忍びの国 (単行本)
和田 竜 (著)
直木賞候補作品の『のぼうの城』の作者和田竜の新作である。
私の「のぼうの城」のレビューはこちら。
→H20.5.19「のぼうの城 」
とても手放しで褒めているが,
その後,直木賞候補作品に挙げられた,と聞いて私の評価は厳しくなっている。
私の中では,候補6作品中,5位。
おもしろいんだけど,文学作品として扱わなくてもいいじゃないの?と思う。
ゲームみたいな話だった。
人物の内面の描き方がものすごくフラット。
史実に基づく,あくまでも想像物語,ということを意識させてるなら,
あのフラットさは中途半端。
ということが,今作品にも言える。
「のぼうの城」と今回の「忍びの国」の構成は
とーっても似ている。
戦いのシーンの構成は本当にそっくり。
ただ敵が忍者か武士か,の違いだけ。
人物の書き方がものすごく薄い。
今作品にしても,
織田信雄(のぶかつ・織田信長の子供)の取り上げ方も中途半端だし,
信長もちょっとなんだか出てきてますよ,だし,
主人公の無門の扱いも適当。
でも,この人,ゲームが好きなんじゃないかな。
前回の「のぼうの城」の時も感じたが,合戦シーンだけは非常に生き生きとしてウマイのだ。
鮮血が飛び散る感じ,馬が駆け巡る感じ,一太刀でなぎ倒す音,などなど
ワンシーン,ワンシーンが頭に浮かんでくる感じ。
まるでゲームを見ているようなのだ。
鬼武者,とか?
↑これ系,私苦手。途中で怖くなって,コントローラーを放り出す。
せっかく無門がコミカルに描けているのだから,
無門が変わっていく様子をもう少し深く書いてもよかったんじゃないかな。
この作品のラストシーンはスキ。
背景を流れる時間と,
無門と文呉(後の石川五右衛門)の対面,
そして,その男たちの靜かな戦いに気づかず,庶民は相変わらず生きている。
という図。
この作者,集中力散漫なのでは?
力を入れているところと,入れてないところがハッキリしすぎ。
で,前作品と比較すると,
今作品のほうがおもしろい,と思う。
