毎回毎回、ギッリギリ〜。
今度こそ間に合わないんじゃないかと思ってた、そこのあなた、そしてそこのきみ。
安心してください、読んでますよ。←とにかく明るい安村風に。
前回の記事はこちら→
しかもしかも聞いて聞いて〜朗報〜。
もう受賞作は決まってるの。私の中で。
こりゃ今回も(※妄想です)あもちゃんの真の実力を見せることになっちゃうのかな!?
みんなの期待を裏切っちゃうけどごめんなさいね。
あとは迷うことなくそのまま書くだけ。そう書くだけ。
という安心感から、つい3連休はぐうたらして、料理に励んだり(この度生まれて初めてパエリアを作り、これがもうビギナーズラックもあって超絶美味しくできた〜。私ったら天才〜。記事は後日アップ。見せたい!ウズウズ)しているうちに、3連休が終わってしもうた。
20日が本物の選考会受賞作の発表日だから、それまでに2回か3回に分けて記事を上げていきたいと思う。文章で遊んでる余裕があれば3回、切羽詰まれば次回で受賞作の発表です。
今回の直木賞選考会、特に読む順番も考えないまま、以下のとおり手に取った順で読んでみた。
(1)永井紗耶子「女人入眼(にょにんじゅげん)」(中央公論新社)
(2)深緑野分(ふかみどりのわき)「スタッフロール」(文芸春秋)
(3)呉勝浩「爆弾」(講談社)
(4)河﨑秋子「絞め殺しの樹」(小学館)
(5)窪美澄「夜に星を放つ」(文芸春秋)
ただ、最後だけは窪さんにしようと決めており、
どうせ私のことだから別の本読んだり遊んだりしてギリギリまで候補作を読まないに違いないから最後は短編で一気に読めるやつにしよう←帳尻合わせの天才
と思ったのであります笑
とは思ったものの、割と順調に読めていたのだが、中盤しばらく手が止まったので結果的にはそれでよかった。私、ナイス采配。
↓しばらくお休みしていた記事
てなわけで順次発表してまいります。
順位については読んだ時点でのもの。
次の記事以降で順位は上下していきます。
※一部、内容に詳しく触れている部分があります!!!
1位 永井紗耶子「女人入眼(にょにんじゅげん)」(中央公論新社)
2位 深緑野分(ふかみどりのわき)「スタッフロール」(文芸春秋)
3位
4位
5位
◇◆
初めましての作家さんだったのだが、なかなかどうして、大した力作であった。
しかも推しの一人である深緑さん押し退けて(言い方!)現時点で1位とかすご〜い。
表紙が童磨の血気術「寒烈の白姫」みた〜い、とか言ってホワホワしてすんませんでした。
こちらの作品、「鎌倉幕府最大の失策」と呼ばれる謎多き事件・大姫入内にまつわる政治的駆け引き、政治の実権をめぐる女たちの戦い、そしてわかり合えない母と娘の物語について描かれたものである。
現在放送中の三谷大河「鎌倉殿の13人」と時代がドンピシャなので、ドラマを見てなくてよかった(録画をあとから一気に見る予定)。
最初に大河をみていたら、小説内の北条政子が完全に小池栄子、頼朝が大泉洋で再生されそうだもの。
歴史小説に疎い私でも、鎌倉時代はかなり複雑で粗暴でシステマチックでもなくわかっていることも少ない、というイメージの時代である(戦国時代は粗野であってもルールもある程度あり、記録も残っているし割と明瞭な印象)。
そんな難しい時代に本作品は「京の六条殿に仕える女房・周子(ちかこ)」の視点から切り込んでいる。
歴史小説や時代小説には(にも)疎いので、そりゃツッコミどころも多々あるのかもしれないが、純粋な小説と読んだ時に全く違和感を覚えることなく、気鬱で儚い「大姫」の自殺を受け入れることができた。
北条政子の凄まじさや理不尽さも隅々まで余すことなく描かれておりました。
いや〜こういう人を上司にはしたくないわあ・・・><
圧がつよっっ。
ジャンルとしては時代小説ではあるのだが、親子の確執・毒親・母娘密着・・といった現代にも通じる話を取り入れているところが面白い。
京の貴族と鎌倉武士との政治的駆け引きや誰を神輿に乗せて国を造るか・・という生臭い政治的駆け引きも面白く描かれている。
京の六条殿に仕える才媛・周子は六条殿の差金で大姫入内を成功させるべく鎌倉入りするのだが、京と鎌倉の風習の違いなどから最初はウワァァ・・という感じだったのが、時間が経つにつれだんだん慣れていく描写も、気鬱な大姫とのイライラするようなやりとりも、非常に丁寧に欠けていて好印象。
大姫にイラ〜ッとさせられるのだが、これが実は・・・という感じもよくできていたなあ。
物語の大筋は全く複雑ではないのだが、この時代のメインイベント?を取り上げているため、大量の人物が出てくるため、複雑な構造でなかったことが功を奏していると思う。
こんな時代をあっちこっちからあれこれ書いていたら、読者が迷子になっちゃう。
そうでなくても、義高だの頼朝だの北条なんちゃらだの六条だの一条だの後鳥羽天皇だの上皇だの・・誰が政敵で誰が味方かゴッチャゴチャ。
「大仏は眼が入って初めて仏となるのです。男たちが戦で彫り上げた国の形に、玉眼を入れるのは、女人であろうと私は思うのですよ」
と周子に語った慈円(お坊さん)も、政治の実権をめぐる争いに背後から加担している一人。
いや〜怖いわ〜。
それはともかく、慈円のいう「玉眼を入れるのは女人」という立派な「大黒柱」を中心に、大変素晴らしい作品を描き上げたと思う。
結局、周子の健闘虚しく大姫は「死」という結末を迎えるのであるが、それ以後の話も最後まで「女人入眼」という柱から逸れることなく、ダレずにきっちりと描いていた。
北条政子は最後まで御台様であったし、周子は最後まで周子であった。
そして二人の絶妙な距離感と緊張感も最後まで納得のものであった。
京と鎌倉では戦い方が違う。
京では碁石をどう置くか、碁盤を挟んでひたすら碁石を並べて戦っているところに、突然蹴鞠の鞠を碁盤に蹴り込み石を無茶苦茶にしてしまう、そういう戦い方をするのが鎌倉だ。
と周子が悟るシーンがあるのだが、
なるほど、上手に例えるものだ・・
と感心。
きっと作者も我ながら上手いこと言った、と思ったのでしょうなあ(知らんけど)、その後、京に戻った周子が近江(親しい女房)と碁をうっていて、そこに女童の鞠が碁盤に飛び込んで碁石が無茶苦茶になるシーンが出てきた。
いや、もうそれ、前に言ってたし〜
悟る描写か、実際に起こる描写かどちらか一つにした方が・・・
とそこだけは心の中でツッコミました。
歴史小説に詳しくないから・・というのもあるのだろうが、その碁盤の描写以外で特に文句の付け所なしの作品であった。
◆◇
ああ〜〜〜。
私の推し作家の一人である深緑さんが、いきなりこんな位置に〜。
こんな位置に・・と残念な思いではあるが、なんというか言葉は悪いが期待はずれであった。
直木賞候補作となり私の度肝を抜いた傑作、『ベルリンは晴れているか』や『戦場のコックたち』には遠く及ばず。
いや、この2作より全体的にスッキリスリムで読みやすくなったのだが、いい意味で存在感の大きかったゴツゴツとした岩のような荒い描写が全くなくなった。それが非常に残念。
舞台はハリウッド映画の特撮の世界。
前半はアナログな特殊造形の世界に生きたマチルダ、後半ではその数十年後のロンドンでCGの世界でアニメーターとして生きるヴィヴィアンを主人公に据え、その二人を結びつける複雑数奇な運命を描いている。
映画に詳しい人は、特撮やCGが多く使われてきた戦後の映画作成の歴史も詳細に描かれているので(『2001年宇宙の旅』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』やらの懐かしい特撮映画の名前がたくさん挙がるし、実在のスピルバーグやルーカス、カーペンターやキューブリックなどの映画監督の特撮やCGへの取り組み、その歴史についてもかなりの頁を割いて描かれている)、そういう点では楽しめるんじゃなかろうか。
という感じで前半のマチルダの章もそこまで面白かったわけではないが、まあまあ楽しめた。
それが舞台が数十年後のロンドンに移った時から、全体的に登場人物全ての動き方の意味がわからなくなってしまった。
そんなに複雑な動き方しなくても最初からこうしていればよかったのでは・・・?
とかミステリー要素(とまではいかないけど)を少し入れたかったのか、そっちとのバランスがすごく悪かったように思う。
ヴィヴィアンが勝手なことばっかするんだわ〜。
そしてこれは仕方ないことでもあるのだが、CGやPC技術について説明をしないと前に進めないため、そちらに労力をだいぶ取られてしまっていて、肝心のストーリーが割と雑になっていた。
ヴィヴィアンがギフト(天賦の才)を持つがゆえの悩みを描くシーンなどはもう少しもっともっと読みたかった。
CGより特撮の方がよい、と豪語するヴィヴィアンの地元の映画マニアとヴィヴィアンが怒鳴り合いの大ゲンカをするシーンは面白かったけど笑
(なのにせっかくそのきっかけとなったお兄さんの存在が中途半端でそして消えていき残念)
ただただ、1つだけよかったことが!
選考会開始当初から懸念していた主人公や舞台を外国人・外国にすること。
これがこの作品ではすごく大事な意味をなしていた。
外国人の名前ってピンとこないじゃないですか。
だから、前半のマチルダの章で出てきた登場人物が、後半のヴィヴィアンの章で実はあの時の誰々が〜って感じでポロポロ再登場してくるのだが(映画世界って狭い〜。ま、どの業界も狭いんだけど)、外国人の名前のせいで最初からサラッと名乗られているのに、後からその正体がわかって、ええええ〜!これ、あの人だったのね!という驚きが日本人名であることより大きいと思いました!
・・・以上です。
ちょっと映画に詳しい人に読んでもらって、感想を聞かせてもらいたいところではあるが、深緑さん推しの私としては、元々の巨乳がさらにでっかくなるくらい期待をしていた分、いまいち感が否めませんでした。
というわけで次回に続く。