廃疾かかえて (新潮文庫)/西村 賢太

¥420
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うーん、いまいち!

(あらすじ)※裏表紙より
怪し気な女ともだちに多額の金を貸していた同棲相手の秋恵。
その人の好さに暴力的な衝動をつのらせていく、身勝手な男・北町貫多を描く表題作。
大正期の無頼派作家・藤澤清造の歿後弟子を任ずる金欠の貫多が稀覯雑誌を求め、
同行を渋る女と地方へ買い出しに行く「瘡瘢旅行」他、
敗残意識と狂的な自己愛に翻弄される男の歪んだ殉情を描く、全く新しい私小説。


西村賢太大絶賛の私だったが、ここにきて初めての「うーん」。
だいぶ前に読了していたにも関わらず、
今まで書評を書けなかったのはそのせいもある。

これまでの大絶賛の足跡はこちら↓

どうで死ぬ身の一踊り
苦役列車
暗渠の宿
小銭をかぞえる』 ←但し、アメブロにより勝手に消去。


西村賢太が芥川賞を受賞して半年が経とうとしている。
(あ・・っつーことは、そろそろあもちゃん苦行の一人直木賞選考会が・・・)

半年経とうとしているのに、未だにこのブログの検索ワード一位は、
「苦役列車」

「西村賢太」

「どうで死ぬ身の一踊り」
か、とにかく西村賢太関係の単語である。

どんだけ注目されてんだ、あのおっさん。

あの変態おやじのおかげで(コラー!)、
私のブログのアクセス数もグイグイ伸びておりましてね。

何もかもやる気がなくなった、
とか
生きることも死ぬことも同じこと(「城の崎にて」気取りの私)、
とか、
仕事辞めたい、 ←最近、死ぬほど眠い。
とか
アイス食べたい、
とか
最後のアイスはともかく、
なんだかんだでブログを急に放り出して、突然更新しなくなるにも関わらず、
アクセス数がさほど下がらなくなった。
それもこれも西村賢太のおかげ・・・?

あと、こんな西村賢太の書評の中で無関係の話を持ち出して申し訳ないのだが、
今までも何度もブログ辞めよう、と思ってきた。
が、
本気で辞めよう、と思ったときに限って、
救い(?)の手が力強く差し伸べられるのである。

それは過去に二度あった。

一度目は、去年の9月。
KASPARさんに、あもる一人直木賞の記事を大々的に紹介してもらったこと。
参考サイト→「ゆるーく映画が好きなんす!
の該当記事はこちら→「いつも読んでるブログを紹介♪ part1 / あもるくんのブログ

二度目は、先日。
馬面冠者さんに、書評を依頼されたこと。
参考記事→2011.05.1「ある赤本にまつわるあもちゃんの告白。


辞めたきゃ辞めればいいのだし、
辞めたからって別に誰かが困るわけでもないのだが、
まだ、もう少し、あとちょっと、続けないといけない、そういう気がしたのだ。

ありがとう。



・・・えーっと。
西村賢太はどこいった。

そうそう。
西村賢太を読みあさってきた私にとって、
初めて、あれ?って思わせた作品なのであった。

私をひっくり返らせた、あの圧倒的な筆致と見た事も無い世界が全くなかった。
西村賢太の世界に慣れちゃったのかなあ、と一瞬思ったのだが、
立て続けに同じような内容の、彼の作品を読み続けて来て大絶賛の嵐だったのだから、
飽きる、とかそんなことはないはず。
ただ、ただ、普通のDVの話しか書かれていない、としか思えなかった。

こうやって文章を書き続けることによって、人はうまくなっていくのね、
と思ったのだが、
『どうで死ぬ身の一踊り』より後に書かれている作品なのである。

えー。
『どうで死ぬ身の~』
のほうが断然いい!!

なんというか、計算され尽くし過ぎて、つまらなくなった典型的な作品という感じ。
おもしろいこと書いてやろう、という欲が出ちゃった。
そりゃ、小説家なんて、おもしろいこと書いてなんぼの商売なのだから、
おもしろい事を書かなくてはいけないのだが、

どう?どう?
根がスタイリストなぼく、←西村賢太オリジナルの爆笑表現。今作品では登場せず。
他の作家では書けないこと書いてるでしょ?
もっと書けるよ?

という心の中が透けて見える。

西村賢太はそれじゃだめなのだ~。
我が道を行く、変態&DV&エロ、なおっさんじゃないと!

読者を意識することは大事だ。
でも、それは媚であってはいけない。

媚びてないわい!って髪を引っ掴まれて、引きずり倒されそうだが
(そうでなくても薄毛のあもちゃんなのに)
だって、そう思うんだもん。

この作品での成果は、
一緒に暮らしていた女が、秋恵、という具体的な名前が出たこと。
(別にだからなに?だが。)

それでもおもしろい箇所はあった。

以下、いくつか笑える文章を挙げて終えたい。
ほんと、これくらいしか感想が述べられない・・・
せっかくのアクセス数稼ぎの西村作品だったのに~。←コラー!

貫多が、
同棲相手の秋恵はつまらない女だから、自分を同じく暗い青春を送ってると思っていたのに
意外と普通の青春を送って来ていることを知ったときの気持ち。

「貫多はこれに、何やら秋恵から手痛く裏切られたような、辛い気分になってきた。その思いは、もしかしたら件のゴルフサークルと云うのが縁で仲を深めたものかも知れぬ、彼女の処女を破った例の男への云いようのない怒りをも喚起させ、更にそこには、その季節の点景人物であった久美子に対する憤懣も混じり込んでくる」(29頁)

秋恵、さらに、秋恵の友人久美子、迷惑!
そもそも、自分の恋人が、どうせ大した人生送って来てないって!
まあ、大した女じゃないんですけどね。
それは確かに間違いない。
けど、恋人がそれを言っちゃおしまいよ~。

そんな秋恵の友人久美子だが、
実は久美子は秋恵を都合のいい友人としてしか見ておらず、
単にお金をせびりとられているだけであった。
それを知った貫多の心情。

「思えば彼女には、貫多の知る限りで、他に現在も交遊の続いている友人と云うのは皆無のようでもある。
 また秋恵には、そうした友人のいない自身の状況を、ともすれば世間一般並みの風潮に照らし合わせて、惨めな、慊らないものと思ってしまう、自分に自信の持てぬ弱い面が確かにあり、だからこそ久美子のような者にも未だ友人としてすがりつかざるを得ない、駄目な彼女が何んとも悲しく、それだけに日頃貫多の為に、いっそ献身的、と云ってもいいくらいの世話を焼いてくれている彼女へのせめてもの思いやりとして、この件では、もはや口を差し挟むのは控えることにしたのである。」(35頁)

この文章は秀逸。
貫多の手によって読み解かれた秋恵の心情描写が緻密。

貫多も普段からこれくらい優しくあればいいのだが、
まあ、5分ともちませんよ、これが。


今回はあまりどどーん、と響かなかった。
結果、西村氏には申し訳ないが、書評もさほど揮わず・・・。←他人のせい。

西村賢太の次作に大いに期待!!