・って、

まさか構成とかも決められてたとか!?

と問いたくなった笑

 

ただ被っていたのはそういう細かいアイテムだけ。

作品は当然全く違う仕上がりで、あもちゃん、読後にそれはもうウットリとしちゃってねえ。

(追記:上記凪良作品で、愛だの恋だの受け付けられなくなってきたのかも~・・と自身の加齢を嘆いていた私だったが、そんなことなかったわ。作品がよければ絶賛受付中!)

一穂さんについては、以前の候補作を読んだ際に、評価の難しい作家さん、という印象で、

 

>作品そのものはまだまだではあるのだが、こういう重いテーマ(犯罪者と犯罪被害者家族との交流)を手のひらサイズ(まさにスモール)で扱って、こういう空気感で描く大胆さのある人なら、場合によっては危うさもなくはないが、もっと上手に描けるようになったらこれはひょっとして化けるかも!?と多少(笑)期待する気持ちが出ちゃったのも事実。

 

と書いたが、ひょっとして化けるかも!?の期待が実現した瞬間をこの目で見ることができて、私は幸せであった。

 

↓前回候補作時

 

そしてそして内容は

あまりにも境遇の違う2人の女性が、小学生時代に出会ってから25年の人生を描いた運命の愛の物語。

である。

百合の話といえば、私はしをんちゃんの「ののはな通信」を思い浮かべてしまうのだが、しをんちゃんの作品と比べても全く見劣りすることなく、ガッチリと手応えのあるいい作品であった。

 

↓おもしろいよ!

 

 

たまたまアイテムやら構成が似ているので、つい比較してしまうのだが、凪良さんのを読んでいると、交互に視点が変わっていくのも、は〜次は男性側か〜。とか思いながら読んでいたのだが(笑)、一穂さんの作品の場合

「早く答え合わせがしたい!」

とワクワクでページをめくっていった。

 

古びた団地で運命的な出会いをした二人の少女(結珠ちゃんと果音ちゃん)、お互いに惹かれ合うも突然別れることになる。

しかしそれから約10年後。再び出会う。

そしてまた突然別れることになるも、再び約10年後に出会うのだ。

 

・・・ってそんなアホな!って思うじゃないですか。

しかも結珠ちゃんは東京在住なのに、和歌山で再会、とかイタリア・フィレンツェのドゥオモでうんちゃら〜(「冷静と情熱のあいだ」)じゃあるまいし、そんなことあるかーい!って思うじゃないですか。

それが多少強引ではあるが、ちゃんと一応出会うべくして出会う必然性を用意してあって、しかも1回目の再会は果音ちゃんの、結珠ちゃんに対する激しい愛情が読者にも(そして結珠ちゃん自身にも)わかるようにしてあって、そういうところもちゃんと整えてあって良かった。

また随所に出てくるアイテム(白詰草とか防犯ブザーとか)も、厨二病を拗らせてる、とか読者が引かない程度にキーアイテムとして登場させている。

全体的にラノベっぽい、という印象を持つ人もいるかもしれないが、一穂さんはそこら辺のギリギリを攻めるのが上手だと思う。簡易な文章を用いながらも決して陳腐な表現にならず、愛情深い描写で作品全体が上滑りしないよう、細心の注意を払っているのがわかる。

 

たびたび出てくる、タイトルの「光のとこにいてね」はキラッと光るセリフで、さらにそれは章題にも関係してくる。

第1章 羽のところ

第2章 雨のところ

第3章 光のところ

途中まであまり章題を気にせず読んでいたのだが、第3章に入って

この章が最後か〜。光のところ・・・

羽のところで別れて雨のところで再会。

そして雨のところで別れて光のところで再会。

・・・光のとこにいてね・・・・ずっといてくれーーーーー!もう二人は離れないでいて〜!

と手に汗握りながら結珠ちゃんを応援しとりました。

(結珠ちゃんと果音ちゃんの二人が主人公とは書いたが、どっちかって〜と、結珠ちゃんが主人公比は高めなので。)

3歩歩くと忘れる鳥頭あもちゃん、章題って案外・・というか結構大事なポイント、作品の重要なヒントであり道標である、と度々思い知るも忘れ、今回また改めて思い知らされる。

 

また、パッヘルベルのカノン(いい曲だよ!)も度々出てくる。

果音ちゃんのカノンにもかけてあるが、カノンという音楽の形式にも関係していて、

カノンとは「一つのメロディを、複数のパートが追いかけるように演奏していく演奏様式」のことで、大好きな結珠ちゃんというメロディを追いかける果音ちゃん、の姿にもかけている。

なのにラストシーンは鼻血出しながら結珠ちゃんが、逃げる果音ちゃん(電車に乗ってます)を電車と並走して車で追いかけるの。鉄腕DASHかっっ><!

そのシーンはすごく滑稽なんだけど、すごく切なくて、でもやっぱりおかしい。

 

就寝前に布団に潜りながら読んでいたのだが、そんなラストを読む前に寝ることにした。

明日起きて最後、ゆっくり味わおう

と思いながら・・・

するとその日私は夢を見て、それはこの物語の続きだった(私の妄想ね)。

そしてその内容は(あんまり覚えてないけど)とてもツライもので、夢の中で私はわんわん泣いていて、起きた現実の私も泣いていた。枕、グッチョリ。

けれども上に書いたように、実際のラストは私の見た夢と全く違って(当たり前)

このラストをどう評価するか

が評価が分かれるところだと思う。

私は面白く読んだが、え~?と思う人の気持ちも、まあわからなくはない。

とりあえず睡眠薬飲んで起きた直後に運転(しかも爆走!)するのはやめといたほうがいいと思います(笑)

 

1つのメロディを追いかけるカノンだが、よくよく見ると結珠ちゃんの名前も意味ありげ。珠を結ぶ。

この作品、結末が書かれていないから、二人がこの先どうなるのか想像するしかないが、結珠ちゃんは五線譜の終止線のように、カノンを終止するのかもしれない。

まあそれはともかく、睡眠薬飲んで運転はしないほうが・・略

 

二人が愛を奏であい、お互いを思いやり、それぞれの胸の内を吐露したり隠したり、そのいじらしさは本当に可愛らしい。

異性同士だろうが同性同士だろうがお互いを思いやる愛情は尊い。

小学生ならではの感情、高校生ならではの感情、そして大人になったからこそわかるあれこれ。

そういうものもちゃんと描かれていて、愛情一本槍じゃなかったのも良かった。

それでも根底はお互いに思い合うってところもさらによし。

 

あとあと!作品後半にとっても可愛い子が出てくるの〜。

詳細は触れないでおくが、本当に可愛くてね!

しっかり者で正義感が強くて、賢くて、ちょっとお姉さん風吹かせる感じとかちょっと大人びた口の聞き方とか、リアル友兼ブログ友のsaryaの娘さんソックシ!!笑

作品の登場人物から実際の人物を想像することってあまりないのだが、この子が出てきて何かを話すたびに、sarya娘の声で脳内再生する私であった。ソックシ!!!

 

ちなみにこんな可愛い子ばかりじゃなく、クソ人物も多く登場するのだが、一番のクセモノは結珠ちゃんのママでしょうな。

これ、なかなかの人物。

このママさんをめぐる話は、ちょっと選考委員の中で評価が大きく割れそうな予感。

結局、ママさんのお相手の事件って大袈裟に書きすぎじゃないか?とか

クソすぎねえか、とか笑

こんなヤツおらんやろ、とか笑

あとは、実際問題として金持ちと結婚した出自のアヤシイママさん(後妻)、托卵なんかしたらそれがバレた時、離婚されたら困るんじゃないのかなあ・・。専業主婦だったみたいだし。

(バレないように用心してた、とかもあまりなかった。なんなら幼い結珠ちゃん連れて、愛人とウハウハしてたし・・。結珠ちゃんがパパにちくったら、この世の終わりだと思うんですが・・)

そこらへんがあまり用心ぶかく書かれてなかったのが、ちょっとマイナスかな〜

まあ、浮気は大胆にした方がバレないって言いますし・・パパは医者で忙しくてあまり家のこととか興味なかったみたいだし・・ということで見逃してみた。

 

(追記:などなど色々思うと、第三章の後半部分からラストに向けてがかなり粗い。テイストもちょっと変わるしね。特に結珠ちゃんママを問いつめるシーンなんかは厳しい意見が上がりそう。それでもやっぱり私はそういう欠点も含めてよかった、と判断したい!)

 

そしてこれは内容に絡む話ではないのだが、備忘録として。

このクソママ(笑)、幼い結珠ちゃんに

「ケンジさん(結珠ちゃんの兄)のお勉強の邪魔をしないように」

と注意するシーンがあるのだが、このセリフだけでこのママが後妻なのかな?と推測できるのがすごい。

日本ならでは?とも思う。

もし海外でもこの作品を販売するとしたら、このセリフだけで外国の方が推測できるような翻訳ってできるんだろうか。注意書きが入るとか!?・・それじゃ情緒なくなるよなあ。

翻訳家の腕の見せ所!?大変な職業だ・・。

 

 

ところで私、このサイン初版本を手にしておりました。

(候補作発表前に買っていたので)

初版本限定のスピンオフ・ショートーストーリーが挟まれていて、その話も本当にちょっとした内容ではあったけど、なかなか楽しめて、初版本買ってよかった~と思いました!

 

ただここまで褒めておいてアレなんですが、でもやっぱり千早さんの作品を思い出すと、あの作品以上、とは思えなかったりする。

さらに3位の雫井さんと2位の一穂さんの順位が入れ替わっても全く不思議じゃないとも思う。

雫井さんの作品の方が好き、という人もいるのはわかる。

ここまでくるともはや好み。

なのだが私、どっちも好きなんだよな〜。

完全に迷走しておりますが、とりあえずこの2作品はほぼ同順位ということでお願いします笑

 

というわけで、次回いよいよ結果発表です!