5月下旬、「コクーン歌舞伎 第十六弾 切られの与三」(in シアターコクーン)を観に行く。

 

 

いつものシアターコクーンの入り口が歌舞伎調。

 

この日は大変暑かったため半袖で出かけたのだが、シアターコクーン内が異常に冷えてて(多分着物のお客様対策?)死ぬかと思いました。

あの暑がりの汗かき夫に

「あと1時間長かったら、凍え死んでたかも・・」

と言わしめたほどであった。

夏の観劇は上着必須、ということを思いだした私でありました・・・

ついつい季節の始まりは忘れてしまう。

 

そんなこんなでコクーン歌舞伎開演のお時間です!

 

◇◆

 

 

(あらすじ) ※HPより

江戸の大店の息子、与三郎は木更津の浜で美しいお富と出会い、互いに一目で恋に落ちる。しかし、お富は囲われ者、逢瀬の現場を押さえられ、与三郎は顔も身体もめった斬りにされ、お富は海へ飛び込んでしまう……。

3年後、お富は溺れた自分を助けてくれた男の世話になっている。そこへ蝙蝠安と強請に来たのは、刀傷を売りにする小悪党に変貌した与三郎だった。

一度は夫婦になるものの、またまた引き裂かれてしまう二人。ふとした恋が運命を狂わせていく、その先は……。

与三郎に中村七之助、お富にコクーン歌舞伎初出演の中村梅枝という清心な配役で、同じく初出演となる中村萬太郎に、コクーン歌舞伎を支えてきた片岡亀蔵、笹野高史、そして中村扇雀の出演により、名作『与話情浮名横櫛』の真実の姿を浮き彫りにする、コクーン歌舞伎、待望の最新作、『切られの与三』が幕を開けます!

 

切られの与三(きられのよさ) 

瀬川如皐 作 「与話情浮名横櫛」より

木ノ下裕一 補綴

串田和美 演出・美術

 

出演

与三郎     ・・中村 七之助

お富        ・・中村 梅枝

伊豆屋与五郎 ・・ 中村 萬太郎

下男忠助    ・・笹野 高史

赤間源左衛門 ・・真那胡 敬二

おつる      ・・中村 鶴松

小笹       ・・中村 歌女之丞

海松杭の松五郎/藤八 ・・片岡 亀蔵

和泉屋多左衛門/観音久次 ・・中村 扇雀

 

◆◇

 

コクーン歌舞伎はこれで何度か見ているが 

 →参考記事「天日坊 +(「ヒカリエでパンを」)

      「コクーン歌舞伎 佐倉義民傳

      「コクーン歌舞伎 第十五弾 四谷怪談

 

いや~「佐倉義民傳」はよかった。

もちろんほかの作品もよかったんだけど、佐倉義民傳は特によかった。今、読み返して思いだしても泣ける。私ったらいい記事書いてるわ笑

 

ここでコクーン歌舞伎について簡単に説明。
コクーン歌舞伎とは
東京・渋谷のBunkamura内の劇場、シアターコクーンで行われる歌舞伎公演であり、古典歌舞伎の演目を新たな演出で上演する公演である。
1994年5月、あもちゃん永遠の恋人中村勘三郎(当時は勘九郎)、中村橋之助らが『東海道四谷怪談』を上演したのが始まりである。

乱暴にかつ簡単に言えば、
歌舞伎を現代風にアレンジした歌舞伎、それがコクーン歌舞伎、

である。

 

そしてこのたび、佐倉義民傳でも大変よい演技を見せてくれた七之助がコクーン歌舞伎の主役を張り、しかも私の心の恋人中村扇雀さんも出るというのだから行かない理由がありませぬ。

 

もともとの原作である瀬川如皐の「与話情浮名横櫛」は歌舞伎役者が口を揃えて「あまりおもしろい作品じゃないよ」というものらしく、しかもめちゃくちゃ長くて初演の時ですら全部はやらなかったらしい。

それを演出家の串田さんと補綴の木ノ下裕一さんが削るところは大胆にカット、手を入れるところは思い切り手を入れたことで、大変スマートでとてもわかりやすいいい作品に仕上がっていた(ちなみに私が感動した「佐倉義民傳」を最初に劇化したのもこの瀬川如皐。)

 

とにかく扇雀さんがよかった〜☆

扇雀ラブのあもちゃんも大満足であった。

(記事は書いてないが(いつか書くかも?)、数年前に見た野田秀樹の「足跡姫」に扇雀さんが出ていると聞き、ウッキウキで観に行ったのに、ものすごくもったいない使われ方をされていて、残念に思ったことが今でも苦い想い出として深く記憶に残っている。)

 

物語は序盤、私の苦手なハラハラドキドキの展開で、七之助演じる与三が田舎のゴロツキに死なない程度に痛めつけられて、目はつぶされるわ、顔も体も切り刻まれるわ・・のシーンは思わず顔を手で覆ってしまいました・・みてられなーい。ひーん。

その怖さはまるでアウトレイジのようであった・・って、顔を覆ってばかりでほとんど見てない映画だが(笑)

 

与三はなんとか命だけは取り留めたものの、家には帰りづらいし(こんな容貌だし、もともと養子だし)、だからといってこんな顔じゃどうやって生きていくのか。

そんなところに小悪党がやってきて、仲間になって強請りで儲けようぜ〜と話しをもちかける。

その後はまるで絵に描いたような転落人生。

 

そんな与三だったが、一度だけ好いた女・お富と暮らせた幸せな時期があった。

だがもともと頭の緩いお富と、もともとボンボンの与三は「生活」する能力が極端に低く、あっという間にお金(ちなみにこのお金もほぼ犯罪で稼いだもの)が底を尽き、また犯罪に手を染めることになる・・・なんちゅー刹那的な。

 

この物語のネックは言うまでもなくこのお富である。

与三が切り刻まれた原因も元を正せば、ゴロツキ親分の愛妾だったこのお富と密会していたのがバレたからである。

与三が人目を忍んでお富の部屋でいちゃこらやっているところに、ゴロツキどもが登場するシーンがそれはそれはすばらしく、それはそれはおっとろしかった。

家具の一部だと思われていた柱や障子の向こうから、一斉に逆光が客席に向かって照らされ、ゴロツキ集団たちの影が映し出されたのである。こわかったっす〜。

 

で、話は戻って与三の傷の原因となったこのお富がなかなかの人物でねえ。

 

お金がないわ〜→ちょっとあんた強盗でもしてきたら〜?

あの人邪魔だわ〜→どうせ殺すなら一人も二人も同じでしょ?

 

みたいなノリで与三を唆すのである。

一方の与三もただの優男で自力で立ったことのないボンボンなもんですから、自分の生きるべき道をビシッと決められず、お富に言われるがままに犯罪に手を染めていく。

お富に全く悪気がないところが一層タチが悪い。でも美しいのだ。

お富みたいな女性、関わりたくはないが多分こういう人いるんだろうな〜しかもきっと魅力的なんだろうな〜とは思うのでありました。

(ちなみに与三みたいな男もいそう。自分で決められず奥さんに決めてもらっちゃうとか)

しかもお富はお富で1人じゃ生きていけないため、与三と離れるたびに男が変わる始末・・・。美人なもんでピンチになると別の男が都合良く助けてくれるんだ。結局美人ってトクね。ニギギ。

 

最終的には島流しされるところまで堕ちてしまった与三。

こんな人生はもういやだ、と島抜けしようと決断する。誰に流されるでもない、自分で初めて決めた行動である。

嵐の日、断崖絶壁に向かって失踪する与三に向かってくる岩や風を人間が演じていて、それを跳び箱のように飛び抜けていく演出は、まさに歌舞伎って感じですばらしかった。

形式美ってまるでアート。型を演じる七之助の美しさは一瞬、勘三郎に見えました。私の見間違いだろうか・・・ゴシゴシ(つд⊂)

 

最後は江戸の街がとーっても小さく見えたところで、きれいな顔の七之助が心の言葉を吐露していたから、きっと与三は死んだのだと思う。

あの海辺でたくさんの傷を負ったあの日から、ず〜っと疾走しつづけていた与三郎。ようやくほっと一息ついて少しだけ幸せそうでもありました。

(原作は、傷も癒えてメデタシメデタシ、になるらしい。まさに貴種流離譚。)

 

お富のことを結局のところ愛していたのか、与三郎自身も計りかねるところではあると思う。ただただ

「しがねえ恋の情けが仇」

だったのだ。

 

この作品、私以上に汗かき夫が感銘を受けておりました笑

いや、私もとても感銘を受けた!扇雀さん、相変わらずよかったわ。マジ卍。←言いたいだけ。

和泉屋多左衛門も、まるで真逆の観音久次もとてもよかった。

もともと上品な方だからか、とくに和泉屋多左衛門の堂々たる紳士っぷりがキマっていた。

 

また音楽もとてもよくて、舞台袖の左右にピアノ、ドラムセット、古典楽器、効果音等の機具が置いてあって生の音を楽しめて、わたしゃ特にピアノに釘付けであった。

2階席だったので、ピアニストの指さばきがよく見えて参考になりました←脅威の視力!

 

今回、中村勘九郎がいなかったが次回のコクーン歌舞伎ではぜひお姿拝見したいものである。

そしてその際はまた、扇雀さんもご一緒にお願いしたい!