あもる一人直木賞(第158回)選考会ー結果発表・総括ー | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

勝ちたいんや!

 

 

いつしかこれが定番の台詞になっていた、あもる一人直木賞選考会。

しかしこの台詞を使うのも、今回が最後になるかもしれません。

 

闘将仙一、死す!!!

 

あれほどエネルギッシュで、鉄拳制裁でおなじみ(?)のパワーあふれる人がいざ逝くとなると本当にあっけないものである。

訃報を聞いた時は、闘病してたことすら知らなかったため、腰が抜ける程びっくりした。

 

あもる一人直木賞選考会と全く関係ない星野仙一氏ではあったが、その名台詞は本当に使い勝手がよく、大変お世話になった。

闘将仙一の在りし日を偲びながら、このあもる一人直木賞選考会の結果発表と参りたい。

 

ちなみに闘将仙一の在りし日といえばあの日しかない。

宇野選手の頭ぽ〜ん、からの〜グラブを地面に叩き付ける仙一。→通称:宇野ヘディング事件

・・いつ思いだしても、元気になれる面白映像(笑)

闘将仙一の在りし日、というより、宇野選手メイン・・・

 

とりあえず仙一の話は一旦置いときまして、気づけば本物の直木賞発表はもう明日(16日)。

まずはその前に、あもる一人直木賞(第158回)の受賞作発表で予習をしておいてください!
 →第158回の選考会の様子はこちら・・

あもる一人直木賞(第158回)選考会ースタートー

あもる一人直木賞(第158回)選考会ー途中経過1ー

あもる一人直木賞(第158回)選考会ー途中経過2ー

 

今回は生理的に受け付けない〜という作品がなかったせいか、順調に読み進みあっという間に読了いたしました。

そしてあまり迷うことなく、受賞作を決定することができた。

(のわりにノロノロウダウダしていて記事アップが遅れる体たらく。)

自分で言うのもなんだが、わりとこの直木賞に関しては攻めの姿勢のあもちゃん、気でも触れたか、と言われたり言われなかったりするような(どっちだ)候補作を選びがちなのだが、今回は結局これしかないのかな、という結論に辿り着きましたよ、と。

 

ささ、さくっと発表してしまおう。

それではあもる一人直木賞選考会(第158回)の受賞作品の発表です!!!!!


はいっっ!ドラムロール、スタ~ト!!!!


ドロドロドロドロドロ~~~~~~



ジャン!!!

 

 

▽門井慶喜「銀河鉄道の父」(講談社)

 

です!!

 

 

おめでとうございま〜〜〜〜〜〜す!!!!

 

門井さん、3回目のノミネートからの受賞、本当におめでとうございます!!

この結果にきっと直木賞ファンの方も、そうでありましょう、と納得の結果ではないでしょうか。

 

思えば初めてのノミネート作品はこの結果を見据えてのノミネートだったのであろう。

 

 

第153回直木賞候補作。初ノミネート作品。

何ちゅう作品を読ませてくれとんのや!とゲキオコあもちゃんであったが、この後の作品で劇的な進化を遂げた門井さん。

 

 

 

第155回直木賞候補作。

惜しくもあもる一人直木賞2位!

 →参考記事『あもる一人直木賞(第155回)選考会ー結果発表・統括ー

 

回を追うごとに確実に力をつけていることと同時に注目したいのは、そういう力作をコンスタントに世の中に発表してきているということである。これはとても高く評価したいところ。

そして今回、とうとう直木賞に値する良作を発表することができたのである。

このことにきっと誰より一番ホッとしているのは、直木賞選考委員の諸先生方でありましょう。

何回か候補に挙がった方の作品がさほどふるわなかったら、話題のセカオワのサオリも視野に入れないといけなくなるからである。

いやいや視野に入れてもいいのだが、それならそれでもう荒れると思うわ〜。いろんな意味で。

私としてはそんな荒野も見てはみたいが、なんだかんだで落ち着くとこに落ち着いたという結果にホッとしているのも事実。

 

そんな私と同様、きっと安堵に胸をなでおろしているであろう文学界の重鎮らによる本物の選考会の様子をいつものように私が妄想してみたい。

 

まず

▽伊吹有喜「彼方(かなた)の友へ」(実業之日本社)

が落ちるであろう。

 

前回の初ノミネート作品が(私に)好評だっただけに、この結果は残念である。

ただ、工夫して手を入れると朝ドラとかアニメとかでこの作品が生きてくる可能性は充分アリ。

 

じゃあ次は・・という話になると

 

▽彩瀬まる「くちなし」(文芸春秋)

▽澤田瞳子「火定(かじょう)」(PHP研究所)

▽藤崎彩織「ふたご」(文芸春秋)

 

門井さんを除く、3作品について多少話し合われることになるでありましょう。

ただ、おそらく1回の投票で門井さんの作品に決まると思うのね〜。

私のように彩瀬さんの独特な作風や今後の活躍について触れる人がいたり、澤田さんの「火定」の勢いと力強さに賛辞を与える人がいるにはいるであろうが、じゃあ直木賞として投票するのか、と言えば多分、否、でありましょう。

 

▽門井慶喜「銀河鉄道の父」(講談社)

 

結局、門井さんの作品で決まりだよね、という感じで落ち着くんじゃないかなあ。

 

しかしここ最近は、とんでもない作品、というのがノミネートされなくなったなあ。

ありがたいことではあるが、罵詈雑言吐けないのもつらいわあ・・笑

 

キラ星のごとく私の眼前に登場した彩瀬まるさんの今後に期待しつつ、以下、私の順位の発表と各作品の簡単な総評を行っていく。

 

 

1位 門井慶喜「銀河鉄道の父」(講談社)

 

銀河鉄道の父 銀河鉄道の父
 
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銀河鉄道と言ったら999・・じゃなくて〜、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」である。

というわけで、この作品は宮沢賢治の父親に焦点を当てた作品である。

宮沢賢治といったらどんなイメージがあるか。

私の中の宮沢賢治は、クラムボンが笑ったよ〜・・ってナンジャコレ、であり、2匹の忠犬がかわいすぎる注文の多い料理店(※)を書いた人、である。

 ※本来はそういう話ではない。

 

また、どこぞの番組でマツコが

「宮沢賢治ってピュアすぎて、まぶしくて、私みたいなヨゴレが読んじゃいけない」

とかなんとか言っていて、確かに、まっすぐすぎる人、愚直に生きた人、みたいなイメージもある。アメニモマケズ〜・・不器用ですから・・(高倉健風に)

 

しかーし!この作品ではそんな宮沢賢治は一切登場しない。

門井さんからは、そんな世の中に定着しつつある宮沢賢治像を壊したかった、とかそういう意気込みは全く感じないが、結果、とっても宮沢賢治が身近に感じたね〜。

というか、結構クズやろうです笑

作家の中でキングオブクズを挙げろと言ったら真っ先に挙がるのは、太宰治であろうが(注:あも調べによる)、この宮沢賢治くんもなかなかなものであります。

両者共通しているのは、お金持ちってところだろうか。

宮沢賢治も裕福な家に生まれたこともあり、金は湧いてくるとでも思っているのか、あらゆることに手を出しては失敗して、でも子どものために親がお金を出して当然でしょ、という態度。

・・・そんな賢治にお父ちゃん甘いからさ〜なんだかんだで出しちゃうんだ。

ぐぬぬぬ〜。イライラするぅぅぅぅぅ。

たくさんの息子・娘をもうけ、質屋という事業も安定させ、またここぞというときに方向転換させるなど、立派でやさしいお父ちゃんではあったが、賢治といい、妹のトシといい、自分より子どもに先立たれるというかなしい人生でもあった。

 

そんなお父さんの姿を終始温かい目で見守っていたのは、他の誰でもない、門井さんだと思う。

読者も親バカっぷり、時にはバカ親っぷりに、ヤキモキするところもたくさんあったが、それでも「父でありすぎる父」のお父ちゃんに嫌悪を全く抱かせなかったのは門井さんの手腕。

そして何より、愚鈍どころかちょっと小賢しい、という宮沢賢治の新しい姿を描き出せたのも門井さんが父を温かく描き、その「父」として温かい目で出来損ないの子どもたちを描いたからであろう。

宮沢賢治って正直、愚鈍でノロマのおじさん(裸の大将的な)って勝手なイメージがあったのだが、全然違っていて、むしろ小賢しくて憎たらしくて、また偉大な父に常に歯向かうプライドの高い人間で、ピュアでもなければ愚鈍でもない、生きることにもがいていた、ある意味普通の人間であった。

妹トシの最期のシーンなんて、私がお父ちゃんなら賢治をぶん殴るが、作家宮沢賢治としてはある意味正しかった。

門井さんはその人間像を持ち上げるでもなく、批判するでもなく(父の目で見たときに批判すべき点はあれども)、常に冷静であったことを私は評価したい。

入れ込み過ぎはよくねえ。自分を顧みて反省反省。

 

お父ちゃんは哀しい人ではあったが、子どもたちを愛する愛の人でもあった。

時代遅れの人間でなかったのが、ますます宮沢賢治に劣等感を感じさせる原因でもあったが、そのおかげで学校にも行けたし、好きなこともできた。これがジレンマ〜。

このビミョーな感じがいい!!!!

作品後半、賢司が亡くなり、お父ちゃんも隠居し息子(賢司の弟)に稼業を譲り、お父さんの孫が登場する時代に変わると、円卓でみんなで食べるシーンがとても印象的。

わかりやすい描写ではあるが、その素直な描写に私は好感が持てた。

今まで筆頭者がお誕生日席に座り、その左右縦に並んで、長男から座って・・という今までの食事風景だったのが、時代が代わりどこが上座下座というものがない円卓に好きなように座り、なんならおじいちゃんのお膝の上に座る孫もいる。

時代は変わったのだ。・・そして賢司のいるお空に旅立つのだ。

あ、でも賢司は改宗してるからお空でも会えないか・・妹トシはどこにいるかな、兄のとこかな。じゃあ、父も改宗しちゃおうかな・・

どこまで本当なのか、どこからフィクションなのかはわからない。

ただ、まさに「父でありすぎた父」を最後まで描ききった良作でありました!!

 

前回、多少気になった(前々回は特に気になった)文章のザックリ感は全くなくなり、かといって目が細か過ぎて息が詰まるでもなく、呼吸のしやすいとてもバランスのよい文体であったと思う。

そういったことも高ポイントであった!

この作品が直木賞で文句なしだと思います。

 

 

2位 彩瀬まる「くちなし」(文芸春秋)

 

くちなし くちなし
 
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あもちゃんを一目惚れさせた彩瀬さん、2位という輝かしい結果を修めた!!

あと1歩のところで、複数回候補経験者の門井さんに破れはしたが、その健闘は私の胸にしかと刻まれた。

この作家さんにこそ、本物の直木賞定番の名台詞がふさわしい。

「次の作品に期待したい」

である。

まるさん、ほかにどんな作品を書くんだろう。ちょっと・・どころかかなり次の作品に期待したい。

作品の内容についての詳しい説明はこちら→

 『あもる一人直木賞(第158回)選考会ー途中経過1ー

 『くちなし

 

 

3位 澤田瞳子「火定(かじょう)」(PHP研究所)

 

火定 火定
 
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2回目の候補にして見事(?)3位!!

前回初の候補作『若冲』ではイマイチだったが、今回の作品はよかったで〜。3位だけど。

1位2位の作品と比較して何が足りなかったか、とあえて考えてみると、人物に輝きが失われてしまっていったことだろうか。前半はドロドロした人間関係と鬱屈とした思いなどが写し取られていたが、後半はなんだか説明くさくなっちゃったような気がする。

だからといってけして悪い作品ではなかったし、平安時代の時代小説作品を読む経験がないので、そういう意味ではとてもいい作品であった。

 

作品の内容についての詳しい説明はこちら→

 『あもる一人直木賞(第158回)選考会ー途中経過2ー

 

 

4位 藤崎彩織「ふたご」(文芸春秋)

 

ふたご ふたご
 
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初めて書いた小説で直木賞ノミネート、一気に直木賞受賞!とまではいかなかったものの、小説としても立派に形になっていたし、よく描けていたと素直に感心した。

事実、最下位じゃないし・・立派な作家さんを差し置いての4位。これは誇れる順位ですぞ。

しかし結果4位になったのは何が悪かったのか、と言いますれば、まあこれが色々あるのだが、1つ挙げるとするならば、次の作品がどんな作品になるのか予想がつき、その作品に期待が持てないから、でありましょう。

 

作品の内容についての詳しい説明はこちら→

 『あもる一人直木賞(第158回)選考会ー途中経過2ー

 

 

5位 伊吹有喜「彼方(かなた)の友へ」(実業之日本社)

 

彼方の友へ 彼方の友へ
 
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ほんと色々と惜しい!!

話も面白いし、出てくる小物もステキだし、文章も作品もポップに仕上げてあって読みやすいし、最後までこの調子でいけば上位を狙えたのだと思うが、いかんせんなんだか後半グッダグダになってしまったのがとにかく惜しかった。

最大の戦犯は主人公。

主人公のハッちゃんが全然かわいくなかったのがマイナスポイント。

また、登場させたものの扱いがビミョーになり、そのまま消えて行ってしまった人も多し。

人間関係なんてそんなもんではあるが、もう少しなんとかならんかったか。。。。

 

ただ長所も多く、上記でも述べたが方法によっては朝ドラとかなんかに生きる気がする。

このまま捨て置くにはさすがにもったいない作品・・・

 

作品の内容についての詳しい説明はこちら→

 『あもる一人直木賞(第158回)選考会ー途中経過1ー
◇◆

今回はなんの障害(父母の来訪、どっかにお出かけ・・という自業自得)もなく、順調に全作品を読了した。

そして驚きなのは何の迷いもなく、直木賞受賞作品を決めることができたことである。

あらあら、これはいよいよ、久々、とうとう、当たっちゃうんじゃないのー><

(と毎回言っている気がする。)

素敵な初めましての作家さん(彩瀬まるさん)にも出会えたし、たとえ万が一外したとしても、収穫のある選考会と言えると思う(あ、言い訳・・)。


さあさ、お立ち会い!
16日の夜、門井さんが登場いたします〜!