いつも「今回も(?)当たる気がする!」と言いながら外すまでが様式美だったが、今回は勝手が違って調子が狂うわ〜。
今回の記事でも最初に宣言しときます。
多分、外します。
というか絶対外します。
なぜならば、候補5作品全部がイイからーーーーー!!!!
きぇぇぇ〜。
嬉しい悲鳴。
てなわけで、引き続きあもる一人直木賞選考会(第163回)である。
ここまでのあもる一人直木賞(第163回)選考会の様子はこちら・・・
はい、お待たせしました!
前回の記事で「敢闘賞&技能賞、ついでに沢村賞」とお伝えした第5位の作品についてもお話ししますよー!
そんなわけで、今のところの順位は以下のとおりです。
※一部、内容に詳しく触れている部分があります。
なるべく深くは触れないようにはしたいと思いますが・・・
1位
2位 馳星周「少年と犬」(文芸春秋)
2位 遠田潤子「銀花の蔵」(新潮社)
2位 今村翔吾「じんかん」(講談社)
5位 敢闘賞&技能賞&沢村賞
澤田瞳子「能楽ものがたり 稚児桜(ちござくら)」(淡交社)
◇◆
何度も言うが、この5作品はどれもほとんど差はない。
澤田さんだけ5位にしたけれど、他の4作品と差があるから、というわけではなく、作風からいって直木賞を受賞することは難しいかもなあ。と思ったので5位にしただけ。
なんなら私はこの作品が一番好きと言ってもいい。欠点もあるけど私は好きだった。
前回の記事でやってみたあみだくじでは見事受賞してたし、ひょっとしてひょっとする!?
というわけで・・・
5位 敢闘賞&技能賞&沢村賞
澤田瞳子「能楽ものがたり 稚児桜(ちござくら)」(淡交社)
この作品は帯にもタイトルにもあるように、能の名曲からインスパイアされた8編のものがたりである。
の・・能ですか・・?
能って(も)詳しくないんだよなあ・・・
と思いながら本を開くと、下敷きとなった能の曲目が書いてあった。
その曲目を読むと、私が唯一知っているのは「葵上」・・のみ。
それ以外の7曲(「山姥」「小鍛冶」「花月」「国栖」「善知鳥(うとう)」「雲雀山」「班女」)は全く知らなくて、これって知らずに読んでも面白いのだろうか・・と思いながら、本を前に少し私は考えてみた。
どうこの本を楽しむのがベストなのか。
まず最初の1作品目は原曲を知らずに読んでみよう。まずはそこからだ。
というわけで、能「山姥」を下敷きにして描かれた「やま巡り」を読んでみた。
うーん、なんかよくわかんないし、はっきりいってこりゃつまらん。
しくじった。
よし、次の作品からはちゃんと原曲を調べてから読んでみるぞ。
・・とはいえ、私も忙しい中でノーギャラで(当たり前)、選考日当日に豪華な食事が出るわけでもなく、ただただ趣味でやっている苦行という名の選考会なもんですけえ、能なんかのんびり見てる場合じゃないんですよ。
てなわけで、ザックリあらすじを読みまして(いや〜良い時代になったもんだ。色々と能について説明しているサイトがたくさんあるのだ。ビバ!IT!)、なんとなく世界観を掴んでから、能「鍛冶」を下敷きにした第二作目「小鍛冶」を読んだ。
うん、おもしろい!!
能を下敷きにしたことで、ただシンプルに描かれた話にものすごく奥行きが出てくる。それってまさに能の世界という気がする。舞台転換があるわけでもなく、面をかぶった登場人物が舞台の上で謡って舞って、ただそれだけなのに無表情の面の向こうにある人物の内面(嫉妬や復讐や裏切り、恋慕や情感や理知など)について、見る側のこちらが各自で深く感じ入る。
この作品はそういう奥行きをこちらが自然と感じられるような作りになっている。
能を下敷きにして新しい能を描いている、そんな趣すらある。
能ってちょっと妖艶でありつつ、幽かにこわいところもあるじゃないですか。能の作品そのものもこわいんだけど舞台演出もちょっとこわくて、何よりほっそい目をした面がこわい(笑)
澤田さんのこの作品も、ほんのりこわさもちゃんと表現していて、こういう作品も書けるんだなあ、と感心しきりであった。
もう悪い予感しかしないんですけど〜〜〜〜〜!!!!とドキドキしながら読んだ作品もあり、これが本当にこわいの。シンプルな文章でシンプルな舞台設定だけに、その素朴に語られるこわさに本当に寒気を覚えた。湿気たっぷりの梅雨シーブンだけど。
どの作品もよかったが、一番よかったのはやはりタイトルの『稚児桜』であろうか。他の作品と比べてもちょっと高めの熱量も感じられて、そこがまたよかった。
澤田さんの過去にノミネートされた『火定』も大変よかったが、この能にインスパイアされて描いた小説、いう企画がすごくいいと思う。澤田さんの世界を広げることもできるし、澤田さんのよさがすごく生かされていたし、何より私が一番楽しんだ。ぜひこの企画、シリーズ化してほしい。そしたら私は全部読んでいきたい。その際は下敷きにされた能楽も一緒にざっくり勉強しなきゃ、なんですが。そんな手間なんてなんのその、ぜひぜひ続き(?)が読みたい!!
しかしこの作品を出している出版社「淡交社」っていうの?勉強不足で誠に申し訳ないのだが全く聞いたことなくて、どこの出版社やねん、と調べますれば「京都の茶道美術図書出版 淡交社」とありました・・ようそんなとこが澤田さんに執筆を依頼しましたなあ・・
この企画を通して澤田さんに依頼した担当者!!ナイスやで!!
そんなこんなでめちゃくちゃ褒めちぎっているのに5位なんかーい!という声が聞こえてきそうなので、最後にちゃんと説明したいと思う。
直木賞選考うんぬんはともかく私はこの作品が好きだった。
ただ〜
直木賞選考委員の浅田次郎先生の口からよく出る「わかりやすい」というお言葉。
その点においてはこの作品は正直、わかりにくいんじゃないかなあ、と思う。能なんてたっかい金出して見に行くものであって、家でゴロゴロYouTubeで見るようなもんじゃないからなあ。
見てもいいのだが、正直私も家でゴロゴロ能楽はみない(笑)
お金を出すからこそちゃんと見るのであって、家で見てもなあ・・
音楽やら映画が定額(もしくは無料)で見放題の今、これからの時代はお金を払うからこそ、という内容に価値がでるようになるかもしれませんなあ。
その話はこの辺にしときまして、この作品はどうしても読むにあたって前段階で、ほんのちょっとでいいから能楽を知っておきたいところ。その下準備としての手間を選考委員がどう判断するか、が見物でもあり、多分それをよしとしなさそうだな〜と判断して5位としたのである。
だからこそ、今まで登場したことのなかった「敢闘賞&技能賞&沢村賞」という賞をいきなり乱発したのであります。相撲も野球もごっちゃやで。
あとは上記で少し触れたが「悪い予感しかしないんですけどーーーー!!!!!」と思いながら、寒々とした空気にビクビクと読み進める・・という作品がありまして、そのビクビクの薄ら寒さが次の作品でも同じような世界観になっていて、パターン化してしまうのは仕方ないにしてもちょっと似過ぎなんじゃ・・?と思ったのがマイナス1点。せめて1作品別のものを挟むとかしたらよかったかもしれない。
2位 今村翔吾「じんかん」(講談社)
前回の「童の神」(別名:妖怪大戦争)から随分とうまくなったなあ!という印象。北方のおじきが推すわけだ。
時は戦国時代、悪名高き松永久秀の一生を描いた作品である。
とにかく前半部分が圧巻!!
松永久秀が誰かがわからないってところがいい(笑)
正体不明の子供が多過ぎて、この中の誰かが松永久秀なんだろうなあ・・と思わせるのがおもしろい。
浮浪者の子供ばかりで結成した盗賊集団のリーダー「多聞丸」を筆頭に、子供たちがあれやこれやの手を使って盗み、そして人を殺していく。そうしないと自分たちが生きていけない。毎日が死ぬか生きるかの二択であった。
そんな日々が突然終わる・・・その描写がすばらしかった。今までピーカンだった空に急に暗雲たちこめてくる感じ。長調の楽しいメロディーが流れていたのに突然短調に転調する感じ。
生き残った彼らのうちの一人が松永久秀となり、戦国時代にキラ星のごとく登場していくわけだが、そこに至るまでの色々なできごともよかったし、あの分厚さでよくあのエネルギーと情熱を保ったまま、ラストまで描き続けたなあ、と拍手を送りたかった。
これはひょっとしてこの作品が獲っちゃうんじゃないの!?
それでも全然文句ナシだよ〜。すごくおもしろいもん・・と思ってラスト直前まできたのだ。
ただ〜モンクイストあもちゃんはやっぱり一言言いたい。
ラストの東大寺の件と城に立てこもる久秀と信長とのゴタゴタ、もう少しわかりやすく、濃密に描けなかったものだろうか・・信長が超絶無能に見えるんですけど・・何をそんなに揉めてんのかこちら側まで詳細が伝わってこず〜。
今まで実に丁寧に描いていたものだから、この久秀と今までの久秀、本当に同じ人物?と戸惑ってしまいました〜。
あと自分の息子に母親の出自を秘密にしている箇所ね、あそこがとにかく弱かった。秘密にするほどのことでもないし、いっくらでも取り繕えそうなんですけど。嘘も方便やで!!それでもお前は生き馬の目を抜く戦国時代に生きる武士か!史実なんて曖昧な箇所が多いのだからいっくらでもうまいことつじつまが合うようなエピソードが描けそうなんだけどなあ。盛り過ぎてもアレだけど・・。
久秀が自分の人生について語るのではなく、信長の口から語る、という設定はなかなかおもしろかった。信長饒舌〜。しかも記憶力がはんぱない。歴史から見ても信長は久秀を相当買ってたっぽいしね。久秀の濃密な人生経験をおもしろがって聞いたんだろうなあ・・と思うと、隅々まで他人の人生や出来事について覚えていることにさほど疑問は覚えなかった。
でもまあ、2位なんですが。
この作品が獲ってもおかしくないと思っていたのが、苦言を呈す選考委員がいるんじゃないかな〜と思ったことがありまして。
この作品を読んでいるとき、ちょうどアメブロで1冊無料で漫画が読める、という期間があったので世間で話題になってる「鬼滅の刃」とやらの第1巻を読んでみたのだ。今更?
話題になるだけあっておもしろかった。続きがよみたーい!
でふと思った。
なんか今読んでる今村さんの作品、漫画っぽいな・・って。
あ〜一旦そう感じちゃうと、もうダメだ〜選考委員の誰かにそう言われちゃうかもしれない!と思いまして、別に漫画っぽいから何が悪いんだ!とも思うが、じゃあ小説じゃなくて漫画でええやないか、と言われちゃいますし、小説なんだから小説らしさってのが欲しいよね・・と言われればそうですね、と言うしかないわけなのであります。
でもでも前半のあの「多聞丸」たちの色々なシーンはよかったよ〜。しかも前回の記事で触れたが、たまたま偶然、「多聞」が2人・・というか1人と1匹がそれぞれの作品に登場。なんという偶然だろうか。多聞つながりでこれら2作品のW受賞があり得るか(笑)!?
さ!いよいよ次回、最終順位の発表です!!
予定どおり、あの作品が1位になるのか!?
はたまた、大逆転劇が見られるのか!?
次回をお楽しみに〜。
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