エノケソ一代記 | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

平成28年12月12日(月)、

『エノケソ一代記』(in世田谷パブリックシアター)を観に行く。

 

歌舞伎の方が出演するときは、必ずこういう受付があることにいつ頃からか気づいた。

ごひいきさん用だろうか。

 

というわけで今回の歌舞伎の方とは市川猿之助で、

猿之助がエノケン(但し偽物)になって、全国を渡り歩くお話であります。

 

大河も終わって荷がおりたところで、自分が舞台に出たかっただけの舞台にちがいなーい!

 

(あらすじ)

戦後、喜劇王エノケンこと榎本健一の偽物「エノケソ」が全国各地に出没した。
この主人公も、そんな「エノケソ」の一人だ。
エノケンが大好きで、エノケンに憧れ、エノケンに限りなく近づこうとした男。
演劇史には決して残ることのない、無名の喜劇役者と、
彼を支え続けた妻との、哀しくもおかしい二人三脚の物語。

 

【作・演出】 三谷幸喜
【出演】 市川猿之助 吉田羊 浅野和之 山中崇 水上京香 春海四方 三谷幸喜

 

吉田羊ちゃんの演技が光っておりました。

エノケンひとすじのまっすぐすぎる(バカすぎる)旦那を支え続ける奥さん、

という大変難しい役を上手に演じていた。

ジャニーズと色恋沙汰を起こしてもジャニーズ事務所に潰されないだけはある。

さすがの演技力に感服。中年女子の星☆

 

山中崇さんがとにかく大変そうで(一人5役)、一人5役だなんて浅野和之さんがやりそうなもんだが、

浅野さんは浅野さんで猿之助のイカサマを支える、これまたイカサマな脚本家を演じる大変な役回りで、

とにかくこの作品、作品そのものはイマイチだったが(コラッ)、面白可笑しく、

しかも後半はオモシロ重苦しく、それでもちょっと幸せ、という不思議な話で、

どの役を演じても大変なのものであった。

 

しかしそんな大変な舞台の中、一人のびのび気楽にやっていた方がいらっしゃいました。

それは何を隠そう(隠してないけど)、脚本/演出の三谷幸喜ご本人。これはずるい(笑)

 

エノケンの偽物「エノケソ」を偽物だ!と見破る、古川ロッパの偽物役であったのだが、

ここがこの作品で一番盛り上がったシーンで、誰よりも一番自由に楽しそうに演じていて、

きっとアドリブも盛りだくさんだったろうし、

お前はこの役でここで出たいがためにこれを作ったんかー!と言いたくなった。

 

1年にわたる大河の脚本という重荷を下ろし、ようやく自分のホームグラウンドに帰ってきて、

羽を伸ばしまくっている三谷幸喜の姿だけが印象的な舞台であった・・・。

正直、話の本筋は全くどうでもよくなった笑

三谷幸喜が大河頑張ったご褒美にわがまま言って作らせてもらったって感じ。

あ、だからって全くできそこないの舞台というわけではなく、本当におもしろおかしい舞台だったのだ。

だから困るのよ〜。なんだかんだで三谷幸喜の舞台はむちゃくちゃでもそれなりなのだ。

しかしそれもこれも、猿之助を始めとした役者さんが一流だったからこそなせる技。

次の三谷幸喜の舞台ももちろん観に行く予定。次は私の敬愛する段田安則が満を持しての登場。

役者さんには文句ないから、今度は作品にも大満足したいものである。