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予告された殺人の記録 (新潮文庫)/G. ガルシア=マルケス



ガルシア・マルケスは最高である。


「エレンディラ」を読んで、

ああ、この人はなんという人だ!

なんという世界観!

なんという童話(大人のためのリアル童話)なんだ!


と圧倒されまくりの私であったのだが、

この作品の爆風と爆音にまたもや私、ひっくりかえった。卒倒である。


まずは構成。

すみずみまで計算されており、未来の「わたし」が過去へ過去へとさかのぼっていく形。

30年前に起きたサンティアゴ・ナサールという青年が殺された事件。

「わたし」も同じ時、同じ街におり、死ぬ直前の彼とも話していた。

一体、あの殺人事件はなんだったのか。


閉鎖的な街に住む多くの登場人物のそれぞれの人生が縦糸で、

そこへ一本のひとつの殺人事件という横糸が紡がれている。


これだけ閉鎖的な街なのに、縦糸の人物たちは全く交わらない。

一本一本まっすぐ独立して伸びていて、

殺人事件という1本の糸だけで結ばれるのである。


過去へ過去へとさかのぼるうち、

あれこれ分かってくる事実と、

調べれば調べるほどますます謎に包まれ、霧の中へ消えていく事象。


コロンビアの密度の濃い空気と湿った風、人々の息づかいが

私の胃を苦しくする。


「金持ちは殺されても当然」


という台詞が平気で吐かれ、挨拶のようにされる街。

差別やねたみそねみ、憎悪といった民衆感情。


そんな街をうずまくどす黒い感情は、この殺人事件を幻想に変えていくのである。



私の好きなシーンは2つある。


ひとつは

サンティアゴ・ナサールに穢された女性アンヘラ・ビカリオが

バヤルド・サン・ロマンに対する自分の思いに気づいた後の鏡のシーン。

婚約者に「愛」なんて抱いたこともなかったのに、

突然自分の気持ちに気づいて、自分で自分に驚いちゃった、というもの。

深刻なシーンなのだが、ああ、少女なんだなあ、と思った。


もうひとつは

最後の最後、サンティアゴ・ナサールが

「予告された殺人」どおり殺害されていくシーン。

ここはまるで「24」のようである(見たことないけど・・(;^_^A )イメージイメージ。


刻一刻と迫る時間。

町中が知っていたこの殺人計画。

殺害されたサンティアゴ・ナサールすらその計画を知っていたのだ。

なぜサンティアゴ・ナサールは、20年とちょっとの命を奪われねばならなかったのか。

重なる偶然、重なる憎悪、重なる悲しみ。

全てがカチリと合わさってしまってサンティアゴ・ナサールは死んだ。


最後、ドキドキした。

動悸が止まらなかった。


殺害されるシーンと遺体解剖のシーンがリアルすぎてちょっと気持ち悪いデス。

でもとてもいい。


ああ、ダイナミズム。