愛されることを知り、愛することを知る。

※ネタバレします。

(あらすじ)※公式HPより
海辺の村の誰も住んでいない湿っ地(しめっち)屋敷。
心を閉ざした少女・杏奈の前に現れたのは、
青い窓に閉じ込められた金髪の少女、マーニーだった。

「わたしたちのことは秘密よ、永久に。」

杏奈の身に次々と起こる不思議な出来事。
時を越えた舞踏会。告白の森。崖の上のサイロの夜。
ふたりの少女のひと夏の思い出が結ばれるとき、
杏奈は思いがけない「まるごとの愛」に包まれていく。

あの入江で、わたしはあなたを待っている。
永久に。
あなたのことが大すき。

◇◆

観に行こう、観に行こう、と思いながらも、重い腰がなかなかあがらず、
夫に尻を叩いてもらって観に行った。
チケットを買ってもらったー!やったー!
でも隣にいるー!やだー!



毎回毎回ビッグサイズを買って、完食したあと胸が悪くなりゲフゲフ言うため、
今回は(ようやく)学習をしてMサイズ。
ちょうどいい!

◇◆

あまりに小さすぎた頃の想い出のため、一体いつの頃だったかも忘れたが、
この『思い出のマーニー』の原作を読んだことがあった私。
あらすじやオチ?は覚えていたが、細かい部分はきれいさっぱりぜーんぶ忘れていた。

そんな私が映画を見てみた感想。
すんごくよかった、です。
私、泣いちゃった。
オチがわかった上で観ても、やっぱりよかった。
何も知らずに観たら、また違う風景に見えたのだろう。それも体験してみたかったな。

おぼろげに覚えている原作の雰囲気を損なうことなく、
けれども大胆に変更するところは変更し、切り落としている。
(舞台をイギリスから日本の北海道に変えたり、
 マーニーのノートを見つけて主人公に接触してくるのが家族から一人の少女になったり。)
あの年代の女の子が「秘密」を共有して関係が強固になる心の動きもよく描けていて、
また不思議な現象もすんなり受け入れることができる妄想力の描写もすばらしい。

そんな冒険活劇とは真逆の作品がジブリっぽいのか?と問われたら言葉に詰まるが、
次世代のジブリを担う人が誰なのか、と問われれば、
少なくとも息子のゴロさんじゃないな、と。
私はこの米林監督を推したいとおもいまーす。
借りぐらしのアリエッティ』から注目していた監督さんだったし。
容貌はアレですが、この監督さんの描き方、好きです。
容貌はアレだけれども。。
パヤオ脚本の前作より、今回の方がパヤオ色が抜けていてそれがかえってよかった。

少女の愛おしさや意地悪さ、憎らしさ、
そしてそんな少女の内面が少しずつ変わって行く様子がよく描けていた。


この物語(映画)を簡単に説明すると(※ネタバレします)・・・

幼い頃両親を亡くした杏奈は、
杏奈を施設から引き取ってくれた養父母の元で育てられている。
養父母はとても優しくしてくれているが、杏奈は打ち解けることはせず距離をおいている。
そしてそのひねくれた性格と身体が弱いせいもあり、学校でも浮いていていつも一人。
みんなは内側の人で、私は外側の人。
と常に冷めた目で他人を見ている。
内側にいるみんなは普通に触れ合い、話が出来ている。
自分は外側に追いやられていて内側とは関わりがない。関わりたいわけでもない。
と自分の周りに壁を作っているのだ。
そんな内側の人にいる自分以外の人らをバカにしながらも、どこか羨ましくて、
でも放っておいてほしくて、そんなグダグダグダグダしている自分が大嫌い。

という大変暗くて、自己評価も低く、一癖も二癖もある少女杏奈。
いきなり主人公がそんなチョーネガティブだなんて、原作を知らない方には衝撃であろう。
しかも作品名は『思い出のマーニー』なのに主人公はマーニーじゃないんだ(笑)
という衝撃もあるかも?
ダブルヒロイン、ではあるが、主人公は杏奈です。

そんな杏奈は、身体の療養も兼ね、夏休みの一か月、
養母の知人の大岩夫妻が住む空気のいい北海道の片田舎で生活することになった。
(杏奈は札幌在住)

電車に乗って一人で大岩さんのところに行くことになるわけだが、
心配性の養母の頼子さんは、杏奈を一人で行かせることを心配して、あれこれ声をかけ、
電車が出発する直前にはちょっと涙を浮かべたりする。

はー。なんかうっとうしい。
とは言葉には出していないが、そんな表情で養母とさよならして電車に乗り込んだ杏奈が
口に出した言葉が、

メーメー、ヤギみたいに泣いてる・・・。

である。
くち、わるっっっっっ!!!!
原作より性格わるっ!!!!!

そして無事に大岩夫妻のところに到着した杏奈。
田舎の緑あふれる開放感と
おおらかな大岩夫妻の全く干渉してこない生活が彼女に合っていたようで、
他人との生活に慣れ、少しではあるが心がほぐれる様子が垣間みえる。

そんな中、マーニーという不思議な少女に出会う。
マーニーは廃墟だと思っていた湿っ地屋敷のお嬢様であった。
自分勝手で、ちょっとわがままで、マイペースで・・でも優しくて、心が広い。
お金持ちで、上等な服を着ていて、それにとても似合う人柄。
自分と何もかも違うマーニー。
その上、杏奈と同じく繊細な気持ちの揺らぎを深く理解してくれて、
何より自分と違ってとても美しい。
杏奈は、そんなマーニーを大好きになり、すぐに打ち解け、心を開き、
感情を素直に表すようになった。

そこで2人は、2人だけの秘密、を共有し、杏奈はマーニーがますます大好きになる。

ここは一つの注目ポイントなのねー。
この2人の距離がとても近い!!
女子特有の近さ。

一部では、杏奈とマーニーの距離感といい、抱き合う回数といい、
「百合」疑惑も出ているとのことだが、
いやいや、女の子には誰しも必ず一度は「百合」を経験する期間があるんですよー。
女子が女子に憧れたり、好きになったりする時期ってもんがさ。
私にはあまりなかったけど。
憧れの先輩、とかもいなかったけど。
でもステキな女の子がいて、尊敬できて、自分にはないものばかりもっていて羨ましくて、
そんな女の子に恋に似た感情を持つ気持ちは理解できる。
自分の憧れの存在。
そんな憧れの少女と秘密を共有して、2人の仲が強固になる、それがうれしい杏奈。
(大人になると秘密が悪口になり、悪口を共有して仲良くなったりするのよね。ヤダヤダ笑)

どんなに今後男の恋人が出来ても、憧れの女性とはまた違うのだ。
男は自分とは全く別のイキモノだけど、
大好きな女の子は自分と同じ種類のイキモノで、
しかも自分のありのままの姿を映してくれる、自分を投影することができる、
そんな鏡にも似た存在なのだ。多分。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏もよく言うけれど、女性、はおもしろい。って。
ほんと男はしょーもないけど、女性は小さい頃から複雑で「女」というイキモノなのだ。


しかしマーニーは突然現れたり、突然姿を消したり、不思議な少女。
そしてマーニーに会った後は、杏奈は道ばたで倒れていたりすることが多くなった。
それでもずっと2人は会いたいという引力で引き合い、2人で濃密な時間を過ごす。
マーニーといると、自分の感情を素直に出すことができる。
笑って、怒って、喜んで。
杏奈は自分の生い立ちをマーニーに打ち明け、マーニーも自分の内面を打ち明けた。
そのことがさらに2人の絆を強くさせた。

それなのに突然、マーニーは嵐の中、杏奈を置き去りにして家に帰る事件が起こる。
本当の両親(事故死)もおばあちゃん(病死)も私を一人残して置いて行った。
でもマーニーだけは私を置いて行かないと思ったのに。
許さない!!!
マーニーだけは許さない!!!

かわいさあまって憎さ倍増。を絵に描いたような展開。
あ、絵だった。

この怒りを伝えずにおれようか、とふんがふんがとマーニーの家に向かう杏奈。
青い窓枠の部屋にマーニーの姿が見える。
マーニーも杏奈の姿を見つけ、堅く閉ざされた窓を椅子で叩き割って窓を開ける。

マーニーは自分のしたことを謝る。許すと言ってほしいと懇願する。
あんなに怒り心頭だった杏奈だったが、コロっとすぐ許す。
だって、大好きな杏奈が許して、って言ってるんだもの。。。。

マーニー「ああ・・杏奈・・・あたし・・もうここからいなくならなくてはいけない」
マーニー「あなたにさよならしなければならないの」
マーニー「だから、ねえ杏奈お願い、許すって言って」
杏奈  「・・・もちろんよ!許してあげる!あなたが好きよ!マーニー!」

ここで、私、どばどばどばー、と泣きました。
えぐえぐえぐえぐ、ヒックヒク。

どうやら原作を知っているがゆえに、
号泣ポイントがかなりフライングだったようだが(夫によると)、エグエグ泣きました。

実はここ、この作品で一番のポイントなのだ。
今まで心を閉ざし、周りの人間に反抗もしない代わりに感情も出さない杏奈。
養母である自分を好きになってくれなくてもいい、
でも泣いたり、笑ったり、反抗でもいいから心を出してほしい、
と養母の頼子さんも心を痛めていたはず。
そんな周りの人の心も傷つけてしまうような行動をしていた杏奈が

自分が愛してるマーニーが許してって言ってんだもん。
ひどい嵐の中、私を置き去りにしていったけど、今でもその理由はわかんないけど、
でもでもあんなに愛しいマーニーが、私を許してって言ってる。
だから許す!!!

愛されるよりも、愛したいマージーでー。(KinKi Kids)
とか古代ローマの時代より(嘘)、常々言われてきましたわなあ。
しかし私は愛されるのは無限に愛されたい欲深き女だが、
こちらが愛を与えるなんて小指の爪ほどの量ももったいない!キリッ!です。

なーんて、私の話はさておき、
マーニーから愛されることの喜びを知り、愛するということを知った杏奈。
そしてマーニーを愛することで「赦す」という行為を覚えたのだ。
それはもう無償の愛。

その後、マーニーは現れなくなった。
でも杏奈の表情はすごく優しくなる。なんだか憑き物がとれたように。
湿っ地屋敷には新しい住人が引っ越してきて、
マーニーがいた部屋はさやかちゃんという少女が使うという。
この文学少女的なさやかちゃんがまたいい味だしてんだ。
不思議な現象にも理解が深い(笑)
小さいころって、不思議なことが当たり前に受容できるんだよねー。
そんなさやかちゃんが、部屋の改装工事で見つけたマーニーのノートなどなどから、
マーニーという少女は一体誰だったのか、わかることとなった。。。

ななななな、なんと!・・・って原作読んでるから知ってたんですけどね。

マーニーは杏奈の亡くなったおばあちゃんだったのだ。

はい、それがわかった途端、夫側じゃない方の隣にいた男性が大号泣してました。
ここがどうやら正しい号泣ポイントだった模様(笑)
おばあちゃんがずっと杏奈を見守っていた、ということがわかり、
今までの物語を思いだし、泣けてくるからだ。多分。

マーニーおばあちゃんが少女時代の姿(幽霊)になって、杏奈の前に現れたのね。

・・・いやいや、ちょっと待て。
と私は思った。

幽霊だとしたら、嵐の中、サイロに孫を置き去りにするか!?
杏奈は、おばあちゃんや両親が死んで置き去りにされた、と思ってるのにさ。
ということは、
杏奈が自分で言ってた「マーニーは私が作り出した幻想よ」ということで幻想?
でも幻想だと納得できないこともあるんだよなあ・・・

うーむ。
映画を見終わった後、夫にそのことを聞いてみた。

「そこ、あんまり重要じゃないから特に気にしてない。」

ですよねーーーーー。
なんという明快な答え。

そう。幽霊だろうが幻想だろうがタイムスリップだろうが、
杏奈はマーニーと愛し合った経験で、大きく変わったのだ。それが一番大事。

なんだか今の杏奈の心は、北海道の片田舎の上に広がる青空のように澄んでいる。
今までずっと気にしていたり気に病んでいたことが、全てどうでもよくなってきたのだ。
今までの自分がばかばかしくなったのだ。
外側の自分とか、内側のみんな、とかどうでもいいじゃん、そんなこと。とな。
愛を知った人間は強い。

迎えにきた養母を、知人に「母です」と紹介したり、
前半、内に閉じこもる杏奈に、(よかれと思って)色々話しかけてきた、のぶこちゃんに
「ふとっちょでぶ!!」
と言っちゃう事件があったのだが、そのことをのぶこちゃんに謝罪したり。
杏奈は確実に変わった。
ちなみにそのときののぶこちゃん、謝罪する杏奈に
来年も来てゴミ拾いしなさいよ!ぷんぷん。ばいばい。
とひどい態度をとった杏奈を許しちゃうのだ。
あんた、大人やなあ。と感心しました(笑)
私、ふとっちょでぶ、なんて言われたら、末代まで祟る。

そしてfin。

地味だけどとてもよかった。

音楽の使い方が相変わらずすばらしかった。
いいとこでいい曲を入れてくる。
目立たないんだけど印象に残る、そんな曲がピンポイントに入っており、ジワジワ効いていた。
私が大号泣の赦しのシーンだけはちょっと音楽が大げさだったが、
それもまあ許容範囲。そこまで気にならなかった。

また、マーニーがワルツを踊りながら口ずさむ音楽があるのだが、
それが踊りにはあまりふさわしくない曲で、あれ?と思った私。

私(うーん、この曲、なんだったっけ?・・・)

としばし悩んでいたのだが(←映画、観てない!)

私(あ!『アランブラの思い出』だ!!←村治佳織たんも演奏してます!!)
私(つーか、なぜアランブラの思い出・・?あ、思い出のマーニー、で思い出つながり?)

色々考えてみたが、理由はわかりませんでした。
米林監督、踊りにふさわしいいい曲だ、と思ったのだろうか・・・?
とてもセンチメンタルなメロディで踊りには似つかわしくないのだが・・・。
でもそれはそれ、で美しい曲であることに間違いない。

ちなみにあとで原作を読んでみたのだが、
アンナの実の父親がスペイン系のようなんですな。←ハッキリとは書いてない。
それを意識してのことかもしれない。

◇◆



私「いい映画を観たことを祝して、かんぱーい!!」

映画の詳細について、2人でああでもないこうでもない、と揉み合う。

私「いやー、不幸の遺伝子って連鎖するんだなあ。と思ったねえ。
  不幸な出来事が連鎖する、というのもあるんだけど、
  それを受け止める受容体そのものがネガティブっていうか。」



私「私なんて生まれてこのかた、自分が嫌い、なんて思いつきもしなかったよ。
  むしろ自分好き、というか、むしろ自分大好き、みたいな?」
夫「・・・・フフ・・・(¬д¬。) あもちゃんはそうだろうねー(¬д¬。)
  わかるわかるぅぅぅー(¬д¬。) 」
私「なに、そのバカにした感じ!!!きーーーーー!!!!!」


以上、自分好きなあもちゃんが、
自分嫌いな少女杏奈の成長物語の映画について延々と語る、でした。

熱弁ふるってきたのに、説得力が0になったのではないだろうか。。。