- 花や散るらん/葉室 麟

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日本人なら誰もが知っている忠臣蔵。
しかしここに描かれたのは、誰も知らない忠臣蔵。
(あらすじ)※Amazonより
京で暮らしていた雨宮蔵人と咲弥は、幕府と朝廷の暗闘に関与し、
やがて赤穂・浅野家の仇討ちに呑み込まれる。
2人の運命は如何に…。
雅と武、西の朝廷と東の幕府の戦いを描く、新しい忠臣蔵物語。
第142回直木賞候補作。
第141回直木賞候補作『秋月記』に続いての直木賞候補作。
人間、練習すればするほど技は磨かれるんだなあ。
前作の『秋月記』より断然うまくなっている!
作品に流れるスピード感とくるくると交錯する人物関係、
断然こちらのほうが私は好きである。
葉室氏の作品を読むのはこれで2つめだが、
全体的に「ライト時代小説」という印象がある。
時代考証など多少踏まえてはいるのだろうが、
とにかくおもしろさとスピード重視。
あっという間に読めて、読後感はさわやかで幸せになれる。
「なんだかよかったわ~」
と素直に思えた作品であった。
主人公である蔵人や妻の咲弥があまり魅力的ではないものの
脇を固める人物がとても魅力的。
吉良上野介やその家臣の神尾与右衛門、尾形光琳の存在がキラリと光る。
浅野内匠頭のアホさ加減にはあきれるをとおり越して感心しきり。
その描写っぷりが徹底している。
馬鹿な上司に泣かされる部下。
いつの世の中にもいるんだなあ、馬鹿な上司というものが。
と同情してしまった。。。
愚直な男蔵人と蔵人に愛される強い妻咲弥。
この図はまるで漫画。
ここがライトノベルと私にいわしめる所以であろう。
ところが、
私にはこの夫婦なんかよりもじーんとした二人の図があるのである。
家の発展のために徳川の有力者(柳沢吉保)に嫁ぐ町子には想う人がいた。
それは神官の息子である斎。
斎もまた町子を想っていた。
しかし身分の違い、親の思惑で結婚などできない二人。
町子は柳沢家に嫁いだものの、心ではずっと斎を想っている。
そして二人は再会。
斎の胸に人生をかけて飛び込もうとする町子に斎は言う。
「まことの恋とは、忍ぶもの。
誰にも知られず、おのれの心にすら告げぬもの。」
じーん。
斎だってそんなことを言いたいわけではない。
町子を想い、町子の行く末を想い、
自分を偽り、心の底から自分をだまして町子に告げた台詞。
恋とはまこと美しい。
と同時に
恋とはまこと苦しいものである。
奥に秘めて、気づかなければ自分は解放されるのかもしれない。
斎はきっとそう想った。
町子への想いは自分でも見つけ出せないほど心の奥底に秘めておく。
そしてそれは一生の花になる。
斎の苦しさはいつか浄化されるのであろうか?
町子の切なさの行き先はどこだろうか?
印象深いシーンであった。
最後の吉良上野介の討取りのシーンもなかなかのみどころである。
読み終えてしばらく幸せな気分を味わい、
私の目にたまった涙がぽろっと落ちた。
恍惚感ってこういうことかしら?
さてさてラストシーンに関して、一言だけ出版社に文句をいいたい。
最後の最後のシーンにおける重要な会話が、なんとなんと!
帯に書いてあるのである・・・。
これを先に読んでしまった私は、
途中で結末が予想できてしまった。
なぜこんな大事なことを帯に書いてかしまうのだろうか?
というわけで、
この作品を読むなら帯(裏表紙側)を読んではいけません。