ばかもの (新潮文庫)/絲山 秋子

¥420
Amazon.co.jp
セックスと酒と女。
依存そして愛。
「行き場のない想い」の行き先は・・・。
※ネタバレします。
(あらすじ)※裏表紙より
高崎で気ままな大学生活を送るヒデは、勝気な年上女性・額子に夢中だ。
だが突然、結婚を決意した彼女に捨てられてしまう。
何とか大学を卒業し就職するが、
ヒデはいつしかアルコール依存症になり、周囲から孤立。
一方、額子も不慮の事故で大怪我を負い、離婚を経験する。
全てを喪失し絶望の果て、男女は再会する。
長い歳月を経て、ようやく二人にも静謐な時間が流れはじめる。
傑作恋愛長編。
読み終えた直後の、
苦しみから解き放たれたかのような、あれほどの安堵感はどこからくるのだろう。
体が先に歩いていたり、
心がだいぶ先にあったり、
常に、自分の体と、自分の心が、少しだけずれていたのに、
それがようやく重なり合って、あるべき場所に還って来た、そんな気がした。
ここが私の場所だよ、と言われているかのような。
そんな安堵感。
この作品、驚くほど無駄な説明がない。
極限まで削ぎ落とせるだけ削ぎ落とし、一切の飾りすらない。
時系列もシンプルに一本勝負。
時間の経過なんて、バツンバツンと大胆に切り落とす。
さっきまで大学生だったのが、あっという間に就職し、退職する。
(でもセックス描写は細かい。どういうところから男の感覚を知るのかなあ。
恋人とかに聞くのかな。イクときってどんな感じ?とか?
・・・誰があんなに詳細に教えてくれるのかしら?)
しかし、「想像上の人物」などの不思議な存在は残す。
ここがこの人のスゴイとこなんだろうなあ。
ヒデは弱い男だ。
額子との恋愛ごっこに依存し、
セックスに依存し、
依存した相手がいなくなり、
まあ適当に日常を過ごし、
そうこうするうちに、酒に依存し、恋人に依存。
なんとなく生きてきて、ずっとずっと「想像上の人物」に依存してきた。
常にヒデは誰か、何かに、依存する男。
愛、なんて嘘だ。そんなのは映画の中の言葉だ、と思っている男。
自分を大事にしない、と同時に、誰よりも自分がかわいい男。
額子や額子との恋愛、セックスに狂っていたヒデ。
それが突然消えた。
依存していたものが消えた。
どうするんだこれから。
でもどうしようもなかった。
額子がいなくなっても、ヒデは生きていくしかない。
腹も減るし、眠くもなる。
何もしないで生きて行くことなんてできるわけもない。
留年はしたものの、なんとなく卒業し、就職し、恋人もできる。
所詮、愛なんて嘘だ。
一生愛してるなんて言うこともないだろう。
自分を大事に思ってくれていた恋人を、僕は大事に思っていたか?
はあはあ。
作品の中盤まで一気に説明してみたが、
こういう感じで、最初から最後まで、
一本の線が波をうって読者の心に次から次へと押し寄せてくる。
第一波、第二波、第三波・・・・
大小は様々ではあるが、その波のダイナミックさに読む者は圧倒されずにはおれない。
小説の構造自体はシンプルであるのに、
どうしたらこんな様々な波を作ることができるのだろう。
ヒデの心情描写と弱い男の堕ちていく描写のうまさかなあ。
それだけかなあ。
想像上の人物、という存在も大きい。
想像上の人物とは何か。
助けてくれたり、目の端にちらっと映り込んでくる、気配だけを感じるときもある。
それが、再会した額子と抱き合うときに、
ときどき二本の腕で抱かれている気がするのは確か。
想像上の人物とは何か。
ヒデは精神上のことだ、と言葉にしない。
でも読者はなにかぼんやりと感じ取る。
読者は一人一人、この「想像上の人物」が何かを理解する。
再会してセックスする二人。
ゴムをつけないと、というヒデに、いいんだよ、という額子。
愛してるだなんて言葉が俺に許されるのか。
額子は子供がほしいのだろうか。
でも聞けなかった。
どこかに落ち着くのがこわいのか、俺は満足することがこわいのか。
♪俺は迂回するだろう、俺は君を忘れないだろう。(ラウンドアバウト)
みんなみんな迷ってる。
自分の言い訳を手にしながら、闇を手探りに歩く。
そんなあなたも私も、みんなみんな、ばかもの。
この人、芥川賞を2004年に受賞しているのだが、
ここまでよく成長したな、とうなってしまった。
でも芥川賞作品『沖で待つ』は読んでませんけどね。
あとー。
あっと言わせる話ではないので、別にいいっちゃいいのだろうが、
裏表紙のあらすじの書き方が詳細すぎる!
ヒデと額子が再会するところなどは、
読者が自らの心で読み進めて知ってほしかったシーンの一つだったのに。
この作品、映画化するらしい。
これ、むずかしいぞ~。
いい映画に仕上げてくれればなあ、と思う。
なにげに、アル中描写がすばらしい。
酒量が若干増量中の私。
うん、酒、控えよう。

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セックスと酒と女。
依存そして愛。
「行き場のない想い」の行き先は・・・。
※ネタバレします。
(あらすじ)※裏表紙より
高崎で気ままな大学生活を送るヒデは、勝気な年上女性・額子に夢中だ。
だが突然、結婚を決意した彼女に捨てられてしまう。
何とか大学を卒業し就職するが、
ヒデはいつしかアルコール依存症になり、周囲から孤立。
一方、額子も不慮の事故で大怪我を負い、離婚を経験する。
全てを喪失し絶望の果て、男女は再会する。
長い歳月を経て、ようやく二人にも静謐な時間が流れはじめる。
傑作恋愛長編。
読み終えた直後の、
苦しみから解き放たれたかのような、あれほどの安堵感はどこからくるのだろう。
体が先に歩いていたり、
心がだいぶ先にあったり、
常に、自分の体と、自分の心が、少しだけずれていたのに、
それがようやく重なり合って、あるべき場所に還って来た、そんな気がした。
ここが私の場所だよ、と言われているかのような。
そんな安堵感。
この作品、驚くほど無駄な説明がない。
極限まで削ぎ落とせるだけ削ぎ落とし、一切の飾りすらない。
時系列もシンプルに一本勝負。
時間の経過なんて、バツンバツンと大胆に切り落とす。
さっきまで大学生だったのが、あっという間に就職し、退職する。
(でもセックス描写は細かい。どういうところから男の感覚を知るのかなあ。
恋人とかに聞くのかな。イクときってどんな感じ?とか?
・・・誰があんなに詳細に教えてくれるのかしら?)
しかし、「想像上の人物」などの不思議な存在は残す。
ここがこの人のスゴイとこなんだろうなあ。
ヒデは弱い男だ。
額子との恋愛ごっこに依存し、
セックスに依存し、
依存した相手がいなくなり、
まあ適当に日常を過ごし、
そうこうするうちに、酒に依存し、恋人に依存。
なんとなく生きてきて、ずっとずっと「想像上の人物」に依存してきた。
常にヒデは誰か、何かに、依存する男。
愛、なんて嘘だ。そんなのは映画の中の言葉だ、と思っている男。
自分を大事にしない、と同時に、誰よりも自分がかわいい男。
額子や額子との恋愛、セックスに狂っていたヒデ。
それが突然消えた。
依存していたものが消えた。
どうするんだこれから。
でもどうしようもなかった。
額子がいなくなっても、ヒデは生きていくしかない。
腹も減るし、眠くもなる。
何もしないで生きて行くことなんてできるわけもない。
留年はしたものの、なんとなく卒業し、就職し、恋人もできる。
所詮、愛なんて嘘だ。
一生愛してるなんて言うこともないだろう。
自分を大事に思ってくれていた恋人を、僕は大事に思っていたか?
はあはあ。
作品の中盤まで一気に説明してみたが、
こういう感じで、最初から最後まで、
一本の線が波をうって読者の心に次から次へと押し寄せてくる。
第一波、第二波、第三波・・・・
大小は様々ではあるが、その波のダイナミックさに読む者は圧倒されずにはおれない。
小説の構造自体はシンプルであるのに、
どうしたらこんな様々な波を作ることができるのだろう。
ヒデの心情描写と弱い男の堕ちていく描写のうまさかなあ。
それだけかなあ。
想像上の人物、という存在も大きい。
想像上の人物とは何か。
助けてくれたり、目の端にちらっと映り込んでくる、気配だけを感じるときもある。
それが、再会した額子と抱き合うときに、
ときどき二本の腕で抱かれている気がするのは確か。
想像上の人物とは何か。
ヒデは精神上のことだ、と言葉にしない。
でも読者はなにかぼんやりと感じ取る。
読者は一人一人、この「想像上の人物」が何かを理解する。
再会してセックスする二人。
ゴムをつけないと、というヒデに、いいんだよ、という額子。
愛してるだなんて言葉が俺に許されるのか。
額子は子供がほしいのだろうか。
でも聞けなかった。
どこかに落ち着くのがこわいのか、俺は満足することがこわいのか。
♪俺は迂回するだろう、俺は君を忘れないだろう。(ラウンドアバウト)
みんなみんな迷ってる。
自分の言い訳を手にしながら、闇を手探りに歩く。
そんなあなたも私も、みんなみんな、ばかもの。
この人、芥川賞を2004年に受賞しているのだが、
ここまでよく成長したな、とうなってしまった。
でも芥川賞作品『沖で待つ』は読んでませんけどね。
あとー。
あっと言わせる話ではないので、別にいいっちゃいいのだろうが、
裏表紙のあらすじの書き方が詳細すぎる!
ヒデと額子が再会するところなどは、
読者が自らの心で読み進めて知ってほしかったシーンの一つだったのに。
この作品、映画化するらしい。
これ、むずかしいぞ~。
いい映画に仕上げてくれればなあ、と思う。
なにげに、アル中描写がすばらしい。
酒量が若干増量中の私。
うん、酒、控えよう。