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異邦人(いりびと) (PHP文芸文庫)
907円
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(あらすじ)※Amazonより
一枚の絵が、ふたりの止まった時間を動かし始める。
たかむら画廊の青年専務・篁一輝(たかむら・かずき)と結婚した有吉美術館の副館長・菜穂は、出産を控えて東京を離れ、京都に長期逗留していた。妊婦としての生活に鬱々とする菜穂だったが、気分転換に出かけた老舗の画廊で、一枚の絵に心を奪われる。画廊の奥で、強い磁力を放つその絵を描いたのは、まだ無名の若き女性画家。深く、冷たい瞳を持つ彼女は、声を失くしていた――。
京都の移ろう四季を背景に描かれる、若き画家の才能をめぐる人々の「業」。
『楽園のカンヴァス』の著者、新境地の衝撃作。
※後半、ネタバレします。
◇◆
1人の女性日本画家の才能と「美」をめぐる人々の隆盛と凋落を艶やかに描く。
と帯に書いてあり、そこへ1組の夫婦が登場&京都が舞台・・ということで、まず脳裏に浮かんだのは谷崎潤一郎の「卍」であった。
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卍
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卍(まんじ) (1956年) (河出文庫)
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卍(まんじ) [DVD]
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卍 まんじ [Blu-ray]
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三角そして四角関係、なんでもありの、もうむちゃくちゃ(笑)
映画は見てないけど、小説は超絶おもしろいです。
→青空文庫『卍(まんじ)』
そんなむちゃくちゃな小説「卍」を意識しながら読み始めたら、全然「卍」関係なかった(笑)
その代わり、というのも変だが、著者によると川端康成の『古都』を意識してるとのこと。
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古都 (新潮文庫)
562円
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最後まで読んでその「意識した」と言っている意味がよ〜くわかった。
どんでん返し(?)的なところに、この『古都』のあらすじが絡んでくるのである。
いや〜『古都』を意識している、ということを作品を読んだあとで知ってよかった〜。
ほかに『古都』を意識していると思われるのが、目次である。
『古都』は全9章からなり、「春の花」「尼寺と格子」「きものの町」は春、「北山杉」「祇園祭」は夏、「秋の色」「松のみどり」「秋深い姉妹」は秋、「冬の花」は冬、といったように京都の四季を背景に物語が進行する。(wikiより)
それに呼応するように「異邦人」では
「青葉萌ゆ」・・「葵のあと」「花腐す雨」・・「送り火」「蛍」「残暑」・・「紅葉散る」「氷雨」
23章もあるので一部省略したが、このように四季を背景に物語が進行しているところは『古都』とそっくりである。
川端康成「文化勲章の記者会見にて」
古い都の中でも次第になくなってゆくもの、それを書いておきたいのです。京都はよく来ますが、名所旧蹟を外からなでていくだけ。内部の生活は何も知らなかったようなものです—
と川端康成は言っているが、この作品でも主人公の菜穂が東京暮らしから京都に避難(3.11の原発の放射能から・・)し、京都の深い生活に入り込み、魅せられていく様子が描かれている。
そんなこんなで『古都』を意識しているのはよ〜くわかった。
そこで肝心の内容についてだが、正直おもしろくなかった。
原田マハさん、「楽園のカンヴァス」「ジヴェルニーの食卓」「暗幕のゲルニカ」と秀作が多い中、最近読んだ作品で外れが続く〜。
→参考記事『本日は、お日柄もよく』
とにかく登場人物が「クソ」ばっか(笑)
主人公の菜穂は、親がお金持ちのただ芸術の選球眼が優れているだけお嬢さんの道楽話って感じだし(ただ、後半に出てくる衝撃事実で、人の金で暮らしているわがままお嬢さんではなく、実際ご本人が持てる者であったことがわかり、とりあえずギリギリ納得はできた)
菜穂のご主人は、自分の会社(二代目ボンボン)の危機に、嫁さん(菜穂)の実家の金を引きだすために、もともと自分に好意を寄せていた菜穂の母親と寝ちゃうし←気色悪っっっ
そんなわけで菜穂の母親もクソで、自分のやったことをペラペラ話した挙句、菜穂が戻ってこないのはあんたのせいだ、とか婿をなじるし、なんかモヤモヤした。
あとモヤったことがもう一つ。
東日本大震災で原発事故があった際に、妊娠していた菜穂はすぐ京都に避難し、東京は荒んでいてそのまま京都にずるずる住み続ける・・みたいな記述がそこここに描かれていたのだが、実際私も3.11の時東京にいて、その後も輪番停電に巻き込まれるわ、電車は動かないわ、で大変だったのだが、東京の空気(実際の空気じゃなくて世間の感じ)ってそんなに荒んでたかな。
みんなで頑張ろうっていう空気感が気持ち悪い、流れるACの広告が気持ち悪い、的な描写もあったのだが、そうだったかな?
私ら庶民はとにかく日々を過ごすのが精一杯で、そんなこと考えるヒマなかったけどなあ。
満員電車で死にかけるとか、近所のスーパーが戦後の闇市状態、とかならあったけど・・
当時の記事・・
→『地震〜あもちゃんは無事です〜』『地震〜その後〜』『せつでんこちゃん。』
全く緊迫感がない・・ま、これは私の性格という個人の問題であろう。
私がボンヤリしているのはともかくとして、主人公の菜穂は息苦しい世間の空気と放射能汚染から逃れるべく、京都に避難していた。
さすが金持ち、やることも、意識も違いますわなあ・・→嫌み。
戦後の闇市状態のスーパーに紙製品を買いに走ることもしないんでしょうし。←嫌み。
そんな妻に対する夫の一輝もこれまたウネウネしていて頼りなくてイライラした〜。
最初はわがまま放題の嫁をもらったことに同情していたが、嫁の母と関係を持つあたりからううーむ、となり、そして見当違いのことで妻の浮気を責め立てたところで、
あか〜ん、バカすぎる・・
と泣けてきた(笑)
こんなボンクラだと、父の豪腕一流の画廊にのし上がった「たかむら画廊」を近いうち潰しちゃうね〜と思ったら、つぶれる予感を匂わせて物語は終わった。
そして最後に余計な事実も発覚してしまった〜。
実は菜穂の妹であることがわかった若き女性画家。
彼女が言葉を話すことができないのは、実は幼い頃に実の父親を養父に殺された(と想像できる)ことが原因だった!
・・・え〜〜〜〜〜・・・そんな蛇足いらんって〜。
その他にも菜穂の出生の秘密、とか次から次へと衝撃的な事実が発覚するのだが、それが私を大いに興ざめさせた。大映ドラマじゃないんだからさ〜。
あれはあれでおもしろかったからいいのだが、読者はそういうつもりで読んでないんだから!
芸術至上主義の女性を描きたかった、という原田マハさんだったが、確かに芸術を愛していて、そのためなら金に糸目はつけないし、親や夫ですら蹴散らしていく、という女性ではあったが、絵を見る目はあっても、夫を見る目ゼロという事実だけがそこに浮かび上がる。
わがままだろうがなんだろうが、もう少し愛される主人公でいてほしかったなあ。私に愛されたくなんてないだろうけども。
肉親の愛憎まみれたドロドロドラマ、として読むならそこそこ読める。
完成度の高い小説、として読むならちょっと・・というものであった。
ただ一つよかったことを最後にメモしておきたい。
私が今まで読んできた原田さんの作品(芸術をテーマにした)、モネだのピカソだの西洋美術が多かったのだが、初めて日本画家、しかも架空の画家をとりあげていて、それは新たな試みだな、と原田マハさんのチャレンジに賞賛を送りたいと思う。



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