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風花/川上 弘美



鈍くて頭の弱い女の成長物語。

男はどいつもこいつもクソだな物語。



川上弘美の書く小説は,大きく二つに分けることができる。


幻想小説と現実小説だ。


たとえば・・

「真鶴」などは幻想小説,

「先生の鞄」などは現実小説,に分けられる(私の中では。)。


この作品は,現実小説に分類していいだろう。


※これはストーリーを楽しむ話ではないので,

  (登場人物の心情やら空気を読み込む作品)

  だいたいのあらすじを書いてしまいます。



日下のゆり33才。

結婚して7年になる。幸せな結婚生活を送っていた,と思っていた。

里美と夫が不倫をしている,という密告電話を受けるまでは・・・。


と,なにやら不穏な空気を含めながら始まる。



主人公のゆりが夫とどうしたいのかもわからず,

でも別れたくくないような気がする,という曖昧な気持ちを抱え,

浮気されていたという事実と向き合うのも,

張本人である夫と向き合うこともできず,

なぜかいつもどおりに過ごしている自分。

でも,今日こそどうにかしなくちゃ,何か行動しなくちゃ・・

でも・・・。。。。といううじうじ物語で前半は終わる。



そもそも幸せ,と感じていた結婚生活も

のゆり自身,改めて思い返すと思い出せない,という。


・・・ぼんやりと生きてるとこうなるんだよな,と

自身の過去を振り返ってしまう。


とにかく,煮え切らないのゆりの態度に

イーーー!となる。

ぐっちょぐちょでびっちょびちょで居心地の悪い感じ。
頭悪いんか?弱いんか?と胸ぐらつかんで,

ペシペシと頬を叩きたくなる。



夫から


「おまえにプライドはないのか?!」


とか言われてるし。


キー!

おまえもおまえじゃ。

おまえが言うなっつーの!

どの口がいうとんじゃ,コラ!


とムキームキー言っていた私。



と,まあ,おとなしいのゆりなのだが,

その間,

大学生の男の子と映画に行ったり,

叔父さんと旅行に行ったりしているのだ。


なんだ,この女。

なんだか,やるこたやってます,みたいな。

フワフワしていて,つかみどころのない女,という

一番私の苦手なタイプ。


頭が弱い,というか,強い力に流される,そういう感じ。

柳のように揺れる,揺れる。

あっちフラフラ,こっちフラフラ。


ただ・・・

あえて柳に喩えたのは,意味がある。

のゆりは,ただフラフラしているだけの女じゃなかったのだ。



のゆりは,それじゃいけない。

やっぱり夫が好き。のような気がする。

  ↑最後まで自分の気持ちがわからないのゆり。

やっぱり離婚したくない。


と気づいて,夫とようやく対峙するようになる。

でも,今までそういう問題を直視してこなかったのゆりは,

夫とまともに話しあえない。

夫からは冷たい言葉が発せられる。


のゆりは


「がんばれ,私」


と心の中で自分を励ます。


・・・ここのあたりからちょっとキュンっとなってくる。

基本,頭が弱かろうが性格が悪かろうが流されようが,

がんばる人は好き。



そして後半・・・。


夫の転勤についていくのゆり。

環境が大きく変わる。


仕事をするようになる。

人と話すようになる。


のゆりはだんだん,目に見えて成長していく。

話し方も少しずつ論理的になってくる。


そして夫の環境も変わっていた。


立場逆転。

開き直った女は強い。

のゆりと夫の立ち位置が,ガラリと変わってしまったのだ。

まるで逆。


ここがおもしろい。

のゆりがおもしろいように変化している。

あっはっは~,と痛快に笑おう。



そして最後。

もともと少食で,この離婚騒動以来,極端に少食だったのゆりは,


「おなかすいたわ」


と無意味に発言する。

その言葉に,きょとんとする夫。


さあ,二人は離婚するのか,やり直すのか。

それとも他に道はあるのか。

すべてのゆりの決断にかかっている。

のゆりは,どう決断するのか!?



どう決断したんですかね。

フフフ。



川上弘美は,不思議な空気と世界を書かせると一級なのだが,

この作品はなんというか,普通だった。

ちょっとがっかり。


ただ,相変わらず文章は楽しめる。

参考になるなあ,彼女の文章は。

会話文と地の文がくっきりと分かれているでもなく,

地の文に会話が織り込まれるという,

ともすればアンバランスになりがちなスタイルなのに,

不思議な均整がとれている文章。